PlayStation 5 Proの実機テストにより、従来モデルとほぼ同等の電力消費で最大35%のパフォーマンス向上を実現していることが明らかになった。Digital Foundryの詳細な分析によれば、この驚異的な効率改善は、特に『エルデンリング』などの非最適化タイトルでも確認されている。
驚異的な電力効率の実測データ
Digital Foundryの徹底的なベンチマークテストによると、PS5 Proの電力消費は基本的にPS5/PS5 Slimと同等レベルに留まっている。具体的な測定では:
- 『エルデンリング』:PS5 Pro 214.1W vs PS5 Slim 216.2W
- 『スパイダーマン2』:PS5 Pro 232W vs PS5 Slim 218.2W
- 『F1 24』:最大で約235W程度
特筆すべきは、『エルデンリング』でわずか5.5%の電力増加で35%のフレームレート向上を達成している点である。PS5 Proは52FPSを記録し、PS5/PS5 Slim(37-40FPS)を大きく上回った。
技術的革新の背景
PlayStation 5 Proの驚異的な電力効率の向上は、複数の技術革新が組み合わさることで実現された。中核となるGPUは、従来モデルの10.28 TFLOPSから16.7 TFLOPSへと大幅に強化されている。この62.5%の理論性能向上は、RDNAアーキテクチャの最適化によって達成された。
メモリシステムにも大きな改良が施されている。メモリ帯域は従来の448GB/sから576GB/sへと拡張され、この28.6%の帯域向上により、高解像度テクスチャの処理や複雑なレイトレーシング演算での性能ボトルネックが大幅に緩和されている。
製造プロセスの進化も、この効率向上の重要な要因となっている。Digital Foundryの分析によると、PS5 Proは推定4nmプロセスを採用していると見られる。より微細な製造プロセスへの移行により、同じ演算処理をより少ない電力で実行することが可能になった。これは特に待機時や軽負荷時の消費電力削減に大きく貢献している。
さらに、SonyはPSSR(PlayStation Shader Reconstruction)と呼ばれる独自のアップスケーリング技術を実装している。この技術により、低解像度でレンダリングした画像を高品質にアップスケールすることが可能となり、GPUの負荷を抑えながら高解像度出力を実現している。例えば、『Alan Wake 2』ではレイトレーシングを有効にした30FPSモードで高品質な反射表現を実現し、F1 24ではレイトレーシングによる反射と環境遮蔽を両立させている。
これらの技術革新は個別に見ても印象的だが、真の革新性はこれらを統合的に機能させ、システム全体として最適化を図った点にある。消費電力の増加を最小限に抑えながら、実効性能で30%以上の向上を達成したのは、ハードウェアとソフトウェアの緻密な連携の賜物といえる。
Xenospectrum’s Take
半導体業界の常識を覆すような効率改善だ。当初300W超の消費電力を予想していた専門家たちの予想を完全に裏切る結果となった。これはSonyのエンジニアリングの勝利と言えるが、同時に半導体製造プロセスの微細化がもたらす恩恵の証明でもある。
ただし、シリコン品質のばらつきという課題も浮き彫りになった。PS5 Slimで確認された予想以上の消費電力は、量産品質の安定性という別の課題を示唆している。次世代機ではこの品質のばらつきにも注目していく必要があるだろう。皮肉なことに、高効率化によって個体差が一層目立つようになってきているのかもしれない。
Sources
- Digital Foundry(YouTube): PS5 Pro Power Consumption Tested vs PS5 Slim vs Launch PS5
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