Intelは、業界初となる“完全に統合”された光学コンピューティング相互接続(Optical Compute Interconnect: OCI)チップレットを、既存のIntel製CPUにコ・パッケージングした物を披露し、AI開発によりますます高まる新たなデータ転送技術開発において、大きな飛躍を遂げる可能性を秘めた画期的な技術の開発に成功した事を報告している。
Intelの新たなOCIは従来のI/O接続を置き換えることを目的としている
Intelと言えば半導体・CPUのイメージが強いが、シリコンフォトニクスの研究開発も盛んに行っており、そのレベルは業界最先端の物である。シリコンフォトニクスとは、シリコン集積回路と半導体レーザー等の発光素子を組み合わせることで、従来の電子機器よりも高速かつ長距離のデータ転送を実現する、コンピュータプロセッサ間の通信帯域を拡大する次世代の重要な技術と目されている。
この技術自体は新しいものではないが、研究者らはフォトニクスの側面をシリコンベースのCPUと統合する方法を見出すのに苦心してきた。
Intelは、ますます強力になるAIモデルの計算能力要求が既存のデータセンターインフラストラクチャに大きな負荷をかけているため、シリコンフォトニクスの必要性がかつてないほど急務になっていると考えている。AIモデルがより強力になるにつれて、より多くのデータが必要となり、既存のチップ相互接続はそれに対応するのがやっとの状態である。そのため、Intelによれば、AIの成長を支えるためにシリコンフォトニクスが切実に必要とされている。
IntelのIntegrated Photonics Solutions GroupのシニアディレクターでProduct Management and Strategyを担当するThomas Liljeberg氏は、プレスリリースの中で、既存の相互接続が電気的I/O性能の実用的な限界に急速に近づいていると述べた。「我々の画期的な成果により、顧客は次世代のコンピューティングシステムにコパッケージドシリコンフォトニクス相互接続ソリューションをシームレスに統合できるようになります。我々のOCIチップレットは帯域幅を向上させ、消費電力を削減し、到達距離を増大させることで、高性能AIインフラストラクチャに革命をもたらすことが期待されるMLワークロードの加速を可能にします」と、述べている。
Intelによれば、最新のOCIチップレットは、光入出力をパッケージ化し、32Gbpsのデータ転送速度で最大64チャンネルをサポートすることで、より広帯域のデータ転送を実現する。光I/Oインターコネクトの利点には、以下のようなものがある:
- 優れた帯域幅
- 高いエネルギー効率
- 低レイテンシー
- より長い到達距離
Intelは、今日のほとんどのチップ相互接続の基礎となっている既存の電気的I/O技術が高帯域幅密度をサポートできるものの、それは1メートル以下の非常に短い距離でのみ可能であると説明した。プラガブル光トランシーバーモジュールを使用してこの距離を拡大することは可能だが、これらはAIワークロードには持続不可能な過剰なコストとエネルギーレベルをもたらす。
Intelによると、新しいシリコンフォトニクスDWDM光学チップレットは、プラガブルモジュールの15pJ/bitと比較して、わずか5pJ/bitのエネルギーしか使用しないとのことである。
また、この技術は距離の拡張も可能で、現在では最大100メートルの光ファイバーをサポートしている。従来の “電気的I/O”と比較して、Intelは距離をなんと100倍に伸ばした。同社によれば、電気から光への移行は「馬車」から「自動車」への乗り換えのようなものだというから、この進歩の大きさが想像できるだろう。
また、新しいチップレットは、PIC(フォトニック集積回路)とEIC(電子集積回路)をチップレット上に組み合わせ、外部部品の代わりにレーザーを内蔵している。スイッチングがコ・パッケージド・オプティクスに移行しているのと同様に(ただし、そこではおそらく外部光源を使用)、サーバー、特にAIサーバーにおける次のステップは、光学相互接続をチップ上に移行することである。現在のAIサーバーは、一般的に通信に使用する1つ以上の相互接続を持っている。現在、IntelのGaudi 3とNVIDIA NVLinkを除いて、一般的にはPCIeスロットへのPCIe接続とInfinibandまたはEthernet NIC、そしてプラガブル光学モジュールを使用している。パッケージ上に光学機能を内蔵することで、信号をパッケージ外に出し、PCB、別のカード、チップ、光学ケージ、プラガブルモジュールなどを経由する必要がなくなる。結果として、これにより大幅な省電力が実現できるのだ。
Intelは、最終的には光源からすべてをチップレットに完全に統合するという野心的な計画を持っている。また、新しいシリコンフォトニクスの製造プロセスノードを持ち、将来のバージョンを統合するために顧客と協力していると述べている。さらにIntelは、2Tbpsの「Mirror Bay」世代から32Tbpsまで相互接続をスケールアップするロードマップがあるとしている。
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