Perplexity.aiが、検索結果に表示される出版社のコンテンツに対して広告収益の一部を還元する新たなプログラムを発表した。この動きは、大手メディアからの盗用疑惑を受けて実施されるもので、AIインターネットの持続可能なモデルを模索する中で、メディアの多様性維持という課題に一石を投じる物となりそうだ。
Perplexityの収益分配プログラムはジャーナリズムの独立を守れるのか
Perplexity.aiは2024年6月、「Perplexity Publishers’ Program」を立ち上げた。このプログラムでは、参加出版社のコンテンツが検索結果でより目立つ形で表示される。さらに重要な点として、出版社は自社のコンテンツが引用された検索結果に広告が表示された際、その収益の一部を受け取ることができる。
CNBCの報道によると、広告収益の二桁パーセンテージが出版社に支払われる予定だ。また、複数の記事が一つの検索結果で引用された場合、それぞれの記事ごとに収益が発生するという仕組みになっている。これにより、出版社は自社コンテンツの価値をより直接的に収益化できる可能性が開かれた。
加えて、参加出版社はPerplexityのオンラインLLM APIとデベロッパーサポートにアクセスできるようになる。これは出版社自身のジャーナリズム製品にAI機能を追加する際に役立つと考えられている。
Perplexityの最高経営責任者であるAravind Srinivas氏は、「全ての関係者のインセンティブを調整するため、スケーラブルで持続可能な方法でこのプログラムを構築した」と述べ、長期的な視点でのパートナーシップを強調している。
現在、TIME、Der Spiegel、Fortune、Entrepreneur、The Texas Tribune、WordPress.comなどの出版社がプログラムに参加している。Perplexityは2024年末までに30の出版社をプログラムに加入させることを目指しており、急速な拡大を計画している。
このプログラムの発表には、重要な背景がある。Perplexityは以前、Forbes、CNBC、Bloombergなどの大手メディアのコンテンツを適切な帰属表示なしに使用していたとして批判を受けていた。特に深刻だったのは、Forbesが指摘した有料記事の無断使用疑惑だ。こうした批判に対応する形で、Perplexityは出版社との関係を再構築しようとしている。
しかし、この新しいアプローチには課題も存在する。Perplexityの戦略はOpenAIのそれと類似しており、両社ともに特定の出版社との契約を結び、自社のAIサービスでそれらの出版社を優遇している。これは、小規模な独立系出版社を不利な立場に置く可能性があり、長期的にはメディアの多様性を脅かす恐れがある。
さらに、このような動きは、AIプラットフォームが出版業界に及ぼす影響力の増大を示している。特定の技術プラットフォームが出版社の生存と広告価格を左右する力を持つことへの警戒感は根強い。Googleの例が示すように、支配的な技術プラットフォームがジャーナリズムに影響を与える可能性は十分にある。
Perplexityの最高事業責任者であるDmitry Shevelenko氏は、プログラム発表から数時間以内に12以上の出版社から問い合わせがあったと報告している。これは、出版業界がAI技術との共存を模索していることを示唆している。
しかし、AIと出版業界の関係はまだ発展途上にある。The New York Timesなどの一部メディアは、OpenAIやMicrosoftなどのAI企業を著作権侵害で訴えており、大規模言語モデルのトレーニングにおける知的財産権の問題は依然として解決されていない。
今後、AIインターネットにおいて、全てのステークホルダーの利益を公平に考慮し、小規模な独立系出版社にも機会を与える新たなアプローチの開発が求められている。Perplexityの取り組みは、その過程における一つの実験と言えるだろう。果たしてAIと出版業界の共生は可能なのか?そしてそれはどのような形を取るのか?この問いへの答えは、今後のデジタルメディア環境の形成に大きな影響を与えることになるだろう。
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