Appleが今年9月に発表したApple Watch Series 10に搭載された新世代ディスプレイ技術「LTPO3」が、将来のiPhoneシリーズへの採用に向けて開発が進められていることが明らかになった。業界メディアThe Elecの報道によると、主要サプライヤーのSamsung Displayが次期Apple Watch向けのLTPO3開発プロジェクトに参画する見通しで、これはiPhone向けの量産準備の一環とみられている。
LTPO3がもたらす革新的な進化
LTPO(低温ポリクリスタルオキサイド)技術は、有機ELディスプレイの電力効率を大幅に向上させる重要な要素技術だ。現行のiPhone 16 ProシリーズではLTPO2が採用されているが、LTPO3では駆動TFT(薄膜トランジスタ)を従来のLTPSからオキサイド方式に変更。これにより、有機EL素子の発光を制御する電流をより効率的に制御できるようになった。
The Elecによると、この技術革新により以下の利点が期待されるという:
- より高いリフレッシュレート(最大240Hz)への対応
- 常時表示時の電力効率の向上
- 横の視野角からの輝度が従来比40%向上
iPhoneへの搭載時期と市場への影響
業界関係者の見方では、LTPO3のiPhone搭載は以下のようなタイムラインが予想されているようだ:
- iPhone 17シリーズ:全モデルでLTPO2を採用(現行技術)
- iPhone 19以降:LTPO3の採用が有力視
注目すべきは、Samsung Displayの動向だ。同社は来年発売予定のApple Watch 11向けLTPO OLED開発プロジェクトに参画する見込みで、これはiPhone向けLTPO3パネルの量産に向けた準備段階として位置付けられている。
Xenospectrum’s Take
この技術移行は、Appleの製品開発戦略における重要なパターンを示している。Apple Watchで先行採用された新技術が、数年後により大規模なiPhoneに展開されるという流れは、2018年のApple Watch Series 4から2021年のiPhone 13 Proへの技術移行でも見られた。
LTPO3の採用は、スマートフォン市場における高性能ディスプレイ競争の新たな局面を示唆している。特に、電力効率の向上と、より高いリフレッシュレートの実現は、モバイルゲーミングやAR/VRアプリケーションの進化を後押しする可能性が高い。また、ディスプレイの常時表示機能の改善は、ユーザーエクスペリエンスの向上に直結するだろう。
ただし、この技術移行には製造上の課題も存在する。大型のiPhoneディスプレイでの安定した量産体制の確立には、相応の時間と投資が必要となる。Samsung DisplayのApple Watch向け開発参画は、まさにこの課題解決に向けた重要なステップと言えるだろう。
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