AppleのフェローであるPhil Schiller氏がOpenAIの取締役会に参加することが明らかになった。既にOpenAIに多額の出資を行っているMicrosoftと、そのライバルとも言えるAppleの両社が各々OpenAIとの関係を深めていることは、OpenAIを巡るテクノロジー大手企業間の複雑な関係性を浮き彫りにするものと言える。
AppleとOpenAIの関係が新たなレベルに
Bloombergの報道によると、AppleのApp Store責任者であり元マーケティング責任者であり、現フェローのPhil Schiller氏が、OpenAIの非営利取締役会にAppleの代表として参加することが決定した。Schiller氏は「オブザーバー」の役割を担うことになり、取締役会の会議に出席することはできるが、投票権や取締役としての行動権限は持たない。Bloombergが指摘しているように、Apple の幹部が提携先の企業の取締役に就任するのは極めて稀な動きだ。
この動きは、AppleがWWDC 2024で発表したOpenAIとの提携に続くものである。AppleのOpenAIとの提携は、「Apple Intelligence」と呼ばれる一連のAI機能の一部として発表された。AppleはiOS 18およびmacOSにChatGPTを統合する計画を明らかにしており、この統合によりSiriがより高度な問い合わせをChatGPTに転送できるようになる。ユーザーの許可があれば、AIによって強化されたSiriがより複雑なタスクを処理できるようになる見込みだ。この提携により、AppleはChatGPTのような需要の高いチャットボットを自社ユーザーに提供できるようになる。同時に、OpenAIにとってもAppleの巨大なユーザーベースにアクセスできるという利点があり、Win-Winの関係と言える。
現時点では、AppleとOpenAIの間で金銭の授受は行われていない。しかし、将来的にはAppleのプラットフォームを通じて行われるChatGPTの有料サブスクリプションから、Appleが一定の割合を得ることが予想されている。
Schiller氏の取締役会参加は、AppleがOpenAIの内部運営についてより深い理解を得る機会となることが予想される。これは、AppleがAI技術を自社製品に統合していく上で重要な洞察をもたらす可能性があるだろう。
一方、MicrosoftはすでにOpenAIの最大の後援者であり、主要なAI技術提供者としての地位を確立している。MicrosoftもAppleと同様に、OpenAIの取締役会に非投票オブザーバーとしての立場を持っている。2019年にMicrosoftがOpenAIに10億ドルを投資して以来、両社の関係は密接になっており、2023年には75億ドルの追加投資も行われている。
MicrosoftはOpenAIの技術を自社製品に積極的に統合しており、BingやOfficeスイートなどにChatGPTの機能を組み込んでいる。一方、AppleはこれまでAI分野での動きが比較的遅かったが、今回のOpenAIとの提携によって巻き返しを図ろうとしている。
ただし、AppleとMicrosoftの両社がOpenAIの取締役会に参加することで、両社との計画の協議がより複雑になる可能性もありそうだ。
AppleのAI機能「Apple Intelligence」は、2024年後半に米国英語でのみ利用可能となる予定だが、将来的には国際展開も計画されている。ただし、各国の法規制や欧州連合の規制当局の懸念に対応する必要があるため、国際展開にはさらに時間がかかる見込みだ。
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