Appleが今日のような巨大な規模にまで成長できた要因には、もちろんiPhone等のプロダクトイノベーションにあるが、あまり注目されないながらも重要な要素の一つに、サプライチェーン管理が極めて優れていた事がよく挙げられる。これは今までは賞賛されることの多い部分だったが、The Informationの新たな報道によれば、Appleの高収益は、技術だけをAppleに盗み取られ、時には切り捨てられるサプライヤーの犠牲の上に成り立っている可能性が報じられている。
The Informationによると、サプライヤーが新しい技術や新しいプロセスを開発しても、Appleは、これを完全に合法的に取得し、その仕事をより安い会社に委託してしまい、時には元々Appleと技術を開発した会社を倒産に追い込むこともあるという。これは、Appleがサプライヤーと結ぶ典型的な契約が、サプライヤーの製造工程の全段階を完全に管理し、少なくともAppleに共同所有権を与えるものであることから可能なのだという。そのためサプライヤーはAppleに対して何の請求権も発生しない。恐らく契約内容にはキャンセルも認められていたのだろう。
つまり、ある企業は生産技術の開発に投資することができるが、Appleはそのプロセスを他の企業に委ねる権利を完全に有しているのだ。非難されているのは、Appleがこのような道徳にもとることをしているということと、米国企業が中国のサプライヤーに情報を提供するという、その事実の両面からだ。
例えば2014年、GT Advanced TechnologiesはAppleと傷のつきにくいスクリーン素材の開発に取り組んでいたが、その後このサプライヤーは5億ドル近い負債を抱えて倒産した。
同社が破産を宣言した後、AppleはGT Advanced Technologiesが開発した材料の製法を奪い、香港に拠点を置くBiel Crystalを含むサプライヤーに渡したと主張されている。不特定の元従業員によると、Appleはまた、その他の企業にも技術情報を提供し、より良い価格提示を受けるために各企業に競わせたという。
とは言え、Appleとしても需要を満たせないサプライヤーへの対応に苦慮した結果これを行っていると言う見方もあるかも知れない。AppleはVision Proの部品として、Micro OLEDを用いているが、これの唯一のサプライヤーがSonyだった。Sonyが生産能力を増強することを拒否したため、Appleは代替案として、中国のSeeYa Technologiesにその技術的詳細を渡したとされている。これについても、Appleとしては、それは完全に契約上の権利の範囲内であるため、問題はないとしているようだ。
ただし、こうしたAppleとの契約上の慣行に対し、サプライヤー側も賢くなりつつあうようだ。
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