Nintendo Switchの後継機「Nintendo Switch 2(仮称)」の処理性能に関する具体的な情報がリークされた。それによると、Switch 2は据え置きモードで3.1テラフロップス(TFLOPS)の演算性能を実現し、現行のXbox Series Sの4.0 TFLOPSに迫る性能を持つ可能性が高いとのことだ。
Nintendo Switch 2の具体的な性能指標
新型Nintendo Switch(通称Switch 2)の心臓部となるのは、NVIDIAが開発したTegra 239 SoCだ。このチップは、8コアのCPUと、NVIDIA最新世代のAmpereアーキテクチャをベースとしたGPUを統合している。GPUには2048基のCUDAコアが搭載され、これがゲームの3Dグラフィックス処理を担う。
Famiboardsのユーザー Zachyが明らかにした情報によると、このGPUは使用状況に応じて動作周波数を大きく変化させる。テレビに接続して使用する据え置きモードでは、GPUのクロック周波数が1000MHzまで上昇し、3.1テラフロップス(TFLOPS)という演算性能を実現する。これは1秒間に3.1兆回の浮動小数点演算が可能であることを意味する。
一方、携帯モードでは省電力性能を重視し、GPUクロックを561MHzまで抑制する。その結果、演算性能は1.71 TFLOPSまで低下するものの、これは現行の携帯ゲーム機として高い評価を受けているValveのSteam Deck(1.6 TFLOPS)をわずかに上回る数値だ。
この性能差は実際のゲームプレイにも影響を与える。据え置きモードでは4K解像度での出力に対応し、より詳細なテクスチャや複雑な光源効果を実現できる可能性がある。携帯モードでは720pから1080p程度の解像度での表示が想定され、バッテリー持続時間とグラフィック品質のバランスを取る設計となっている。
この新型ハードウェアは2021年に発売されたデスクトップPC向けのGeForce RTX 3060(12TFLOPS)と比較すると4分の1程度の演算性能だが、これは携帯ゲーム機という製品特性を考慮すれば妥当な性能差と言える。むしろ注目すべきは、現行の据え置き型ゲーム機であるXbox Series S(4TFLOPS)の約8割という、携帯ゲーム機としては極めて高い性能を実現している点だ。
これらの仕様は、任天堂が携帯ゲーム機としての利便性を保ちながら、現代的なゲーム体験に必要な処理能力を確保することに成功したことを示している。特に、据え置きモードと携帯モードの性能差を適切にコントロールすることで、どちらのモードでも快適なゲームプレイが期待できる設計となっている。
メモリ構成とDLSSの重要性
新型Nintendo Switchのシステムメモリは、当初の予想を上回る12GBのLPDDR5メモリを採用することも複数のソースから報告されている。これは現行モデルの4GBから大幅な増強となり、より大規模で複雑なゲーム世界の描画や、高解像度テクスチャの使用を可能にする仕様だ。
しかし、GPU専門家の@Kepler_L2が指摘するように、このメモリシステムには潜在的な課題がある。メモリ帯域幅は102GB/sにとどまり、これは同じ価格帯の据え置き型ゲーム機であるXbox Series S(224GB/s)の半分以下となっている。メモリ帯域幅とは、CPUやGPUがメモリとの間でデータをやり取りできる速度を示す指標だ。この制限は、特に広大なオープンワールドを持つゲームや、高解像度テクスチャを多用するタイトルでパフォーマンスのボトルネックとなる可能性がある。
これらのハードウェア制約を補うため、Nintendo Switch 2はNVIDIAの最新技術を採用する。その中核となるのが、「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」、そしてその技術の1つである「レイ再構成」だ。DLSSは人工知能を活用して低解像度でレンダリングした画像を高品質にアップスケーリングする技術で、例えば720pで描画した画像を4K相当の品質まで引き上げることが可能となる。これにより、限られたハードウェア性能で高解像度な映像出力を実現できる。
さらに注目すべきは、DLSSがメモリ帯域幅の制約を緩和する効果も期待できる点だ。低解像度でのレンダリングはテクスチャデータの転送量も削減するため、メモリ帯域幅の制限を受けにくくなる。これは特に携帯モードでの性能向上に貢献すると考えられる。
レイ再構成技術についても対応が予告されているが、その実際の活用は限定的になる可能性が高い。この技術はリアルタイムレイトレーシング効果を効率的に実現するものだが、限られたGPU性能を考慮すると、シンプルな反射や柔らかい影の表現など、部分的な活用にとどまるだろう。
このような最新技術の採用は、Nintendo Switch 2が直面するハードウェア制約を巧みに回避するための戦略と言える。特にDLSSの存在は、開発者にとって重要なパフォーマンス最適化のツールとなるはずだ。例えば、動きの激しいアクションゲームでは解像度を下げてフレームレートを確保し、静的なシーンでは高解像度出力を行うといった、柔軟な描画品質の調整が可能となる。
発表時期と下位互換性
任天堂は2024年3月期末までに新ハードウェアを発表すると公言している。一部の情報筋は1月16日の発表を示唆しているが、これは未確認情報である。
確認されている重要な特徴として、既存のNintendo Switchタイトルとの下位互換性がある。これにより、発売時から豊富なゲームライブラリにアクセスできることが保証されている。
Xenospectrum’s Take
新型Switchの性能仕様は、任天堂らしい現実的かつ賢明な選択を示している。Xbox Series Sに迫る性能は、サードパーティーデベロッパーにとって既存のXbox Series S向け設定を最適化の出発点として活用できる利点がある。また、DLSSの採用は限られたモバイルハードウェアの性能を最大限に引き出す戦略として理に適っている。
ただし、メモリ帯域幅の制限は無視できない課題だ。これは特に大規模なオープンワールドゲームでの性能に影響を与える可能性がある。任天堂はこの制限を念頭に置いた独自の最適化ガイドラインをデベロッパーに提供する必要があるだろう。
結果として、この性能バランスは「任天堂品質」を維持しながら、現代的なゲーム体験を提供するための妥当な妥協点と言える。ただし、成功の鍵を握るのは、ハードウェアの限界を巧みに回避するゲーム開発手法とDLSSの効果的な活用となるだろう。
Sources
- Famiboard
- via Wccftech: Nintendo Switch 2 Docked/Undocked TFLOPS Leaked
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