半導体受注世界最大手のTSMCが最先端1nmプロセス技術を用いた新工場を台湾南部に建設する計画が明らかになった。台湾政府も南部地域を「シリコンバレー」化する構想を推進しており、TSMCの投資は地域経済の活性化と半導体産業のさらなる発展に貢献すると期待されている。
台南市に最先端工場を建設
台湾の経済紙「經濟日報」によると、TSMCは最先端1nmプロセス技術の工場を台南市に建設する計画を進めている。当初、桃園市龍潭での建設を予定していたが計画を撤回。その後、台湾南部の各地で誘致合戦が繰り広げられ、TSMCは民主進歩党(DPP)が主導する県市の協力体制と全体計画を評価したとされる。
特に注目されているのは、高雄市が推進する「半導体Sコリドー」構想だ。これは台南サイエンスパークから南に広がる産業集積地を構築し、複数のサイエンスパークや工業団地を連結するプロジェクト。TSMCの1nm工場が台南市沙崙に建設されることで、この構想はさらに重要性を増し、材料や周辺機器のサプライチェーンからの投資も期待されている。
TSMCは台南市沙崙地区に、合計6つの製造施設(ファブ)を建設する計画だ。初期の3つのファブ(P1〜P3)で1.4nmプロセス、後半の3つで1nmプロセスを生産する予定。ただし、中部台湾サイエンスパークでの用地取得状況によっては、沙崙地区のファブ構成が変更され、最初の3つが1nm、後半の3つが0.7nmプロセスとなる可能性も示唆されている。
台湾政府による支援体制
台湾行政院は南部地域を「シリコンバレー」化する「グレーター南部ニューシリコンバレー推進計画」を承認。この計画は台南、嘉義、高雄、屏東の科学技術工業団地を連携させ、演算能力を拡大することを目指している。
政府は水供給、電力供給、医療、交通、文化施設の改善に向けた総合的な支援を実施。貯水池と地域電力網の接続、再生水利用の拡大、太陽光発電などのグリーンエネルギー利用の促進が含まれる。
最先端プロセス技術の開発加速
TSMCは2030年までに1nmプロセスの量産開始を目指している。台南に建設される専用工場「Fab 25」は12インチウェハーに対応し、6つの生産ラインを備える予定だ。同社は3次元積層チップセットを通じて、1つのチップに1兆個のトランジスタを集積することに意欲を示している。
ただし、歩留まりと供給量の確保が課題となる。1nmプロセス開発には1兆台湾ドル(約4兆6,500億円)を超える費用が見込まれており、技術的な課題と共に、投資規模の管理も重要となる。
今回のTSMCの投資は、台湾の半導体産業における世界的な地位をさらに強化するものとなる。同時に、技術的課題や地政学的リスクなど、克服すべき課題も存在しており、今後の展開が注目される。
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