AI検索エンジンのPerplexity AIが、独自開発のWebブラウザ「Comet」を近日リリースする計画を発表した。同社はこれを「エージェンティック検索のためのブラウザ」と位置づけ、検索体験の革新に続くブラウザ市場への本格参入を示唆している。
明かされた情報と謎のベール
Perplexityは、同社の公式Xアカウントを通じて「Comet」の存在を予告した。投稿にはアニメーションが添えられていたものの、具体的な機能や市場におけるポジショニングについての詳細は一切明かされていない。同社の広報担当者はTechCrunchに対し「Perplexityが検索を再発明したように、私たちはブラウザも再発明しています」と述べるにとどまった。
現時点ではベータ版への登録ページが公開されているのみで、登録者に送られるメールには「毎週新規ユーザーをベータに追加する」と記載されている。さらに、ソーシャルメディアでCometについて投稿し、Perplexityのアカウントをタグ付けすることで、早期アクセスの可能性が高まるという。
急成長するAI企業の野心的な展開
2022年に機械学習の専門家らによって設立されたPerplexity AIは、大規模言語モデル(LLM)を活用した検索エンジンを主力製品としている。ユーザーは自然言語でクエリを入力することで、Webやさまざまなデータベースから情報を収集し、要約・提示してくれるサービスを提供しており、現在週間1億クエリ以上を処理しているという。
Perplexityの製品ポートフォリオは急速に拡大している。今月だけでも、OpenAI、Google、xAIなどの競合製品に対抗する「Deep Research」ツールをリリース。1月にはAndroid向けAIアシスタントやAI検索用APIも発表している。
資金面でも潤沢であり、Perplexityはこれまでにベンチャーキャピタルから5億ドル以上を調達し、企業価値は90億ドルに達しているとされる。
厳しい競争環境と法的課題
Cometの発表により、Perplexityは極めて競争の激しいブラウザ市場に参入することになる。現在、GoogleのChromeが世界のWebブラウザ利用の大半を占めており、AI機能を強化したブラウザもすでに存在している。例えば、老舗のOperaやBrave等のブラウザもAI機能をブラウザに統合し始めており、Arcで最近頭角を現してきているThe Browser Companyも「Dia」と呼ばれるAIファーストのブラウザを予告している。
このような状況下で、PerplexityがCometによって市場に参入することは、大きな挑戦と言えるだろう。しかし、PerplexityはAI検索エンジンとしての実績と技術力を持ち、すでに多くのユーザーを獲得している。CometがPerplexityの検索エンジンと連携し、独自の強みを発揮できれば、ブラウザ市場においても一定の存在感を示すことができるかもしれない。
一方で、Perplexityは、大手メディア企業から著作権侵害訴訟を起こされているという課題も抱えている。Dow JonesやThe New York Postは、Perplexityが記事コンテンツを無断で利用していると主張していおり、PerplexityはCometの展開においても、コンテンツの取り扱いについては慎重な対応が求められるだろう。
「エージェンティック検索」の意味するもの
Perplexityが「エージェンティック検索のためのブラウザ」と表現する「Comet」の具体的な機能は明らかにされていないが、AI企業が最近「AIエージェント」、つまりユーザーに代わって自律的に行動できるAIの推進を始めていることは広く知られていることだ。
これが示唆するのは、Cometがシンプルな検索機能を超え、ユーザーの意図を理解し、タスクを自動的に実行するような機能を備える可能性だ。例えば、自然言語コマンドを検索バーに入力するだけで、文書検索やカレンダーイベントの作成といった複雑なタスクを実行できる可能性がありそうだ。
Sources
- Perplexity (X)
- via TechCrunch: Perplexity teases a web browser called Comet
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