Microsoftはアラブ首長国連邦のAI企業Group 42 Holdings(G42)に15億ドルを出資することを発表した。
両社は、中東、中央アジア、アフリカのさまざまな産業や市場に向けて、Microsoft Azureを使ったAIソリューションを共同開発・提供するという。
取引の一環として、Microsoftの副会長兼社長であるBrad Smith氏がG42の取締役に就任する。この契約には、UAEの開発者向けにAIを後押しする10億ドルのファンドを共同で設立することも含まれている。
このパートナーシップは、AIの責任ある安全な展開と、国際貿易、セキュリティ、ビジネスインテグリティ基準の遵守を確保するための、米国政府とUAE政府に対する保証によって支えられている。
この取引は、巨大AI企業2社の商業的な協力だけに留まらず、地政学的な緊張が高まるなかでの2カ国の戦略的な位置づけを示す証拠となる。
これまで米国の政治家たちがG42と中国との関係への懸念を強めていた。1月には、超党派の下院中国共産党特別委員会がGina Raimondo商務長官に書簡を送り、商務省がG42を産業安全保障局の企業リストに掲載するよう調査するよう促した。こうした動きは、2019年に米国政府の輸出管理規則に基づく禁輸措置対象のリスト(エンティティ・リスト)に掲載されたHuaweiと同じ轍をG42も踏む形になることを予見させる物だった。
だがBloombergによると、G42は米国政府との交渉の末、中国からの撤退に合意したという。その見返りとして、米国政府はG42に対し、NVIDIAチップなど米国の技術への継続的なアクセスを保証した。この決定が、今回のMicrosoftの投資にも道を開いた形だ。G42は、医療や航空宇宙など多様な分野でAIを活用したいと考えている。
今回のパートナーシップの下、G42はMicrosoftのクラウドオファリングの展開へのコミットメントを拡大し、データプラットフォームとデジタルインフラストラクチャをMicrosoft Azureに移行すると述べた。
G42のアラビア語大規模言語モデルJaisも、Azure AIモデルカタログで利用できるようになる。両社は、このモデルは4億人以上のアラビア語話者に生成AIを使用する機会を提供すると述べている。
G42は2023年7月、Celebrasのチップを使ったJaisの開発に9億ドルを投じると初めて発表した。
2018年に設立されたG42は、アブダビを拠点とするAIおよびクラウドコンピューティング企業で、石油・ガスセクターのほか、政府、ヘルスケア、金融にソリューションを提供している。UAEの創設者であるZayed bin Sultan Al Nahyanの息子がG42のオーナーである。
同社は最近、ケニアのEcoCloud社と提携し、ケニアに地熱データセンターを建設した。G42の他のデータセンターは、2021年にEtisalat GroupとのジョイントベンチャーでKhaznaデータセンターを買収した会社にちなんで名付けられたKhazna Groupの下で運営されている。Khazna Groupは現在、この地域で最大のデータセンター・プロバイダーであり、12のデータセンターを運営している。
MicrosoftとG42は昨年提携し、Khaznaの施設を活用・拡大するためのソブリン・クラウド・プラットフォームを立ち上げた。
G42の子会社であるCore42とM42も、それぞれMicrosoftと協力してFirst Abu Dhabi BankのデータセンターをAzureに移行し、Terraプラットフォームを使って生物医学研究のためのデータ分析を行っている。
アブダビはAIハブになろうとしている
アブダビは世界的なAIのハブになることを目指しており、豊富な資源、低いエネルギー価格、投資家や人材を惹きつけるための政治的支援を頼りにしている、とFinancial Times紙は最近報じた。
G42とOpenAIは2023年10月にパートナーシップを結んだ。FTによると、G42と同じ首長が支配するアブダビの政府系ファンドMGXも、独自のAIチップ製造インフラを構築するOpenAIの計画への資金提供の可能性について予備的な協議を行っているという。
MicrosoftのSmith副社長は、両社はUAEで協力するだけでなく、十分なサービスを受けていない国々にAIやデジタルインフラ、サービスを提供すると述べた。「我々は、UAEと米国の両政府と緊密に連携しながら、世界トップクラスのテクノロジーと、安全で信頼できる責任あるAIのための世界トップクラスの基準を組み合わせていきます」と述べている。
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