Gamescom 2024において、ASUSが窒化ガリウム(GaN)半導体技術を採用した、画期的な次世代電源ユニット(PSU)を披露した。同社によれば、GaN半導体の採用により、効率性と冷却性能の大幅な向上を実現したとのことで、進む高性能化による消費電力の増大という問題に少しの解決策を与える物となるかも知れない。
GaN技術がもたらす大幅な性能向上
ASUSが発表した新型PSUは、「ROG THOR 1600W Titanium III」と「ROG STRIX 1000W Platinum」となる。これらのユニットは、GaN MOSFETを採用することで、従来のシリコン半導体を使用したPSUと比較して大きな利点を提供する。
GaNといえば、既にモバイルバッテリーや充電器などで見ることの多い単語だろう。窒化ガリウムと呼ばれる素材で、従来のシリコン半導体と比べて、熱伝導率が大きく、放熱性に優れるという利点があり、次世代半導体として注目を集めている素材だ。実際にGaN充電器などによって、シリコンの物に比べて大幅な小型化が実現しているのを見たことがあるかもしれない。
GaN技術の採用により、PSU内部のコンポーネントサイズを大幅に縮小することが可能となった。これにより、PSU内部の空間を効率的に活用し、より優れた冷却性能と静音性を実現している。ASUSによれば、この新技術により従来のPSUと比較して最大30%の効率向上が見込まれるという。
この効率性の向上は、単に電力消費を抑えるだけでなく、PSUの動作温度も低下させる効果がある。結果として、冷却ファンの回転数を抑えることが可能となり、システム全体の静音性が向上する。これは、静かな作業環境や没入感のあるゲーミング体験を求めるユーザーにとって大きな利点となる。
さらに、ASUSはこれらの新型PSUにおいて、電圧安定性の向上にも注力している。新たに導入されたカスタム12V-2×6電源コネクタと電圧センサーにより、GPU電力供給の安定性が大幅に向上した。これは、高負荷時においても安定した性能を発揮する必要のあるハイエンドGPUにとって特に重要な進化である。
また、これらの新型PSUはATX 3.1およびPCIe 5.1規格に対応している。これにより、次世代のハードウェアとの完全な互換性が確保され、将来的なシステムアップグレードにも柔軟に対応できる。
特筆すべきは、ROG THOR IIIシリーズが達成した最大96%という驚異的な電力効率だ。これは80 PLUS Titanium認証を取得しており、現在入手可能な最高水準の効率性を示している。一方、ROG STRIXシリーズも80 PLUS Platinum認証を取得しており、高い効率性を実現している。
さらに、ROG THORシリーズには、ユーザーが自由に配置できる磁気式OLEDディスプレイが搭載されている。これにより、電力消費や効率性などの重要な情報をリアルタイムで確認することが可能となり、システムのモニタリングが容易になる。
GaN技術はこれまで主にスマートフォンやノートPCの小型充電器で使用されてきたが、ASUSがデスクトップPC向けPSUに本格採用したことは、業界全体に大きな影響を与えるきっかけとなりそうだ。特に、次世代のハイエンドGPUやCPUの電力需要が増加傾向にある中、この技術の重要性はますます高まると予想される。例えば、噂されている次世代のRTX 5090が500ワットの電力を必要とするとされており、高性能CPUと組み合わせると、システム全体で1000ワット以上の電力が必要となる可能性がある。
ASUSの先駆的な取り組みにより、他の主要メーカーもGaN技術を採用したPSUの開発に着手することが予想される。これは、PC業界全体の電力効率向上につながり、より環境に優しく、高性能なコンピューティング環境の実現に貢献することが期待される。
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