NVIDIAの最新GPU「RTX 50」シリーズを求める中国人購入者が、日本や台湾の小売店に殺到し混乱を引き起こしている。背景には、中国国内での規制や高価格に加え、最新技術への強い渇望があると見られるが、そのなりふり構わぬ振る舞いに、強い反発も巻き起こっている。
韓国で販売されたRTX 5090が中国市場へ、高額転売の実態
韓国で販売されたNVIDIA GeForce RTX 5090グラフィックボードが、中国のオンラインマーケットプレイスで販売されている事例が確認された。これは韓国のPC技術系ファンである@Harukaze5719氏によって発見され、同氏は驚きと困惑を表明している。韓国国内でも入手困難なRTX 5090が、早くも中国市場に流出している現状は、注目を集めている。
オンラインマーケットプレイスに出品されたのは、Zotac製 GeForce RTX 5090 Solid OCだ。パッケージには韓国語で3年保証などの情報が記載された黄色と黒のステッカーが貼られている。出品者はこのRTX 5090をどのように入手したのかは不明である。中国国内ではRTX 5090Dが最上位モデルとして販売されているが、RTX 5090は未発売だ。考えられるのは、出品者が最近韓国を訪れたか、韓国にいる人物から入手した可能性である。
中国での販売価格は人民元で表示されており、現在の為替レートで約4,175米ドル(約64万円)相当と高額である。しかし、既に売却済みである可能性も報じられている。この事例は、中国国内における最新GPUへの需要の高さと、海外市場からの流入を示唆している。
台湾でのRTX 5090購入活動、中国人バイヤーの声
台湾のコンピュータ街でも、RTX 5090とRTX 5080を求める中国人購入者の動きが活発化している。1月31日、台湾のSETニュースは、台北のコンピューターモール前の長蛇の列をレポートした。報道によると、数日前から並んでいる人もおり、簡易ベッドや椅子を持ち込む姿も見られた。
台湾でのRTX 5090の小売価格は、約72,000台湾ドルから90,000台湾ドル(税込みで約2,200米ドルから)である。しかし、インタビューに応じた中国人バイヤーによると、中国本土の販売者はRTX 5090を200,000台湾ドル(約93万円)もの高値で販売しているとのことである。
SETニュースのインタビューでは、ある中国人来訪者がRTX 5090Dの「カットダウン」バージョンに満足していないと語った。別の来訪者は、中国での転売価格を避け、台湾での小売価格でRTX 5090を入手することを望んでいたと述べた。
しかし、その夜にRTX 5090を購入できる可能性は極めて低かった。SETニュースが共有した地図によると、台北と周辺地域でのRTX 5090カードは20枚のみで、予約注文用に30枚が用意されていた。中部および南西部の都市では供給がさらに少なく、開店時に4枚のみが利用可能で、予約注文用に30枚であった。RTX 5080はより多くの在庫があったが、それでも需要を満たすには不十分であった。
日本・パソコン工房での混乱、謝罪とオンライン販売への切り替え
日本でもRTX 50シリーズを求める購入希望者が殺到し、混乱が発生した。1月30日にパソコン工房秋葉原パーツ館で行われたRTX 5090の店頭抽選販売では、予想をはるかに上回る人々が集まり、近隣の幼稚園にまで被害が及ぶ事態となった。
千代田区長の樋口高顕氏によると、一部の参加者が幼稚園のフェンスを乗り越えようとしたり、看板を壊したりする等の行為に及んだとのことである。幸い、子供たちへの直接的な被害はなかったが、パソコン工房を運営するユニットコムは、区や幼稚園に謝罪し、壊れた看板の弁償を申し出た。
この混乱を受け、パソコン工房は同日中に店頭抽選を中止し、オンライン抽選に切り替えた。また、ソフマップやドスパラなど、他のショップもオンライン販売に転換している。
樋口区長は、「外神田・秋葉原はお住まいの方がおられます。小学校1校と幼稚園2園があり子どもたちがいる地域です。ご配慮いただければ幸いです」と注意を呼びかけている。今回の騒動は、人気商品発売時の安全管理の重要性を改めて浮き彫りにした。
XenoSpectrum’s Take
RTX 50シリーズの発売展開は、世界中で大きな混乱と熱狂を生み出している。特に中国からの購入者の活動は特筆すべきものであり、背後には単なる新製品への興味だけでなく、中国特有の市場環境が影響していると考えられる。
中国市場では、高性能GPUに対する需要が非常に高い一方で、最新技術へのアクセスが制限されている場合がある。また、国内での高値設定や、希望製品の入手困難性も、海外市場に目を向ける要因となっているであろう。今回のRTX 50シリーズ騒動は、中国消費者の最新技術製品に対する強い欲求を明確に示している。
メーカーや小売店は、今回の事態を深刻に受け止め、今後の販売戦略に反映させる必要があるだろう。供給量を適切に調整するとともに、販売方法についても、オンライン販売の強化や、抽選販売のルール明確化など、混乱を未然に防ぐ対策が求められる。また、消費者に対しては、冷静な行動を促すとともに、正規販売店からの購入を推奨することが重要である。
RTX 50シリーズを巡る騒動は、技術市場におけるグローバルな需要と供給のバランスの難しさを示唆している。今後、メーカー各社は、消費者の期待に応えつつ、持続可能な販売体制を構築することが求められるだろう。
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