量子コンピューティングの世界で、理論から実用化への道筋が徐々に見えつつある中、英国のスタートアップ企業Riverlaneが7500万ドル(約110億円)のシリーズC資金調達に成功し、企業価値が4億ドルを超える評価を得たことが明らかになった。Riverlaneの技術は、量子コンピューティングの実用化に不可欠とされるエラー訂正問題の解決に焦点を当てており、業界から大きな期待が寄せられている。
2026年までに100万回のエラーフリー量子コンピュータを計画
Riverlaneが開発に注力しているのは、量子エラー訂正(QEC)技術だ。量子コンピューターは従来のコンピューターとは全く異なる原理で動作するため、わずかな外からのノイズでも計算結果が大きく狂ってしまう。この問題を解決しなければ、量子コンピューターの実用化は困難だと考えられてきた。Riverlaneの技術は、まさにこの課題に正面から取り組むものだ。
同社の主力製品Deltaflow™は、専用のQECチップ、ハードウェア、ソフトウェア技術を組み合わせたシステムで、1秒間に数十億のエラーを修正する能力を持つという。現在の最高性能の量子コンピューターでも、数百回の量子演算を行うと故障してしまう状況を考えると、この技術が実現すれば、量子コンピューティングの可能性は大きく広がることになる。
Riverlaneの創設者兼CEOであるSteve Brierley氏は、次のように述べている:「量子エラー訂正は、業界の次の大きな進歩の重要な推進力となります。今日の小規模で誤りの多い機械から、デジタル革命と同じくらい重要な新時代を切り開く大規模で信頼性の高い量子コンピューターへの移行を可能にするのです」。
Riverlaneの野心的な目標は、2026年までに100万回のエラーフリー量子コンピューター演算(MegaQuOp)を達成することだ。この目標が達成されれば、量子コンピューターがスーパーコンピューターのシミュレーション能力を超える重要な技術的転換点に到達することになる。これにより、複雑な化学プロセスのシミュレーションなど、これまで不可能だった計算が可能になると期待されている。
具体的な応用例として、より効率的なクリーンエネルギー貯蔵のための新しいバッテリー材料の開発や、より環境に優しい肥料生産プロセスの設計などが挙げられている。これらの応用は、持続可能性を重視する投資家たちの関心を引きつけた要因の一つだろう。
今回の資金調達には、持続可能性に焦点を当てた投資家グループが参加している点も注目に値する。Planet First Partnersがリードインベスターとなり、ETF PartnersとシンガポールのEDBIも新規投資家として名を連ねた。既存投資家のCambridge Innovation Capital、Amadeus Capital Partners、英国のNational Security Strategic Investment Fund、Altairも資金を提供している。これらの投資家の参加は、量子コンピューティング技術が持続可能な社会の実現に貢献する可能性への期待を示している。
Riverlaneの技術開発と事業展開は、量子コンピューティング業界全体の動向とも密接に関連している。業界は今、小規模で誤りの多い現在の機械から、統合されたQEC技術を備えた「フォールトトレラント」な量子コンピューターへの移行を目指している。Riverlaneの技術は、この移行を加速させる可能性を秘めており、Rigetti Computing、Alice & Bob、QuEra Computing、Infleqtion、Atlantic Quantumなどの主要な量子コンピューティング企業や、米国のOakridge National Lab、英国のNational Quantum Computing Centreなどの国立研究所との協力関係を構築している。
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