中国ByteDance社が運営する人気ショートビデオプラットフォーム「TikTok」が、グローバル規模で数百人の従業員を解雇したようだ。この突然の人員削減は、同社がAI(人工知能)を活用したコンテンツモデレーションへとシフトする戦略の一環であると報じられている。
AIが人間の仕事を奪う? コンテンツモデレーションの大変革
TikTokの広報担当者は11日、Reutersに対し「コンテンツモデレーションのグローバル運用モデルをさらに強化する継続的な取り組みの一環として、これらの変更を行っている」と声明を発表した。同社は今年、信頼性と安全性の確保に全世界で20億ドルを投資する予定であり、自動化技術の効率性向上に注力しているという。
特に大きな影響を受けたのはマレーシアの従業員だ。当初、700人以上が解雇されたと報じられたが、TikTok側は「マレーシアでは500人未満の従業員が影響を受けた」と後に訂正した。解雇された従業員の多くは、コンテンツモデレーション業務に携わっていたとされる。
ByteDanceは現在、世界200以上の都市で11万人以上の従業員を抱えている。しかし、今回の人員削減に留まらず、同社は来月にもさらなる人員整理を計画しているという。この動きは、TikTokが地域的な運営を統合し、AIによる自動化を推進する大きな転換点となる可能性がある。
TikTokのコンテンツモデレーションは、これまで人間のモデレーターとAIを組み合わせたハイブリッド方式で行われてきた。AIがアップロードされた動画を自動的にスキャンし、ヌード、暴力、その他TikTokのルールに違反する可能性のある内容をチェックする一方、人間のモデレーターはAIが判断に迷うケースや、ユーザーが異議を申し立てた場合の再審査を担当していた。
しかし、今回の大規模なレイオフは、TikTokがAIによる自動モデレーションにさらに重点を置く方針への転換を示している。同社の広報担当者は、「ガイドライン違反コンテンツの80%が現在、自動化技術によって削除されている」と述べ、AIの効率性が大幅に向上していることを強調した。
この変革により、人間のモデレーターの役割は大きく変化する可能性がある。AIが日常的なモデレーション作業の大部分を担うようになれば、人間のモデレーターはより複雑で判断の難しいケースや、AIの判断を監督する役割にシフトしていくと考えられる。
しかし、この変化には課題も存在する。2022年には、TikTokの人間モデレーターが劣悪な労働環境下で働いていることが報告されている。The Bureau of Investigative Journalismの調査によれば、世界中のTikTokモデレーターの時給は約1.80ドル、日給約10ドルという低水準であり、殺人、自殺、小児性愛、ポルノ、事故、食人行為などの動画を日常的に審査することを求められていたという。そうした人間のモデレーターの労働環境と待遇の問題も依然として解決されていない。TikTokは以前、モデレーターの精神的・感情的サポートを提供していると主張していたが、実際の労働者たちはその効果に疑問を呈している。AIの導入により、残された人間のモデレーターの業務負担がさらに増加する可能性もある。
TikTokの大規模なレイオフとAI重視の方針は、ソーシャルメディア業界全体に大きな影響を与える可能性がある。他のテクノロジー企業も、コスト削減と効率化を目的としたAI活用に注目しており、TikTokの動きは一種のトレンドセッターとなるかもしれない。
しかし、この動きには懸念の声も上がっている。マレーシア政府は今年初め、有害なソーシャルメディアコンテンツの急増を報告し、TikTokを含む企業に対してプラットフォーム上の監視強化を要請した。さらに、マレーシア政府は2024年1月までにソーシャルメディア運営者に対し、サイバー犯罪対策の一環として運営ライセンスの取得を義務付ける方針を打ち出している。
このような規制強化の動きは、AIによるモデレーションの信頼性と精度に対する懸念を反映している。AIが人間のモデレーターに完全に取って代わることができるのか、AIが文化的な文脈や微妙なニュアンスを適切に理解できるかという点だ。例えば、皮肉や風刺、地域特有のジョークなどを正確に判断することは、現在のAIにとってはまだ難しい課題である。
また、人間のモデレーターの役割が縮小されることで、プラットフォームの品質管理や倫理的判断にどのような影響が出るかも注視する必要がある。AIの判断に対する人間の監督や、複雑なケースへの対応など、人間のモデレーターの重要性は依然として高いと考えられる。
しかし、この動きには懸念の声も上がっている。マレーシア政府は今年初め、有害なソーシャルメディアコンテンツの急増を報告し、TikTokを含む企業に対してプラットフォーム上の監視強化を要請した。さらに、マレーシア政府は2024年1月までにソーシャルメディア運営者に対し、サイバー犯罪対策の一環として運営ライセンスの取得を義務付ける方針を打ち出している。
TikTokのこの動きは、効率性とユーザー体験の向上を目指す一方で、プラットフォームの信頼性と安全性を維持するという難しいバランスの上に成り立っている。今後、他のソーシャルメディア企業がどのようにこの課題に対応していくか、業界全体の動向を注意深く見守る必要があるだろう。
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