テクノロジー業界の巨人AppleとNVIDIAが、ChatGPTで知られる人工知能スタートアップOpenAIへの投資を検討していることが明らかになった。The Wall Street JournalとBloombergの報道によると、この動きは急速に発展し競争が激化するAI市場において、両社の地位を強化する狙いがあるとみられている。
AppleとNVIDIA、OpenAIの巨額資金調達に参加か
既にThe Wall Street Journal紙によって、OpenAIが現在、Thrive Capitalがリードする新たな資金調達ラウンドを準備中で、その規模は数十億ドルに上ることが報じられていたが、これに加え、WSJとBloombergによれば、AppleとNVIDIAもこの資金調達に参加を検討しているという。この資金調達が成功すれば、OpenAIの企業価値は1000億ドル(約15兆円)を超える可能性がある。
Appleの投資検討の背景には、両社の製品連携がある。AppleはWWDC 2024で発表した「Apple Intelligence」と呼ばれるAI機能群において、ChatGPTを活用する計画を明らかにしているが、この機能は2024年後半にiOS 18の一部として登場する予定だ。具体的には、SiriがChatGPTを利用して複雑なユーザーの要求に対応したり、Writing ToolsでChatGPTを使ってテキストの校正や書き換え、要約を行ったりする機能が含まれる。
さらに興味深いのは、AppleがOpenAIの新しい取締役会オブザーバーの役割を求めていたという7月の噂だ。この役割にはPhil Schillerが就任する可能性があったとされるが、Microsoftが自社のオブザーバー席を辞退したことで、この話は立ち消えになったという。
一方、NVIDIAの参加は、同社の半導体技術とAI分野での強みを活かした戦略的な動きと見られる。NVIDIAはすでにCohereやMistral AIなど、OpenAIの競合企業への出資を行っている。特にMistral AIとは、NVIDIAのチップに最適化された言語モデルを共同開発するなど、技術面での協力関係を築いている。
OpenAIへの投資が実現すれば、NVIDIAは自社のグラフィックスカードを使用したオンプレミスAIクラスター向けに、OpenAIのモデルを最適化する可能性がある。これは、NVIDIAのNIMコンテナフォーマットなどの技術を活用することで実現可能だ。
しかし、興味深いことにOpenAIは長期的にはNVIDIAへの依存度を下げる動きも見せている。The Informationの報道によると、OpenAIはBroadcomなど他の半導体サプライヤーとカスタム機械学習アクセラレータの設計について協議を行っているという。
AppleとNVIDIAの具体的な投資額は明らかになっていないが、Thrive Capitalは10億ドル(約1500億円)の出資を予定しているとされる。
さらに、OpenAIの最大の投資家であるMicrosoftも、これまでの130億ドル(約2兆円)の投資に加えて、さらなる出資を検討しているという。MicrosoftはOpenAIの利益の49%を所有しており、両社の関係は緊密である。MicrosoftはWindows、Office、Visual Studio、Bingなど、ほとんどのAI製品の中核にOpenAIのGPT技術を据えている。
この大規模な資金調達と有力企業の参入は、AI市場の競争激化を示唆している。AppleとNVIDIAにとっては、OpenAIへの投資を通じてAI技術へのアクセスを確保し、競争力を高める機会となる。一方OpenAIにとっては、テクノロジー業界の巨人たちからの支援を受けることで、さらなる成長と技術革新を加速させる好機となるだろう。
ただし、これらの投資交渉はまだ進行中であり、最終的な結果は不透明である。AI技術の倫理的な側面や、大手テクノロジー企業による市場独占の懸念など、様々な課題も存在する。業界関係者や投資家、そして一般ユーザーたちは、この動向がAI技術の未来にどのような影響を与えるか、注視している。
Sources
- Bloomberg: Nvidia Discusses Joining OpenAI’s Latest Funding Round
- The Wall Street Journal: Apple, Nvidia Are in Talks to Invest in OpenAI
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