Mark Zuckerberg氏率いるMetaが計画していた原子力発電による電力を利用するAIデータセンター建設計画が、建設予定地で希少種の蜂が発見されたことにより実現困難となったことが明らかになった。この計画は、AI開発競争が激化する中、環境に配慮した持続可能なデータセンターの構築を目指すものであった。
蜂の発見が決定打に
Metaは既存の原子力発電所運営者とパートナーシップを結び、排出ガスを伴わない電力供給を受ける計画を進めていた。しかし、発電所に隣接する建設予定地で希少種の蜂が発見されたことにより、環境規制上の新たな課題が浮上。先週開催された全社員会議で、Zuckerberg氏はこの発見がプロジェクトを複雑化させる要因となったことを明かしたと、Financial Timesが内部関係者の情報として伝えている。
この発見により、絶滅危惧種保護に関する環境規制の観点から、施設建設には相当な規制上の障壁が予想される事態となった。
テック業界で加速する核エネルギー利用競争
大手テクノロジー企業が原子力エネルギーの活用に積極的な姿勢を見せている。この動きを牽引するのはMicrosoftで、同社は2023年9月、かつて重大な事故で知られるペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所の再稼働計画を発表。837メガワットの電力を20年間にわたって全量購入する契約を締結した。
Amazonも、同じくペンシルベニア州のサスケハナ原子力発電所に隣接する用地を6億5000万ドルで取得し、大規模データセンターの建設に着手。さらに同社は、Energy Networkなど複数の事業者と提携し、小型モジュール炉の開発にも参画している。
最も野心的な取り組みを見せるのはGoogleだ。同社は米国のスタートアップKairos Powerと提携し、6〜7基の小型モジュール炉を発注。テクノロジー企業として初めて、新規の原子力発電所建設に踏み切った。2030年までに第一号機の稼働を目指している。
この背景には、AIモデルの学習と運用に必要な電力需要の急増がある。一般的なGoogle検索と比較して、生成AIの1回のクエリは最大10倍の電力を消費する。再生可能エネルギーだけでは安定的な電力供給が難しい中、核エネルギーは24時間365日稼働可能な基幹電源として、テック企業の注目を集めているのである。背景には、AIクエリ1回の処理に通常のGoogle検索の10倍もの電力を消費するという事実がある。
中国との開発競争も影響
Metaのプロジェクト頓挫は、米中のAI開発競争において新たな懸念材料となっている。関係者によると、Mark Zuckerbergは米国における原子力発電の選択肢の少なさに強い不満を示しているという。その背景には、中国が推進する積極的な原子力政策との対比がある。
中国は現在、世界最大規模の原子力発電所建設計画を進行中である。同国は過去20年間で着実に原子炉の新設を重ね、2060年までのカーボンニュートラル達成を見据え、さらなる建設ペースの加速を計画している。一方、米国では同期間に稼働を開始した原子炉はわずかにとどまり、新規建設に向けた規制や環境アセスメントの壁が高く立ちはだかっている。
Xenospectrum’s Take
この事例は、テクノロジー企業のAI開発競争が環境保護との両立を迫られている現状を象徴している。Microsoftが先週、AI投資により2020年比で排出量が29%増加したことを認めたように、AIの電力需要は今後も増加の一途を辿ると予想される。再生可能エネルギーと核エネルギーの適切なバランスを見出すことが、持続可能なAI開発の鍵となるだろう。
Source
- Finalcial Times: Meta’s plan for nuclear-powered AI data centre thwarted by rare bees
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