Googleは2024年10月16日(現地時間10月15日)、最新のモバイルオペレーティングシステムであるAndroid 15を正式にリリースした。この新バージョンは、セキュリティの強化と大画面デバイスにおける生産性の向上に重点を置いており、ユーザーエクスペリエンスを大幅に改善することを目指している。
Android 15の概要と主要な新機能
Android 15は、まずPixelデバイスを対象に展開が開始された。対象機種には、Pixel 6シリーズからPixel 9シリーズまでのスマートフォン、Pixel Tablet、Pixel Foldが含まれる。他のAndroidデバイスへの展開は、各メーカーのスケジュールに従って順次行われる予定だ。
今回のアップデートでは、AIを活用した新しい盗難防止機能や、プライバシーを重視したアプリの管理機能、フォルダブルデバイスやタブレットでの作業効率を向上させる機能など、多岐にわたる改善が施されている。
特筆すべきは、このリリースがAndroidの年次アップデートの枠を超えた取り組みの一環であるという点だ。Googleは「Androidデバイスは常に新機能やアップデートによって改善され続けており、それは年に一度だけではない」と強調している。実際、今年に入ってからも「かこって検索」やGeminiとの新たな対話方法など、AIを活用した機能がAndroidデバイスに追加されてきた。
Android 15は、これらの継続的な改善の集大成として位置付けられており、ユーザーの日常生活をより安全かつ効率的にするための多くの新機能を搭載している。まるで、Googleが「年に一度のお祭り」よりも「日々の進化」に注力しているかのようだ。
セキュリティ機能の強化
Android 15における最も注目すべき改善点の一つは、セキュリティ機能の大幅な強化だ。Googleは、ユーザーの個人情報や機密データを保護するため、AIを活用した新しい盗難防止機能を導入している。
盗難保護:AIによる盗難防止
新たに導入された「盗難検出ロック」は、AIを活用してデバイスの盗難を防止する機能だ。この機能は、スマートフォンが突然走り出したり、自転車や車で移動し始めたりした場合に、自動的にデバイスをロックする。これにより、スリや置き引きなどの盗難被害を未然に防ぐことが期待される。
さらに、「リモートロック」機能を使用すれば、別のデバイスから電話番号と簡単なセキュリティチェックを使用して、盗まれたデバイスを迅速にロックすることができる。これらの機能は、Android 10以降のほとんどのデバイスで利用可能だ。
パスワード保護の強化
Android 15では、盗難犯がパスワードを推測してセンシティブな情報にアクセスすることを防ぐための追加の保護機能も導入されている。例えば、SIMの取り外しや「デバイスを探す」機能の無効化など、盗難犯が狙うような設定変更に対して認証要件が追加された。
さらに、アプリや設定への複数回の失敗したアクセス試行を検知すると、デバイスが自動的にロックダウンする機能も追加された。これらのアップデートにより、盗まれたデバイスのリセットや転売がより困難になり、結果として盗難そのものを抑止する効果が期待される。
プライベート スペース:センシティブなアプリを隠す
Android 15の新機能「プライベート スペース」は、スマートフォン上にデジタルセーフのように機能する。ユーザーは、ソーシャルメディア、デートアプリ、銀行アプリなど、センシティブなアプリを整理するための別のプライベート空間を作成できる。
プライベート スペースがロックされている場合、アプリは他人の目から実質的に見えなくなり、アプリリスト、最近使用したアプリの表示、通知、設定から隠される。プライベート スペースにアクセスするには追加の認証層が必要で、アプリをより安全に保護し、他人の目から遠ざけることができる。
さらに、プライバシーを重視するユーザーのために、プライベート スペースの存在自体を電話から隠すオプションも用意されている。
これらのセキュリティ機能の強化により、Android 15はユーザーのプライバシーとデータ保護に対するGoogleの強いコミットメントを示している。
大画面デバイスの生産性向上
Android 15は、フォルダブルデバイスやタブレットなどの大画面デバイスでの作業効率を大幅に向上させる新機能を導入している。これらの機能は、マルチタスキングを容易にし、ユーザーが複数のアプリを同時に効率的に使用できるようサポートする。
タスクバーのカスタマイズ
フォルダブルデバイスやタブレットでは、タスクバーを画面上に固定したり、固定を解除したりすることが可能になった。これにより、ユーザーはレイアウトをカスタマイズし、Google PhotosやGmailなどのお気に入りアプリをより素早くアクセスできるようになる。生産性の向上を図りつつ、ユーザー自身の好みに合わせた使い方ができるようになったわけだ。
アプリペアリング機能
新たに導入された「アプリペアリング」機能は、マルチタスキングをさらに容易にする。例えば、Google DriveとGmailを同時に開いて、ファイルを簡単にドラッグアンドドロップすることができる。
さらに、最も頻繁に使用するアプリの組み合わせを保存することができ、それらはフォルダブルデバイスやタブレットで単一のアプリアイコンとして表示される。タップ一つで、保存したアプリの組み合わせを分割画面で素早く呼び出すことができ、より迅速なアクセスが可能になる。
永続的なタスクバー
フォルダブルデバイスとタブレットでは、アプリが開いている状態でも永続的なタスクバーを表示できるようになった。これにより、ユーザーは常に必要なアプリにアクセスしやすくなり、作業の流れを中断することなく効率的に作業を進めることができる。
タスクバーの左側にある「アクションキー」を長押しすることで、Circle to Search機能にアクセスすることも可能だ。また、タスクバーを常に表示するかどうかの設定も簡単に行える。 <h3>折りたたみ時の継続使用</h3>
フォルダブルデバイスでは、「折りたたみ時に継続使用」設定が追加された。これにより、デバイスを折りたたんだ際に前面ディスプレイを常にオンにするか、完全にオフにするか、あるいは「上にスワイプして継続」するかを選択できる。
これらの機能強化により、Android 15は大画面デバイスでのユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させている。
カメラ、メッセージング、パスキーの改善
Android 15では、日常的に使用する機能についても多くの改善が施されている。特に、カメラ、メッセージング、そしてログイン方法に関する機能が大幕強化された。
カメラ機能の向上
低光量での撮影性能が大幅に向上している。「低光量ブースト」機能と「アプリ内カメラコントロール」が低光量条件下でより効果的に機能するようになった。これにより、暗い場所でも鮮明な写真を撮影することが可能になる。
さらに、サードパーティのアプリがカメラをより詳細にコントロールできるようになった。例えば、フラッシュのより精密な制御が可能になり、様々な撮影シーンに対応できるようになっている。
衛星通信を利用したメッセージング
キャリアのメッセージングアプリが衛星接続を使用してメッセージを送受信できるようになった。これにより、モバイル通信やWi-Fi接続がない場所でも、メッセージのやり取りが可能になる。この機能は、山岳地帯や僻地など、通常の通信インフラが整っていない場所での使用が想定される。
パスキーによる簡単ログイン
認証にパスキーを使用するアプリでは、タップ一つでログインできるようになった。これにより、複雑なパスワードを入力する手間が省け、より迅速かつ安全なログインが可能になる。
パスワード、パスキー、自動入力の設定画面では、別の管理ツールを選択するための「変更」ボタンが目立つように配置されており、ユーザーがより簡単に認証方法を管理できるようになっている。
これらの改善により、Android 15はユーザーの日常的なタスクをより簡単かつ効率的にこなせるようサポートしている。まるで、Googleが「日常の小さな煩わしさをなくす」ことに執着しているかのようだ。
その他の注目すべき変更点
Android 15には、上記の主要な機能改善の他にも、ユーザーエクスペリエンスを向上させる多くの細かな変更が加えられている。これらの変更点は、一見些細に見えるかもしれないが、日常的な使用感を大きく向上させる可能性がある。
UIの改善
Android 15では、ユーザーインターフェースに関する多くの細かな改善が行われている。
- エッジツーエッジデザイン: Android 15をターゲットとするアプリは、デフォルトでエッジツーエッジになる。ステータスバーとジェスチャーナビゲーションバーが透明になり、アプリの表示領域が拡大される。
- スクリーンショットプレビューの改善: スクリーンショットやコピーしたテキストのプレビュー(画面の隅に表示されるもの)が再設計された。共有、マークアップ、さらにキャプチャなどのボタンが丸みを帯びたピル型のコンテナに収められ、スクリーンショットのサムネイルがその上に配置されるようになった。
- ウィジェットピッカーの改善: ウィジェットピッカーに「エッセンシャル」、「ニュース & 雑誌」、「あなたへのオススメ」などのハイライトカルーセルが追加された。また、ウィジェットをホーム画面に追加する際のタップ操作が簡略化された。
- 壁紙選択の改善: 壁紙選択画面が改善され、ロック画面とホーム画面の区別がカードベースのUIでより明確になった。特に、Pixel Foldなどの折りたたみ式デバイスでは、内側画面のプレビューが表示されるようになった。
システム機能の改善
- 適応型タイムアウト: 新しい「適応型タイムアウト」機能が追加された。これは、デバイスが使用されていない場合に自動的に画面をオフにする機能だ。
- Bluetooth自動オン: Bluetoothをオフにしたときに、デフォルトで「明日自動的にオンにする」設定が追加された。この動作は設定で変更可能だ。
- アプリのアーカイブ: 新しい「アーカイブ」オプションが追加された。アーカイブされたアプリのアイコンはグレーアウトし、クラウド/ダウンロードアイコンが重ねて表示される。
- セキュリティとプライバシー設定の再編成: 「セキュリティとプライバシー」設定ページが再編成され、プライバシーコントロール、プライバシーダッシュボード、プライベート スペースへの直接リンクが新しい「プライバシー」見出しの下に配置された。
- 認証パネルの改善: 認証パネルが再設計され、より高くなり、アプリアイコンが表示されるようになった。
これらの細かな改善点は、個々に見れば些細なものに思えるかもしれない。しかし、全体として見ると、Android 15がユーザーエクスペリエンスの細部にまで気を配っていることがわかる。
加えて、Pixelデバイスユーザー向けには10月のPixel Drop(旧・Pixel Feature Drop)が展開されている。新たに天体写真撮影や水中撮影モードなど、新機能が多く展開されている。対象ユーザーはアップデートを確認してみよう。
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