Androidとの戦いにおいて、iPhoneはSoC性能で常に勝利を収めてきた。だが、一時はその圧倒的性能差は2~3世代分であるとも言われたが、ここ最近ではArm陣営の進歩(と、Appleの停滞)によりその差は縮まってきている。まだ最新のSnapdragon 8 Gen 3でさえもAppleのA17 Proチップには及ばないが、この状況が来年にはついに逆転するかも知れない。
Cortex-X4からの大幅なIPC性能向上
Androidスマートフォンの内部で使用されているプロセッサーは、すべてArmのCortex CPUコアを使用している。今年のフラッグシップスマートフォンチップはCortex-X4 CPUコアを使用しているが、これはiPhone 15 Proで使用されているArmベースのカスタムCPUコアよりも25~30%ほど遅い。この性能差の要因は、Apple独自のカスタムCPUアーキテクチャと、Appleが常に採用しているTSMCの最先端の半導体チップ製造プロセスの組み合わせにある。
アナリスト企業のMoor Insights and Strategyによると、Armの次期Cortex-X CPUコアは、スマートフォンで最もパワフルなCPUになる可能性があるという。この次期CPUのコードネームは「Blackhawk」と言われており、これまでの命名規則にならえば、おそらく「Cortex-X5」と呼ばれることになるだろう。
Moor Insights and Strategyによると、この新CPUは「過去5年間で最大の前年比IPC(1サイクルあたりの命令数)性能向上」を実現する可能性があるとの事だ。この大幅な性能向上は、2020年に発表されたオリジナルのCortex-X1 CPU以来の大変革である。このCPUはまた、“素晴らしい”大規模言語モデル(LLM)性能を提供するとも言われており、スマートフォンによるデバイス上での生成AIタスクの実行において、顕著な性能向上を示す可能性がある。
Cortex-X5により、Android陣営はCPU性能でついにAppleを上回るを打ち負かす可能性がある。Moor Insights and Strategyによると、Armの計画は、“Arm設計のプロセッサとArmのカスタム実装の間の性能差をなくすこと”だという。ここでいうArmのカスタム実装とは、iPhoneやiPadに使われているArm設計のAppleのカスタム実装を指している。これ以上のArmのBlackhawk CPUコアの電力効率については何も明らかにされていない。
ちなみに、QualcommのSnapdragon 8 Gen 4はこのBlackhawk CPUを採用する事はない。Snapdragon 8 Gen 4は、Qualcommが買収したNuviaが開発した完全カスタム設計のOryon CPUコアを採用する初のSnapdragonモバイルチップとなる。Oryon CPUコアは同じくQualcommが開発しているWindows向けSoC「Snapdragon X Elite」にも搭載されている。
Cortex-X5はMediaTek Dimensity 9400とSamsung Exynos 2500が採用する事になるだろう。
Sources
- Moor Insights & Strategy: RESEARCH NOTE: Arm’s “Blackhawk” CPU Is An Audacious Plan To Have The Best Smartphone CPU Core This Year
- via Android Authority: Future Android phone CPUs could finally beat the iPhone
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