かつて世界で最も価値のある企業だったAppleは、現在はAI競争の先頭を走るMicrosoftにその玉座を譲り渡してしまっている。だがAppleは虎視眈々と一発逆転を狙っているようだFinancial Timesによると、Appleは、スイスのチューリッヒに秘密のAI研究所を開設し、ここでのAI研究を加速させるために、Googleから多くのAI専門家を引き抜いていることが伝えられている。
Financial Timesは、過去数年間に渡る数百件の求人情報、LinkedInのプロフィール、研究発表を分析し、Appleが2018年から少なくとも36人のAI専門家をGoogleから引き抜いていることを明らかにしている。これらの元Googleの主要メンバーの中には、以前Google Brainを率いていたJohn Giannandrea氏(現Appleの現在は機械学習・AI戦略担当上級副社長)や、GoogleのトップAI科学者の1人だったSamy Bengio氏が含まれる。また、GoogleのAI音声認識研究を率いたRuoming Pang氏もAppleに参加している。
更に、チューリッヒ工科大学のLuc Van Gool教授によると、Appleはチューリッヒに“Vision Lab”として知られる新しい研究所を開設したとのことだ。この施設では、地元で買収した2つの企業、FaceShiftとFashwellの専門家が働いている。Appleは2015年にモーションキャプチャー企業のFaceShiftを買収し、2019年にFashwellを買収した。FashwellはAIを活用したビジュアル検索を専門としている。また、Appleは市内の2カ所で生成AIの求人広告を出していると報じられているが、そのうちの1カ所は水面下にあるため、近隣住民がオフィスの存在すら知らなかった物だという。
この試みの目的は、MicrosoftやGoogleなどの競合他社に匹敵するような新しいAIモデルや製品を開発できるチームを作ることにあるようだ。そしてこのミッションを達成するために、Appleは業界の専門家、特にGoogleの専門家をターゲットにしている。
雇用だけでなく、Appleは買収も行っており、過去10年間で約20社の新興企業を買収しているが、そのうちの1社がRuslan Salakhutdinov氏が経営するPerceptual Machinesだった。Salakhutdinov氏は同誌に対し、Appleは「デバイス上でできる限りのことをする」ことに注力していると語った。これは、以前報道されたような、AppleがオンデバイスでのAIアプリケーション駆動に取り組んでいる取り組みと一致する言及だ。
なぜAppleが生成AI分野に参入するのにこれほど時間がかかったのかについて、Salakhutdinov氏はAppleが大規模言語モデル(LLM)が不正確な回答や問題のある回答をする傾向があることを懸念していたためだという。「完全にコントロールできないものをリリースするわけにはいかないので、少し慎重になっているだけだと思います」とSalakhutdinov氏は言う。
Salakhutdinov氏の発言は、裏を返せばAppleがAI製品を発表するということは、それは完全にコントロールできるような物になると言うことになる。同社が果たしていつAI製品を発表し始めるかはまだ不明だが、早ければ2024年のWWDCでその片鱗を見ることができるだろう。
Source
- Financial Times: Apple targets Google staff to build artificial intelligence team
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