Elon Musk氏が率いるAI企業xAIが60億ドルの新規資金調達を完了し、累計調達額が120億ドルに達した。同社は、現在10万基規模のNVIDIA GPU(Graphics Processing Unit)を100万基以上に拡張する大規模な設備投資計画を推進している。
大規模資金調達の詳細
今回の資金調達では、97の投資家が参加し、最低出資額は77,593ドルとなった。投資家の具体的な顔ぶれは明らかにされていないものの、Wall Street Journalの報道によると、Valor Equity Partners、Sequoia Capital、Andreessen Horowitz、そしてカタールの政府系ファンドであるQatar Investment Authorityなどが参加したとされる。
今回の調達により、xAIの累計調達額は120億ドルに達した。企業価値については、わずか6ヶ月で2倍となる500億ドルを目指していたと報じられている。Financial Timesによると、今回のラウンドには前回の出資者のみが参加を許可され、特にTwitter(現X)の買収に協力した投資家らには、xAIの株式の最大25%までのアクセス権が付与された。
急ピッチで進む設備拡張計画
xAIの設備拡張計画の中核となるColossusスーパーコンピューターは、その驚異的な建設スピードで業界の注目を集めている。通常のデータセンター建設には約3年を要するとされる規模の施設を、わずか122日という短期間で完成させた実績は、NVIDIAのJensen Huang CEOからも高い評価を受けている。現在の施設は10万基のNVIDIA GPUを擁しているが、これを10倍以上に拡張し、100万基規模のGPU群による演算処理能力の実現を目指している。
具体的な設備構成については、現行のNVIDIA H100 GPUに加えて、より高性能な次世代モデルH200の導入も計画されている。9月に発表された第一段階の拡張計画では、追加で10万基のGPUを導入する予定であり、そのうち半数をH200が占めることが明らかにされている。H100は1基あたり約25,000ドルという価格設定で、より高性能なH200はさらに高額となることが予想される。
投資規模の観点からみると、仮に80万基のGPUを25,000ドルで計算した場合でも、200億ドル規模の投資が必要となる。大量購入による割引を考慮したとしても、現在までの累積調達額120億ドルを大きく上回る資金が必要となる計算だ。この規模感は、テクノロジー業界における近年最大級の設備投資の一つといえるだろう。
施設の運用面については、現在はポータブルディーゼル発電機による電力供給も併用されているが、今後の大規模拡張に向けて、電力インフラの整備も並行して進められている。特筆すべきは、TeslaのMegapack技術を活用した電力供給の安定化戦略である。この技術導入により、大規模な演算処理による急激な電力需要の変動にも対応可能な基盤を整備する計画となっている。
xAIはこの強化された計算基盤を活用し、次世代のGrokモデルの開発を加速させる方針を示している。また、SpaceceXのStarlinkインターネットサービスのカスタマーサポート機能への活用や、Teslaの自動運転技術の改善にも、この拡張されたデータセンターの計算能力が活用される見通しである。これはxAIが掲げる、Muskの各企業のデータを活用したAIモデルの開発という構想の具現化といえる。
xAIは現在、X(旧Twitter)のプレミアムユーザー向けにAIチャットボット「Grok」を提供している。同社の年間収益は約1億ドルと推定され、Anthropicの10億ドル、OpenAIの40億ドル(2024年目標)と比較するとまだ開発途上の段階にある。
しかし、同社はTeslaやSpaceXなど、Musk関連企業とのシナジーを活かした独自の成長戦略を描いている。すでにSpaceXのStarlinkカスタマーサポートにGrokを導入しており、Teslaとの協業も検討中だ。
Source
- Financial Times: Elon Musk plans to expand Colossus AI supercomputer tenfold
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