世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCが、台湾南部の高雄市に新たに2つの半導体製造工場を建設する計画を明らかにした。この計画は、同社の高雄における生産能力を大幅に拡大するものであり、台湾の半導体産業の競争力をさらに強化することが期待されている。
TSMCの新工場建設計画
新たに建設される2つの工場は「P4」および「P5」と呼ばれ、既に計画段階に入っているという。これらの工場は、高雄市の楠梓科技産業園区に建設される予定で、同地域における同社の製造施設数を合計5つに増やすことになる。高雄市長の発表によると、環境アセスメントが間もなく開始される予定だ。
TSMCは昨年8月に同地域での最初の工場「P1」の建設を開始しており、来年から量産を開始する予定である。また、「P2」および「P3」も現在建設中であり、これらに加えて今回発表された2つの新工場が建設されることで、TSMCの生産能力は飛躍的に向上することが見込まれる。
これらの新工場は、TSMCが今年8月に発表した第3の2ナノメートル製造工場(P3)に続くものである。P3工場は高雄市の楠梓科技産業園区内に建設が予定されており、238ヘクタールの広大な敷地を有している。
しかし、これらの工場が建設される土地は以前、国営の石油精製所があった場所であり、TSMCは工事開始前に大規模な土壌改良と浄化作業を行う必要があった。P4、P5ファブの建設予定地も同様に、TSMCは工事開始前に大規模な土壌改良と浄化作業を行う必要がある。この環境対策は、地域社会との良好な関係を維持する上でも重要な取り組みとなるだろう。
TSMCの製造プロセス技術ノードの計画
現在のTSMCの製造プロセス技術ノードの計画によると、高雄のP1とP2工場はともに2nm(ナノメートル)プロセスを採用する予定だ。P1工場は12月から装置の設置を開始し、早ければ来年第2四半期にトライアル生産が始まる見込みである。P2工場の装置設置は2025年後半から2026年初頭になると予想されている。
P3工場については、環境アセスメントが既に承認されており、今年中に着工する予定だ。完成は2026年末以降になると見込まれている。
TSMCのグローバル戦略と台湾での展開
TSMCは上記の計画以外にも台湾国内での生産能力拡大を積極的に進めており、嘉義市や台南市では先進パッケージング(高度な半導体パッケージング技術)の生産能力を拡大し続けている。一方で、先進的な半導体製造プロセスは高雄市に集中させる方針のようだ。
今後5年間、TSMCは工場の拡張を継続する見通しであり、これにより台湾南部の半導体産業チェーンはさらに強化されると予想される。
だが、台湾国外でもTSMCは事業展開を進めている。最近の動きとして、米国の半導体製品パッケージングおよびテストサービス企業であるAmkor Technologyと覚書を締結したことは記憶に新しい。この提携により、AmkorはTSMCのアリゾナ州ピオリアに計画されている外部半導体組立・テスト(OSAT)工場で、TSMCに先進的なパッケージングおよびテストサービスを提供することになる。
TSMCの業績も好調だ。2024年第3四半期(7月-9月)の暫定売上高は234億ドルで、同社の過去最高を記録し、会社の業績予想を上回る結果となっている。
今後もTSMCは台湾を中心とした生産能力の拡大と、海外での事業展開を並行して進めていくことが予想される。特に、先進的な半導体製造プロセスの開発と量産化に注力し、世界最大の半導体ファウンドリとしての地位を強化していくものと見られる。
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