Microsoft創業者のBill Gates氏は、AI発展によるエネルギー消費増加を懸念せず、むしろこの新たな技術がもたらす省エネ効果に期待を寄せているようだ。Gates氏は、AIが電力グリッドの効率化や持続可能エネルギーへの移行を加速させると主張し、データセンターの電力消費増加を相殺する可能性を示唆した。一方で、専門家からはAIブームによる電力需要急増を懸念する声も上がっている。
AIによるエネルギー消費と省エネ効果のバランス
Bill Gates氏は、自身が出資するベンチャーファンド Breakthrough Energy が主催するロンドンでのイベントで、AIの大規模な電力消費について懸念する必要はないと述べた。
「大げさに考える必要はありません。データセンターは最悪の場合でも6%の追加(電力負荷)ですが、おそらく2%から2.5%程度でしょう。問題は、AIが6%以上の削減を加速させるかどうかです。そして答えは:間違いなくそうです」。
Bill Gates
Gates氏は、AIが技術や電力グリッドの効率を向上させることで、結果的に全体のエネルギー使用量を削減すると主張している。さらに、テクノロジー企業が「グリーンエネルギーを使用している」と主張するために、クリーンな電力源に割増料金を支払う意思があることから、AIデータセンターによる追加需要は新たなグリーン電力への投資によって相殺されると予測している。
しかし、この楽観的な見方に対して、懐疑的な意見も存在する。Goldman Sachs [PDF]と電力研究所(Electric Power Research Institute)の研究によると、現在の傾向が続けば、2030年までに米国のデータセンターが全電力使用量の最大9%を占める可能性があると予測されている。さらに、Arm社のCEOであるRene Haas氏は、この数字が20%から25%に達する可能性があるとも述べている。
国際エネルギー機関(IEA)の報告書はさらに厳しい見方を示しており、2026年までにデータセンターの世界的な電力需要が2022年の460テラワット時(TWh)から、2倍になる可能性があると警告している。特にアイルランドでは、データセンターの電力消費が無制限に成長した場合、2026年までに同国の総電力使用量の32%を占める可能性があると指摘している。
一方で、AIと深層学習技術は長年にわたりデータセンターのエネルギー効率を改善するために使用されてきた。2016年には、Googleが自社のデータセンターの冷却に使用されるエネルギーを40%削減するためにDeepMindの技術を活用していると発表している。
ただし、Gates 氏は、AI やグリーン電力技術の進歩にもかかわらず、電力需要の増加により2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロを達成するという世界的な目標は達成できない可能性が高いと警告している。「10年か15年かかるという方がより現実的かもしれません」と述べ、目標達成の遅れを示唆している。
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