Appleシリコンの低消費電力とパフォーマンスの両立が、今日のMacBookの優位性を築いていると言っても過言ではないだろう。逆にWindowsにはそうしたチップの存在がこれまではなく、パワー重視のx86プロセッサが主流だった。それが故にAppleシリコンのような、パワーと省電力性能が高レベルで融合したArmアーキテクチャに基づくQualcommのSnapdragon Xチップの登場がこれほどまでに待ち望まれているわけだが、市場の発展にはライバルが必要であり、そしてどうやらQualcommはWindows Armチップの単独のプレイヤーにはならないようだ。
MediaTekがNVIDIAと提携しAIチップを設計中、製造はTSMCか
Microsoftが推進する「AI PC」は、低迷していたPC需要を喚起する起爆剤になると見られており、既にQualcommのSnapdragon Xの登場は大きな注目を集めている。
MediaTekとNVIDIAもこの波に乗ることを計画しており、共同でAI PC向けプロセッサーの開発を進めていることが、台湾の経済日報によって伝えられている。両社が開発するチップは2024年第3四半期にテープアウトとなるようで、価格は300ドルとかなり強気の設定になりそうだ。
既にMediaTekとNVIDIAは自動車分野での協業の実績がある。AI PC向けに具体的に両社がどのような形で協力するのかは明らかにされていないが、MediaTekの評判の高いスマートフォン向けSoCであるDimensityの技術に加え、NVIDIAがゲームやAIで培った強力なGPU技術を組み合わせた物になるであろう事が予想される。これにより薄型で高性能なノートPCが実現するかも知れない。
この新型プロセッサーの設計は第3四半期に確定し(テープアウト)、第4四半期に検証が行われ、2025年前半に量産開始の予定だという。製造はTSMCの3nmプロセス「N3E」と言うことで、AppleのM4やQualcommのSnapdragon Xシリーズと製造プロセスで肩を並べ、最先端の性能を示すことが期待される。
そして、6月2日に台湾で開催される「COMPUTEX TAIPEI 2024」にて発表される可能性があるようだ。
Arm CEOが複数のベンダーによるWindows PCチップの開発が進行中である事を示唆
ArmのCEOのRene Haas氏が、金融アナリストとの電話会議で、「PC業界、特にWindows on Arm分野が成長するためには、複数のユニット、複数のSKU、複数の価格帯、複数のエクスペリエンスをエンドコンシューマーに提供するためのサプライヤベースの多様化が必要です」と述べている。同氏のこうした発言は、QualcommのSnapdragon X Eliteプロセッサを発表する予定であることに起因している可能性があるが、加えて「私が聞いているところでは、今後12~36ヶ月の間に、この市場に参入するサプライヤーが複数出てくるようです」と発言していることから、今後Armアーキテクチャに基づく新たなプロセッサーを発売する企業が出てくる可能性を示唆しているとみられる。
「そして、今後2~3年の間に、Armのエコシステムが大きな市場シェアを獲得する時が来ると考えています。それは主に、他のエコシステムで見てきた経験レベル、素晴らしいパフォーマンス、優れたバッテリー寿命、ファンを除いた高性能マシンを構築できるという事実のためです。こうしたことが積み重なることで、大きな成長が期待できると思います。ベンダーの基盤が多様化すれば、今後12~36カ月で成長が本格化すると思います」と、Haas氏は述べている。
同氏の発言は曖昧な物ではあるが、先ほどのMediaTekとNVIDIAの提携による新たなAI PC向けチップ開発の報道を暗示している物なのかも知れない。こうした形で今後更にこの分野に参加してくる企業が出てくる可能性は十分にありそうだ。
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