豪・Morse Microが、「Wi-Fi HaLow™(IEEE 802.11ah)」と「Wi-Fi 4 (802.11n)」 の両方に対応した世界初のルーター「HaLowLink 1」を発表。長距離・低消費電力のWi-Fi HaLow技術を活用し、IoT分野に新たな可能性を拓く。市街地で最大3km、郊外では最大16kmの通信範囲を誇り、従来のWi-Fiでは難しかったエリアもカバーする上に、既存のWi-Fi 4機器との連携も可能となっている。
Wi-Fi HaLowとWi-Fi 4の融合:長距離と互換性を両立
Morse MicroとGL.iNetの協業により開発された「HaLowLink 1」は、Wi-Fi HaLow技術を搭載したリファレンスデザインかつ評価プラットフォームとなる。IoT(Internet of Things)デバイス向けに長距離、低消費電力の無線接続を提供することを目的に開発された。
HaLowLink 1は、Morse MicroのMM6108 Wi-Fi HaLowチップセットと、MediaTek MT7621AデュアルコアCPU、AzureWave AW-HM593モジュールを搭載。Wi-Fi HaLow (IEEE 802.11ah)は、サブGHz帯を利用し、長距離通信と低消費電力を実現する規格だ。
- Wi-Fi HaLow: 最大32Mbps (8MHz帯域幅)
- Wi-Fi 4: 最大300Mbps (40MHz帯域幅)
従来のWi-Fi 4デバイスとの互換性を保ちつつ、Wi-Fi HaLowによる長距離接続を可能にする点が、HaLowLink 1の最大の特徴となっている。
Wi-Fi Allianceのマーケティング担当バイスプレジデント、Maureen Gallagher氏は、「HaLowLink 1の認証は、信頼性が高く相互運用可能なWi-Fi HaLow製品の重要性の高まりを裏付けるものです」とコメント。「通信範囲の拡大と低消費電力機能を備えたWi-Fi HaLowは、IoTアプリケーション向けの強力なソリューションであり、Morse MicroはWi-Fi CERTIFIED®プログラムを通じて高品質な製品を提供することで、その普及を加速させることに尽力しています」。
多彩な活用シナリオ:アクセスポイント、エクステンダー、ブリッジとして
HaLowLink 1は、その柔軟性の高さから、さまざまな用途に活用できる。
- アクセスポイント: Wi-Fi HaLowネットワークを構築し、900MHz帯でクライアントデバイスと接続。同時に、既存の2.4GHz Wi-Fi 4、イーサネット、USBデバイスへの接続も提供。
- エクステンダー: 既存のWi-Fiネットワークの範囲を拡大。2台のHaLowLink 1を組み合わせ、Wi-Fi HaLowで中継することで、通信が困難な場所のデバイスをネットワークに接続可能。
- ブリッジ: 2台のHaLowLink 1を使い、イーサネットケーブルの代わりにWi-Fi HaLowで長距離ワイヤレス接続を実現。過酷な環境下での利用に最適。
- 従来のWi-Fi 4およびイーサネットデバイスをWi-Fi HaLowネットワークに接続し、使用可能範囲を拡大。
堅牢なハードウェアとOpenWrtによる拡張性
HaLowLink 1は、以下のハードウェア仕様を備えている。
- SoC: MediaTek MT7621デュアルコア、クアッドスレッドMIPS1004Kプロセッサー (最大880MHz)
- システムメモリ: 256MB DDR3 (オプションで512MB)
- ストレージ: 32MB NANDフラッシュ
- 接続性:
- Wi-Fi HaLow (AzureWave AW-HM593モジュール、Morse Micro MM6108チップセット)
- 2.4GHz Wi-Fi 4 (802.11n)
- 2x ギガビットイーサネット (1x WAN, 1x LAN)
- USB-Cポート (電源供給およびネットワークアクセス用)
ソフトウェア面では、OpenWrtベースのファームウェアを採用。WebベースのUIやSSH/CLIによる設定が可能で、ping、traceroute、iperf3、arp-scanなどの診断ツールも利用できる。
Morse Microの共同創設者兼CEOであるMichael De Nil氏は、次のように述べている。「世界初のWi-Fi 4とWi-Fi HaLowのデュアル認証ルーターの発売により、当社は開発者に強力なツールを提供し、Wi-Fi HaLowの低消費電力で広範囲にわたる接続性の利点を追求し、その普及への道を開きます」
グローバル展開と認証状況
HaLowLink 1は、現在、北米(FCC)、カナダ(IC)、オーストラリア(RCM)で認証を取得済み。Morse Microは、EMEA (868MHz) およびアジア市場向けの認証も進めている。
XenoSpectrum’s Take
HaLowLink 1は、Wi-Fi HaLowの可能性を具体的に示す画期的な製品だ。長距離通信と低消費電力という特性は、IoTデバイスの設置場所の制約を大幅に緩和し、スマートシティ、農業、産業オートメーションなど、幅広い分野での応用が期待される。
特に注目すべきは、Wi-Fi 4との互換性を確保している点。既存のWi-Fiインフラを活用しつつ、Wi-Fi HaLowのメリットを段階的に導入できるため、スムーズな移行が可能だ。また、OpenWrtの採用により、ユーザーが自由に機能を拡張できる点も魅力。
今後の課題は、Wi-Fi HaLow対応デバイスの普及と、より高速な通信規格への対応だろう。Morse Microは、2025年のCESで16kmの範囲で250Mbpsの通信が可能なWi-Fiルーターを紹介しており、今後の技術開発に期待したい。
Sources
コメント