自動運転車の安全性に対する懸念が依然として根強い中、Googleの親会社Alphabet傘下のWaymoが、同社の完全自動運転システムの安全性を示す画期的な研究結果を発表した。スイス再保険(Swiss Re)との共同研究により、Waymoの自動運転システムは人間のドライバーと比較して、物損事故で88%、人身事故で92%の削減を達成したことが明らかになった。
4000万km超えの実証データが示す圧倒的な安全性
他社が躓き続ける中、Waymoは着実にその事業を前進させている。 既報のように、2025年にも東京でのテスト走行を開始するなど、他国の新しい道路への拡張のニュースとともに、米国本土でもロボットタクシーの足跡を拡大している。
そんな同社に今回の調査結果は渡りに船と言えるだろう。WaymoとSwiss Reの研究チームはWaymoの自動運転車が走行した2,530万マイル(約4071万km)における保険請求データを詳細に分析した。この期間中、Waymoの車両による物損事故の請求は9件、人身事故の請求は2件という驚くべき低水準にとどまっていることが明らかになった。これは同じ距離を人間が運転した場合に予想される物損事故78件、人身事故26件と比較して、著しい差だ。
注目すべきは、現在進行中の請求の状況だ。9件の物損事故請求のうち2件、そして2件の人身事故請求はいずれもまだ結論が出ていない未解決の案件である。これらの未解決案件は、最終的に支払いが不要と判断される可能性も残されており、実際の事故率はさらに低くなる可能性もあるようだ。
さらに特筆すべき点として、最新の安全技術を搭載した新型車両との比較においても、Waymoシステムは明確な優位性を示している。自動緊急ブレーキ、前方衝突警告、レーンキープアシストなどの先進運転支援システム(ADAS)を標準装備した2018-2021年モデルと比較しても、物損事故で86%、人身事故で90%という顕著な削減を実現している。この比較対象となった最新車両は、すでに一般の車両と比べて19%から21%の事故率削減を達成していることを考慮すると、Waymoシステムの卓越性がより際立つ結果となっている。
人身事故に関する詳細な分析も重要な示唆を提供している。Waymoが米国道路交通安全局(NHTSA)に報告した全241件の衝突事例のうち、今回の分析で確認された2件の人身事故請求は、わずか0.8%に相当する。これは、ほとんどの事故においてWaymoのシステムが責任を問われていないことを示している。同じ走行距離における人間のドライバーであれば、97件の人身事故に関与することが予想されることと比較すると、その差は歴然としている。
研究の信頼性と方法論
本研究の最大の強みは、Swiss Reが保有する膨大なデータベースに基づく比較分析にある。500,000件を超える保険請求と2,000億マイル以上の走行距離という規模は、統計的に極めて高い信頼性を担保している。研究チームは、サンフランシスコ、フェニックス、ロサンゼルス、オースティンという地理的・文化的特性の異なる4都市における運行データを綿密に分析し、地域特性による偏りを最小限に抑える工夫を施している。
方法論的な厳密性も特筆に値する。研究チームは保険業界で確立された標準的な評価手法を採用し、特に第三者賠償責任保険の請求データに焦点を当てている。これは事故における責任の所在を明確にする上で重要な意味を持つ。研究責任者のLuigi Di Lillo氏らは、この手法により、自動運転システムと人間のドライバーの性能を、同一の基準で客観的に評価することを可能にした。
データの収集期間も慎重に設定されている。2017年から2022年までの6年間にわたるデータを分析対象とすることで、季節変動や短期的な異常値の影響を排除している。さらに、保険金請求の発生から解決までのタイムラグを考慮し、2024年11月30日時点での評価を基準としている点も、分析の精度を高める要因となっている。
研究チームは、ベンチマークとなる人間ドライバーのデータについても、細心の注意を払って選定している。特に注目すべきは、最新の安全技術を搭載した車両(2018年から2021年モデル)の所有者に限定した比較分析だ。この層は、全体の約17%を占め、80,000件以上の請求と400億マイル以上の走行距離という十分なサンプルサイズを確保している。
また、この研究では地理的な補正も重要な役割を果たしている。各都市の年間走行距離や車両登録台数といった基礎データを、連邦高速道路管理局(FHWA)の統計や米国国勢調査のデータを用いて精緻に補正している。特に、都市部と郊外での走行パターンの違いや、高速道路の利用頻度の差異なども考慮に入れた包括的な分析となっている。
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