世界有数のAI企業OpenAIの完全営利化に対し、共同創設者のElon Musk氏が米連邦裁判所に仮処分を申請した。Musk氏は自身のAIスタートアップxAIと元OpenAI取締役のShivon Zilis氏とともに、OpenAIによる投資家への競合他社投資制限も違法であると主張している。
営利化阻止と投資制限への異議申し立て
2015年に非営利組織として設立されたOpenAIは、2019年に収益上限付きの営利モデルに移行。現在は完全な営利企業への転換を進めているが、この動きに対してMusk氏は強く反発している。提出された仮処分申請では、OpenAIが投資家に対して競合他社への投資を制限する条項を設けていると指摘。これによりxAIなどの競合企業が必要な投資資金を調達できなくなる「グループボイコット」が形成されていると主張している。実際、Musk氏側は2023年10月のOpenAIへの出資ラウンドに参加した主要投資家の少なくとも1社が、その後xAIへの投資を見送ったと証言している。
Microsoftとの関係性も争点に
訴状ではMicrosoftとOpenAIの密接な関係も問題視されている。両社の取締役会の人的つながりを通じて競争上の機密情報が不適切に共有されているとの疑念を示し、「MicrosoftのOpenAIに対する影響力を制限すべき」と主張。特にLinkedIn共同創設者のReid Hoffman氏が2023年3月までMicrosoftとOpenAI双方の取締役を務めていた点がクレイトン法に違反すると指摘している。Microsoftは既にOpenAIへ約140億ドルを投資しているものの、2023年10月の決算発表では15億ドルの損失計上を見込んでいる。
Xenospectrum’s Take
この訴訟の本質は、AIの民主的発展と独占の危険性という二項対立にある。非営利から営利への転換は確かにOpenAIの理念との整合性に疑問を投げかけるが、巨額の開発費用を要する最先端AI開発において純粋な非営利モデルの維持は現実的とは言えない。むしろ問題なのは、OpenAIとMicrosoftによる事実上の寡占形成の可能性だろう。皮肉なことに、Musk氏自身もxAIを通じてこの寡占市場に参入しようとしているわけだが。FTCによる業界調査の結果次第では、AI開発の競争環境は大きく変わる可能性がある。
Source
コメント