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CATL新型バッテリー3連発:5分充電で520km走行、ナトリウムイオン技術、デュアルバッテリーシステムを発表

Y Kobayashi

2025年4月22日

中国バッテリー大手CATLが上海で開催されたイベントで革新的な3つのバッテリー技術を発表した。5分充電で520kmの走行距離を実現する第2世代Shenxingバッテリー、リチウムに代わる新素材を採用したナトリウムイオンバッテリー「Naxtra」、そして航空機のデュアルエンジンにインスパイアされた新型デュアルバッテリーシステムだ。これらの技術は、EVの性能向上と普及加速の鍵となりそうだ。

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第2世代Shenxing:ガソリン給油並みの超高速充電を実現

CATLが発表した第2世代「Shenxing」バッテリーは、リン酸鉄リチウムイオンLFP)技術をベースとしながら、充電性能を劇的に向上させたものである。最大の注目点は、わずか5分間の充電で520km(323マイル)もの航続距離を追加できる能力だ。これは、ガソリン車の給油時間に匹敵する速さであり、EV充電で大きな懸念であった“充電時間”を一気に解消する可能性のある物だ。

驚異的な充電スピードと低温性能

  • 5分で520km: CATLの発表によれば、このバッテリーは5分間の急速充電で520km走行分のエネルギーを蓄えられる。これは、同社のライバルであるBYDが発表した5分で400kmを上回る性能である。
  • 0%→80%を15分で: さらに、バッテリー残量ゼロの状態から80%まで充電するのに要する時間も、わずか15分とされている。
  • 低温時も高速充電: EVバッテリーの課題とされる低温環境下での性能低下についても、Shenxingは対策を施している。摂氏マイナス10度(華氏14度)の環境下でも、5%から80%までの充電を15分で完了できるという。
  • 高出力充電に対応: この性能を実現するため、Shenxingバッテリー搭載車は1,000kW(1メガワット)近い高出力での充電が可能であり、充電状態(SoC)が50%を超えても500kW以上の出力を維持できるデモンストレーションが行われた。

広範な採用計画

CATLは、この第2世代Shenxingバッテリーについて、2025年末までに中国の自動車ブランドであるZeekr、Nio、Avatrを含む67以上のEVモデルに搭載される計画であると発表しており、既に技術コンセプトではなく、間もなく市場に投入される現実的な製品であることを強調している。

Naxtra:リチウムに代わるナトリウムイオンバッテリーが量産へ

Shenxingと同時に発表されたのが、新しいナトリウムイオンバッテリーブランド「Naxtra」である。ナトリウムイオンバッテリーは、リチウムイオンバッテリーに比べて安価で資源が豊富なナトリウムを使用するため、EVのコストダウンに貢献する技術として長年期待されてきた。

LFPに匹敵する性能

これまでナトリウムイオンバッテリーは、性能面でリチウムイオンバッテリーに劣るとされてきたが、CATLのNaxtraのスペックはその常識を覆すものだ。

  • エネルギー密度: Naxtraバッテリーのエネルギー密度は175Wh/kgに達すると発表された。これは、現在主流のLFPバッテリーの高価格帯製品に匹敵するレベルであり、性能面での妥協なしにコストダウンが期待できることを意味する。
  • 航続距離: EV向けには500km(310マイル)、ハイブリッド車向けには200kmの航続距離を実現するとされている。

安全性と量産計画

ナトリウムイオンバッテリーは、原理的にリチウムイオンバッテリーよりも熱暴走のリスクが低いとされている。CATLは、Naxtraセルの安全性を示すため、セルに穴を開けたり、半分に切断したりしても熱暴走(発火や爆発)が起こらない過酷なストレステストの映像を公開した。

量産計画も具体的だ。まず、2025年6月から大型トラック向けの小型始動用バッテリーとして生産を開始し、特に寒冷地での始動性能向上が期待される。そして、EVやハイブリッド車向けの大型バッテリーは、2025年12月に量産が開始される予定である。

CATLの創業者であるRobin Zeng氏は、将来的にはナトリウムイオンバッテリーがLFPバッテリー市場の最大半分を置き換える可能性があるとの見解を示しており、その普及に大きな期待を寄せている。

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デュアルパワーバッテリー:航空機のデュアルエンジンにインスパイアされた新システム

CATLは、これら二つの新型バッテリーに加え、さらなる安全性と性能向上を目指す「デュアルバッテリーシステム」も発表した。これは、旅客機の双発エンジンのように、2つのバッテリーパックを組み合わせるシステムである。

  • 安全性向上: 主な目的は、特に自動運転車の安全性を高めることにある。片方のバッテリーが故障した場合でも、もう一方がバックアップとして機能し、システムの停止を防ぐ。
  • 長大な航続距離: このシステムにより最大1,500km(932マイル)という驚異的な航続距離も実現可能になるという。
  • 開発状況: このシステムは5年間開発が進められており、量産時期は未定ながら、すでに1社の自動車メーカーが自動運転車の設計に採用しているとのことだ。

これらの発表は、世界最大のEVバッテリーメーカーとしてのCATLの技術力と、EVの性能向上およびコスト削減に向けた強い意志を示すものだ。同社はTesla、BMW、Volkswagen、Nio、Toyotaなど、世界の主要自動車メーカーにバッテリーを供給しており、その新技術はEV市場全体に大きな影響を与える可能性がある。

一方で、CATLは中国国内でのEV価格競争の激化による収益性の低下や、米中間の貿易摩擦、米国防総省による中国軍関連企業リストへの掲載(CATLは否定)といった課題にも直面している。これらの外部要因が、革新的な技術のグローバル展開にどのような影響を与えるか、今後の動向が注目される。

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