教育プラットフォームのCheggは、AI技術を事業の中心に据える戦略を加速させている。ChatGPTの登場で株価が急落した同社だが、AIを新たな成長エンジンと見据え、学習支援機能の強化を図る。しかし、GoogleのAI検索結果表示がCheggのトラフィックと収益を圧迫しているとして、同社を提訴する事態にも発展している。
訴訟の内容とCheggの厳しい財務状況
Cheggの訴状によると、同社は「Googleの独占的検索エンジンからの紹介に、オリジナルのオンラインコンテンツを制作するための収益の大部分を依存している」と主張している。Nathan Schultz社長兼CEOは「Googleは我々のコンテンツをGoogleの検索機能に含めるよう強制している」とし、「独占力を利用して、Cheggのコンテンツから金銭的利益を得ている」と批判した。
具体的には、GoogleがCheggの1億3500万の質問と回答コレクションをモデルトレーニングデータとして使用し、その後パブリッシャーが提供する情報と競合するコンテンツを生成していると主張。訴状には、CheggのWebサイトから情報を借用しながらも出典を明記していないGoogleのAI検索結果の画像も含まれている。
この訴訟は、2023年8月の連邦判事の判決でGoogleが検索市場で独占状態にあると認定されたことを根拠としている。しかし、Chegg自身も深刻な経営危機に直面している。時価総額は2億ドル未満まで下落し、株価は1ドル台で取引されている。2024年第4四半期の業績では収益が前年同期比24%減の1億4350万ドル、純損失610万ドルを計上した。
この状況を受け、CheggはGoldman Sachsと提携し、買収や非公開化を含む戦略的選択肢を検討中である。購読者数も360万人と前年比21%減少しており、ChatGPTをはじめとする生成AIの台頭が新規顧客獲得に打撃を与えている。
CheggのAI戦略と教育テック業界の変化
興味深いことに、GoogleのAI機能を訴えるChegg自身も、AIを自社ビジネスの中核に据えている。Semaforとの独占インタビューでSchultz CEOは、複雑な教材に関する練習問題を生成し、ユーザーがCheggサイト上で直接LLMを選択できる新機能をリリースすると発表した。具体的には、ChatGPT、Gemini、Llama、DeepSeekなどの異なるAIモデルからの回答を比較表示し、解決策が異なる理由についての洞察を提供する。
「AIへの信頼は非常に低い」ため、学生は既に異なるモデルを比較しているが、「複数のアカウントを設定し、タブを切り替えることは信じられないほどの時間の無駄です」とSchultz氏は述べている。
Cheggはパンデミック時に評価額が100億ドルに急上昇したが、その後の機械学習の発展と大学入学者数の減少により株価が下落。これに対応するため、人間の専門家が書いた回答の検索エンジンから、主にチャットボットとやり取りするシステムへと全面的な刷新を行った。
教育現場もAIツールの普及に合わせて変化しており、教育者は自宅での課題よりも教室内での評価を重視するようになっている。これに対応し、Cheggは単なる回答提供から学習プロセスの支援へと焦点をシフトすることで、不正行為のツールというこれまでの批判を緩和しようとしている。
AIシフトによりCheggの事業運営コストは削減され、2024年の最初の9ヶ月間で営業費用が13%減少、従業員も約40%削減された。しかし、月額19.95ドルという価格帯で若者に人気のChatGPTなどと競合する中、大学生が主なユーザーとして毎年約25%が卒業により利用を終えるという特有の課題も抱えている。
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