AMDのRadeon RX 9070に搭載される次世代GPU「Navi 48」が、高度なAV1エンコード機能を搭載することが明らかになった。GPUOpenのライブラリに追加された情報から、B-フレーム対応を含む本格的なハードウェアエンコード機能の実装が確認された。
高性能なAV1エンコード機能の詳細
Navi 48は、RDNA 4アーキテクチャを採用する次世代GPUの中核を担うチップとして位置づけられている。ハイエンドクラスのGPUに求められる高度な機能の一つとして、最新のAV1コーデックに対するハードウェアエンコード機能を実装することが、GPUOpenのライブラリコミットから明らかになった。
特に注目すべきは、AV1コーデックにおけるBフレーム(Bidirectional predicted frame)のハードウェアエンコード対応だ。Bフレームは、前後のフレーム(Iフレーム)から動きベクトルなどのデータを参照することで、画像情報を効率的に圧縮する先進的な技術だ。このプロセスは高い計算負荷を必要とするものの、ストリーミングにおける帯域幅の大幅な削減を実現する。実際の運用では、ほぼ全てのフレームから画像情報を省略することが可能となり、データ転送の効率化に大きく貢献する。
この実装により、Navi 48は従来のH.264やHEVCコーデックと比較して、より高い圧縮効率と画質を両立することが可能となる。特にストリーミングサービスでの需要が高まっているAV1コーデックのハードウェアエンコード対応は、プロフェッショナルなコンテンツクリエイターやストリーマーにとって重要な機能となる。さらに、AMDはRDNA 3.5世代と比較してより進化したビデオエンコード/デコードハードウェアを搭載することで、次世代の動画配信に向けた基盤を強化している。
なお、オンライン動画ストリーミングサービスでの採用が進むAV1コーデックは、ロイヤリティフリーという特徴を持つ。この点は、コンテンツ制作者や配信プラットフォームにとって長期的なコスト削減につながる重要な利点となっている。現時点では、次世代アーキテクチャであるRDNA 4やNVIDIAの「Blackwell」がVVC(Versatile Video Coding)のアクセラレーションをサポートするかどうかは明らかになっていないが、AMDのAV1への注力は市場動向を見据えた戦略的な判断と言えるだろう。
市場展開と製品ラインナップ
AMD は RDNA 4 世代の製品展開において、Navi 48とNavi 44という2つのGPUダイを基軸とした戦略を展開する。このうちNavi 48は、Radeon RX 9070 XTおよびRX 9070として市場投入される見込みだ。特筆すべきは、これらのモデルが現行のNVIDIA RTX 4070 TiやRTX 4080クラスの性能を実現するとされる点だ。従来のAMDのラインナップと比較すると、より上位の性能帯を狙った意欲的な製品配置となっている。
注目すべき点として、今回のRDNA 4世代では最上位となるエンスージアスト向けのチップが用意されていない。その代わりに、Navi 48がパフォーマンスセグメントの主力として位置づけられ、ストリーミングやコンテンツ制作といったクリエイティブワークにも対応可能な機能セットを備えている。
一方で、メインストリームからミッドレンジセグメントを担当するNavi 44では、コスト削減の一環としてハードウェアエンコーダーが完全に省略される方針が明らかになっている。これはAMDがRDNA 2世代でRX 6500 XTやRX 6400などの廉価モデルで採用した戦略を踏襲するものだが、Navi 44を搭載するモデルは最大で349ドルの価格帯を想定しているとされ、この価格帯での機能制限は市場から批判を受ける可能性がある。
なお、これらの新製品は2024年のCESでの発表が予定されており、同時にFSR 4や、Ryzen 9 9950X3DおよびRyzen 9 9900X3Dを含むRyzen 9000X3Dシリーズも発表される見込みだ。AMDはGPUとCPU双方での製品刷新により、ゲーミングからクリエイティブワークまでをカバーする包括的な製品戦略を展開しようとしている。このアプローチは、特にPCプラットフォーム全体でのAMDエコシステムの強化を図る動きとして注目される。
Sources
- GitHub: GPUOpen-LibrariesAndSDKs/AMF
- via HXL
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