米Biden政権が任期終了直前に発表した新たなAI関連の輸出規制に対し、半導体業界から強い反発の声が上がっている。NVIDIAは13日、この規制を「誤った方向性」と厳しく批判。米半導体工業会(SIA)も「米国の競争力を損なう」と懸念を表明した。
規制の概要と産業界の反応
Biden政権は13日、「AI Diffusion Rule(AI拡散規制)」と呼ばれる新たな規制フレームワークを発表。この規制は、先進的な集積回路の輸出に対してグローバルな制限とライセンス要件を課すもので、特にAIチップの輸出管理を強化する内容となっている。
規制では、米国と18の同盟国を除く全ての国に対してAIチップの輸入に上限を設定。企業は3つのカテゴリー(Universal Verified End Users、National Verified End Users、非VEUs)に分類され、それぞれ異なる制限が適用される。特に非VEU企業に対しては、2年間で最大50,000個の「先進GPU」相当の計算能力という厳しい制限が課される。
NVIDIAのNed Finkle政府関係担当副社長は声明で、「Biden政権は200ページを超える規制の迷宮を秘密裏に起草し、適切な立法審査なしに米国のリーダーシップを損なおうとしている」と批判。「この包括的な行き過ぎた規制は、米国の主要な半導体、コンピュータ、システム、さらにはソフトウェアの設計とグローバルな販売に対して官僚的な統制を課すものだ」と指摘した。
政権交代を見据えた産業界の動き
注目すべきは、NVIDIAが声明の中でTrump前政権の政策を高く評価している点だ。「第一期Trump政権は、国家安全保障を損なうことなく、米国産業が実力で競争し勝利できる環境を育成した」と述べ、現政権との対比を鮮明にしている。
SIAのJohn Neuffer会長兼CEOも、「政権移行直前のこのタイミングで、産業界からの有意義なインプットもないまま、このような重大な影響を持つ政策転換が急いで実施されることに深い失望を感じる」と述べ、規制の導入プロセスにも疑問を投げかけている。
規制の影響と今後
新規制は、データセンター事業者にも影響を及ぼす。MicrosoftやGoogleなどの企業は、特別な政府認定を申請することで、より少ない制限でAIチップを取引できる可能性があるが、セキュリティ基準の遵守が求められる。
特筆すべきは、この規制が単なる「ブラックリスト」ではなく、世界中のすべての国に適用される「ホワイトリスト」方式を採用している点だ。米国と18の主要同盟国のみが例外とされ、その他の国々は程度の差こそあれ、何らかの制限を受けることになる。
規制は公示から120日後に発効予定だが、NVIDIAは「すでに米国の利益を損なっている」と指摘。「米国は革新、競争、そして世界との技術共有を通じて勝利を収めてきた」として、政府の過度な介入による規制には否定的な姿勢を示している。
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