高純度石英の主要な供給元であるノースカロライナ州スプルースパインの鉱山が、ハリケーン・ヘレンによる被災からわずか10日余りで生産を再開した。同地域で採掘を行う2社のうちの1社であるSibelco社が、10月12日に発表したプレスリリースによると、同社の被害は軽微であり、全従業員の安全も確認されている。
Sibelco社、ノースカロライナ州スプルースパインでの操業を再開
Sibelco社のCEOであるHilmar Rode氏は、「極めて困難な状況下で、従業員たちが示した非凡な回復力とチームワークに感謝したい」と述べ、被災からの迅速な復旧を称えた。同社は顧客への出荷を再開し、生産能力を段階的に引き上げて全能力での操業を目指している。
ハリケーン・ヘレンは、カテゴリー4の勢力でスプルースパイン地域に甚大な被害をもたらした。この災害により、半導体製造に不可欠な高純度石英の供給に支障が生じるのではないかとの懸念が一時的に広がっていた。
スプルースパイン地域で採掘される高純度石英は、半導体製造プロセスにおいて極めて重要な役割を果たしている。この石英は、シリコン結晶を育成する際に使用するるつぼの材料として用いられる。高純度のシリコンを溶融する際、通常の容器では不純物が混入してしまうため、同様に高純度な石英るつぼが必要となるのである。
多くのチップメーカーやその供給業者は、サプライチェーンの混乱に備えて十分な量のシリコンウェハーやシリコンインゴットを確保していたため、業界への大きな影響は予想されていなかった。また、世界には他の石英供給源も存在するが、ノースカロライナ州の鉱山ほど容易に入手可能で手頃な価格ではないとされている。
それでも、Sibelco社の生産再開は業界全体にとって朗報である。2020年のCOVIDパンデミックから2022年にかけて経験したサプライチェーンの混乱が記憶に新しい中、その再来を避けたいという思いが業界内で共有されている。
地域経済復興への貢献と今後の展望
Sibelco社は、操業再開に加えて地域の復興活動にも積極的に参加している。同社は請負業者の支援を受けながら、がれきの撤去、道路の修復、ノースカロライナ州運輸局への道路建設材料の提供、緊急避難所や地元企業への一時的な発電機の設置、スプルースパイン町との協力による住民への水道供給の再開などを行っている。
さらに、Sibelco社は地域社会の復興を支援するために「Sibelco Spruce Pine財団」を設立し、そのシード資金として100万ドルを即時寄付することを発表した。この取り組みは、企業の社会的責任を果たすとともに、地域経済の再建に向けた重要な一歩となっている。
今回の事例は、我々のグローバルな半導体サプライチェーンが、地域的な大規模イベントに対していかに脆弱であるかを示している。米国やEU、その他の国々が半導体産業の強化に向けて投資を行っているが、米国のCHIPS法のような取り組みが実を結ぶまでには、数年から数十年の時間を要する。それまでの間、我々の社会を支えるチップ製造に必要な繊細なグローバルネットワークが、これ以上の混乱に見舞われないことを願うばかりである。
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