Appleは本日、M4チップを搭載した新型24インチiMacを発表した。長年「8GBで十分」という立場を貫いてきたAppleが、全モデルで16GBのユニファイドメモリを標準搭載とする決定は、AI時代における同社の大きな方針転換を象徴している。新型iMacは11月8日より販売を開始し、価格は198,800円からだ。
M4による性能革新とAIへの本格対応
AppleのM4チップが搭載されるMacは本日発表のiMacが初めてとなる。
Appleはあえて前モデルであるM3との比較を載せることはなく、3年以上前のM1モデルとの比較で、M4搭載iMacの、その相対的な向上幅を大きく見せている。Appleによれば、M1 iMac比で、Microsoft Excelなどのオフィスアプリケーションでの処理速度は最大1.7倍に向上し、Adobe PhotoshopやPremiere Proといったクリエイティブアプリケーションでの処理速度は最大2.1倍を達成するとのことだ。
特筆すべきは、Neural Engineの処理速度が3倍以上に向上したことだ。M4チップは38TOPSのAI処理性能を実現し、Windows陣営が掲げるCopilot+対応の最低基準である40 TOPSに迫る性能を持つ。このことは、AppleがAIコンピューティング時代における主導権争いに本格参入する意思を示している。
プロセッサ構成においても、Appleは市場ニーズに応える選択を行った。エントリーモデルには8コアCPUと8コアGPUを、上位モデルには10コアCPUと10コアGPUを搭載。特に上位モデルでは、6つの効率コアを備えることで、AI処理などの持続的な負荷にも効率的に対応できる設計となっている。
メモリ16GB標準搭載しApple Intelligence対応へ、8GBモデルは廃止
今回の新型iMacで注目すべき変更点は、全モデルでメモリ容量が16GBに増量されたことだ。これまでAppleは「MacのメモリはWindowsの2倍効率的」と主張し、8GBでも十分とする立場を取っていたが、生成AIアプリケーションの普及に伴う要求の高まりを受け、方針を転換した形となる。
メモリは最大32GBまで増設可能で、24GBへのアップグレードは3万円、32GBへのアップグレードはさらに3万円の追加費用が必要となる。ただし32GBモデルは512GB以上のストレージ構成でのみ選択可能だ。
また、16GBにメモリが増量されたことで、Apple Intelligenceに標準で対応するようになった。これにより、システム全体で利用可能な文章作成支援や、音声とテキストを柔軟に切り替えられる新設計のSiriといった、生成AIアプリケーションが利用可能となる。特に注目すべきは、12月に予定されているアップデートでのOpenAI統合である。これまでクローズドなエコシステムを維持してきたAppleが、ChatGPTという外部プラットフォームとの統合を選択したことは、AIプラットフォーム戦略における現実的なアプローチを示している。
強化されたゲーミング性能
M4チップを搭載したことで、iMacはゲーミング性能も大幅にアップしている。M1チップ比で最大2.1倍になったという処理性能に加え、GPU性能はM2チップとの比較で最大4倍になるとされている。また、ハードウェアレイトレーシングに対応したことで、より高品質なグラフィックスでゲーム体験が楽しめるようになっている。
Appleによれば、人気ゲーム『シヴィライゼーションVII』がMacでも登場し、M4 iMacで快適に楽しめると言うことだ。
外観デザインは踏襲、周辺機器は進化
24インチ4.5K Retinaディスプレイを採用する基本デザインは従来モデルを踏襲しつつ、カラーリングに若干手が加えられ、“仕事に集中出来るように”少し柔らかな色味になっているようだ。カラーバリエーションは、シルバーに加えて、グリーン、イエロー、オレンジ、ピンク、パープル、ブルーの7色となっている。
また、新たにNano-textureガラスオプション(3万円)が選択可能になった。Nano-textureガラスオプションは、反射を抑制しながら画質を維持する高度な技術で、iPad ProやStudio Displayでも選択可能なものだ。これがiMacでも選択可能になった事は、より業務用途での利用を想定した判断だろう。
ビデオ会議の質を大幅に向上させる12MPセンターフレームカメラの搭載も、ハイブリッドワーク時代を見据えた重要なアップグレードである。センターステージとデスクビュー機能の組み合わせは、プレゼンテーションやオンライン教育の可能性を広げる。また、ビームフォーミング対応3マイクアレイと6スピーカーサウンドシステムの採用により、音質面での強化も図られている。
接続性においても、上位モデルでは4つのThunderbolt 4ポートを標準装備し、最大2台の6K外部ディスプレイ接続に対応する。標準モデルはThunderbolt 2ポートとなっている。
付属のMagic Keyboar、Magic Mouse、Magic Trackpadは、LightningポートからUSB-Cポートへと移行している。ただし、Magic Mouseの充電ポートは依然として底面に配置されたままだ。
環境への配慮と持続可能性への取り組み
環境面での取り組みも、新型iMacの重要な特徴である。スタンドには100%再生アルミニウムを使用し、プリント基板のメッキには再生金、はんだ付けには再生スズ、配線には再生銅を採用している。パッケージの完全ファイバー素材化は、2025年までにパッケージからプラスチックを完全に排除するというAppleの環境目標達成への具体的な一歩となっている。
性能アップだが据え置かれた価格
新たなM4 iMacはM4チップへのアップグレードとRAMが16GBに倍増したにもかかわらず、8コアCPU8コアGPUの標準モデルの価格は198,800円と据え置かれた。
上位モデルの10コアCPU10コアGPUは234,800円からとなっている。こちらも開始は16GBメモリに256GB SSD搭載だ。
Xenospectrum’s Take
今回のiMacアップデートは、生成AI時代への本格的な対応を見据えた戦略的な製品リニューアルと見ることができる。メモリ16GB標準搭載への移行は、Appleが従来の主張を覆してまで、AI対応を重視していることを示している。
M4チップの38TOPS AI処理性能は、Windows陣営の基準には僅かに届かないものの、Apple Intelligenceという統合的なエコシステムにより、実用面での優位性確保を目指している。ChatGPTの統合は、Appleが従来のクローズドな姿勢から一歩踏み出し、業界標準のAIプラットフォームを積極的に取り込む新しい戦略の表れである。
このアップデートは、macOS Sequoia 15.1との相乗効果により、年内にはさらなる価値を発揮することが期待される。Appleは、AIコンピューティング時代における新たな標準を確立しようとしており、新型iMacはその重要な一歩として位置づけられる。
今後発表が予想されるMacBook ProやMac miniのM4モデルと合わせ、Appleの本格的なAIコンピューティング戦略が徐々に明らかになっていくだろう。2025年には、MacBook Air、Mac Studio、Mac ProのM4モデルも登場する見込みであり、Appleのエコシステム全体でのAI活用の姿が見えてくることになる。
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