Appleは本日、iOS 18.2、iPadOS 18.2、およびmacOS Sequoia 15.2の一般公開を開始した。今回のアップデートでは、ChatGPTとの統合や画像生成機能など、同社のAIプラットフォーム「Apple Intelligence」の大幅な機能拡張が実施されるが、現時点ではその多くは日本語ユーザーでは利用できない点は残念な所だ。
iOS 18.2の新機能の詳細
iOS 18.2の目玉機能であるApple Intelligenceの多くの機能はデバイスとSiriの言語設定を英語にしているユーザー向けに提供されているため、日本語ユーザーは2025年初頭の対応言語拡大を待たなければならないが、いち早く試してみたいと言うことであればデバイスの言語設定を変更することでApple Intelligence機能が利用可能だ。それぞれの機能は以下の通りとなる。
AIアシスタントの進化
今回のアップデートで最も注目すべき変更点は、SiriとChatGPTの統合だ。従来のSiriでは対応できない複雑な質問に遭遇した際、システムは自動的にその状況を認識し、ユーザーにChatGPTの支援を提案する。ユーザーが承諾すると、GPT-4oモデルが起動し、より詳細で文脈に沿った応答を生成する。音声による対話だけでなく、テキスト編集メニューからChatGPTを直接呼び出すこともできる。
プライバシー保護の観点から、この機能はWeb版ChatGPTとは異なり、会話履歴をOpenAIのサーバーに保存しない仕組みを採用している。また、OpenAIのアカウントを持っていないユーザーでも利用可能だ。ただし、希望するユーザーはOpenAIアカウントにログインすることで、より高度なモデルにアクセスすることができる。
画像生成機能の実装
恐らく多くのユーザーが楽しみにしているであろう機能がApple Intelligenceの画像処理機能だろう。Appleは、これを三つの異なるアプローチで実装している。
まず「Image Playground」は、テキストによる説明から画像を生成する専用アプリケーションとして提供される。アニメーションやイラストなど、複数のスタイルから選択可能で、既存の写真を基にAIによるリミックスを作成することもできる。この機能はMessagesアプリに統合されているほか、サードパーティ開発者向けのAPIも提供される予定だ。
「Genmoji」は、Appleの絵文字デザイン言語を理解し、それに基づいて新しい絵文字を生成する機能だ。絵文字キーボードを開いている際に、存在しない絵文字の説明を入力すると、その場で新しい絵文字を作成できる。さらに、フォトライブラリの画像を使用してカスタム絵文字を作成することも可能となっている。
「Image Wand」は、メモアプリに特化した機能として実装されている。ユーザーが手書きで描いたラフスケッチを、コンテキストを考慮しながら洗練された画像に変換する。ノート内のスケッチを円で囲むだけで、自動的に変換プロセスが開始される仕組みだ。
作文ツールの強化
iOS 18.1で導入された作文ツール(Writing Tools)も大幅に機能強化された。従来は定型的な文体変換(フレンドリー、プロフェッショナル、簡潔)のみに対応していたが、iOS 18.2では「compose」オプションが追加され、ユーザーが望む変更をより詳細に指定できるようになった。この機能もChatGPTと連携しており、ユーザーの指示に基づいてテキストを生成する。
その他のAI以外のアップデート
革新的な技術で実現したヘッドフォンレス録音
iPhone 16 ProとPro Max向けに、ボイスメモアプリの大幅な機能強化が行われている。新機能の目玉となるのは、ヘッドフォンなしでの重ね録り(レイヤー録音)機能で、これによりプロフェッショナルミュージシャンからカジュアルユーザーまで、より創造的な音声録音が可能になった。
新機能はiPhone 16 ProとPro Maxに搭載された最新のA18 Proチップと「スタジオ品質」マイクロフォンの組み合わせにより実現された。システムは機械学習と高度な信号処理を用いて、再生中のインストゥルメンタル音源とボーカル音声を分離し、個別のトラックとして保存する。
この技術的ブレイクスルーにより、ユーザーは既存の音源を再生しながら、その上からボーカルやその他の音源を重ねて録音することが可能となった。録音されたデータは自動的に2つの独立したトラックに分離され、後続の音楽制作ソフトウェアでの編集に備える。
ヘッドフォンなしでの重ね録り機能の実用性を高めているのが、Logic Proとの緊密な連携だ。録音されたマルチトラックデータは、iCloudを介してMacやiPadと同期され、Logic Pro上で直接編集可能となる。具体的には以下の要件が必要となる:
- Logic Pro for Mac 11.1(macOS Sequoia 15.2以降)
- Logic Pro for iPad 2.1(iPadOS 18.2以降)
また、Logic Pro側からボイスメモアプリに対して圧縮音声ファイルを直接送信することも可能で、これにより創作のインスピレーションを逃すことなく、即座に録音作業に移行できる。
カメラコントロールの拡充
iOS 18.2では、iPhone 16で導入されたカメラコントロールの動作に改善が加えられている。新たにフォーカスと露出のロック機能が新たに実装されており、最初に設定が必要であるが、その後はiPhone 16シリーズで導入されたカメラコントロールボタンを軽く押し続けることで、現在のフォーカスポイントと露出値を即座にロックできる。
また、これまではディスプレイがオフの場合、カメラコントロールボタンを一度押すと画面がオンになるだけで、その後もう一度カメラコントロールボタンを押さなければカメラが起動しなかったが、新たに追加された設定によって、ディスプレイがオフの状態でも、カメラコントロールを1回押すだけでカメラアプリを開くことができるようになった。
設定アプリの「画面表示と明るさ」の中にある、「画面オンを必要にする」は、デフォルトでオンになっているが、これをオフにすることでカメラコントロールボタンでカメラが一発起動するように変更出来る。
メールアプリの刷新
- 受信トレイの新しいカテゴリ分類ツール
- 連絡先の写真を目立つ形で表示する新デザイン
「探す」機能の拡張
紛失アイテムの位置情報を、Apple製品を持っていない他のユーザーとも共有できるようになった。
これは、特定のAirTagや追跡デバイスの位置情報を示す公開リンクを一時的に生成することが可能になったことで実現しており、例えば航空会社のスタッフと協力して預け入れ荷物を探すような具体的なユースケースに対応できるようになった。
プライバシーへの配慮も充実しており、リンクを共有する際には所有者のメールアドレスと電話番号が適切に表示される。また、リンクへのアクセス状況を監視する機能も備わっており、誰がいつ位置情報を確認したのかを把握することができる。さらに、必要に応じて共有を即座に停止することも可能となっている。
システム設定の改善
- デフォルトアプリを設定するための新しい設定ハブを追加
- Face IDによる新規コンピュータの信頼設定が可能に
- 設定アプリのアイコンがダークテーマにも対応
ハードウェア要件と展開計画
Apple Intelligence機能を利用するには、iPhone 15 Pro、Pro Max、またはiPhone 16シリーズのいずれかが必要となる。iPadおよびMacについては、A17 ProチップまたはM1以降のプロセッサを搭載したモデルが対象となる。
Apple Intelligenceの言語サポートも拡大され、米国英語に加えて、オーストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、南アフリカ、イギリスの英語にも対応する。
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