オランダ政府は2024年9月6日金曜日、半導体製造装置大手ASMLの先端DUV(深紫外線)露光装置に対する輸出規制を拡大すると発表した。この決定を受け、中国政府は強い不満を表明し、オランダに警告を発した。
中国政府の反応とオランダへの警告
規制の対象となるのは、ASMLのTwinscan NXT:1970iおよび1980iモデルである。これらの装置は、7nm以下の先端半導体製造プロセスに使用される可能性がある。具体的には、38nmの解像度を持つArF(アルゴンフッ素)レーザーを使用しており、多重露光技術を用いることで5nmや3nmノードの製造も理論上は可能とされている。オランダ政府は、今後これらの製品の輸出に際して許可を必要とする方針を示した。
中国商務省は9月8日日曜日、声明を発表し、オランダ政府の決定に対する不満を表明した。声明では、「近年、アメリカは世界的な覇権を維持するために、特定の国々に半導体および関連設備の輸出管理措置を強化するよう圧力をかけ続けている」と指摘し、「中国はこれに断固として反対する」と述べた。
中国政府は、オランダ側に対して輸出管理を乱用しないよう求め、半導体分野における中蘭協力を損なう措置を避けるよう警告した。また、「中国企業とオランダ企業の共通の利益」を守ることの重要性を強調し、このような制限が双方の利益を害する可能性があると、中国側は主張している。
一方、オランダのReinette Klever貿易相は、この決定が「我々の安全のため」になされたものだと説明し、国家安全保障上の懸念を理由に挙げた。これは、中国に対する半導体輸出のグローバルな管理を強化しようとする米国の方針と軌を一にするものとみられている。
今回のオランダ政府による輸出規制拡大は、米国政府が推進する対中技術規制の一環として捉えられている。米国は同盟国に対し、中国の先端チップ製造能力を制限するため、輸出規制を強化するよう働きかけてきた。この動きは、半導体産業における米国の技術的優位性を維持しようとする戦略の一部とみられている。
ASMLは、これらの規制強化によって事業に大きな影響はないとの見方を示している。同社は、既存の米国の規制により、これらの装置の対中輸出には既にライセンスが必要だったと説明している。ASMLの広報担当者は、「ライセンスの取り扱いに大きな変更はないと予想しています」と述べている。
しかし、中国市場はASMLの収益の約49%を占めており、今後のライセンス承認状況次第では、同社の業績に影響を与える可能性がある。特に、中国政府が警告しているように、オランダと中国の半導体企業間の協力関係が損なわれる事態となれば、ASMLにとって重要な市場を失うリスクも存在する。
専門家らは、これらの規制が中国の半導体産業の発展を遅らせる可能性があると指摘している。特に、7nm以下の先端プロセス技術の開発が影響を受ける可能性が高い。中国の半導体メーカーSMICが、ASMLの装置を使用して7nm、5nm、さらには3nmノードのチップを生産できる可能性があったことを考えると、この規制の影響は無視できない。
ただし、中国企業が多重露光技術など、代替手段を模索する動きも予想される。これらの技術は効率が低く、歩留まりも悪いため経済的には課題があるものの、中国が独自の半導体技術開発を加速させる契機となる可能性もある。
今後、米国、オランダ、日本など主要な半導体製造装置供給国と中国との間の緊張が高まる可能性がある。半導体産業のグローバルサプライチェーンにおける各国の立ち位置や、技術覇権を巡る国際競争の行方が注目される。
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