中国の電気自動車(EV)大手BYDが、全固体電池の実用化に向けた計画を加速させている。2027年頃までに「実証実験」を開始し、2030年以降の本格的な量産を目指す。全固体電池は、現行のリチウムイオン電池を凌駕する性能を持つ次世代電池として期待されており、BYDの動きは世界のEV市場に大きな影響を与える可能性がある。
BYD、全固体電池開発の現状と展望
中国の電気自動車(EV)最大手であるBYDは、次世代電池として注目される全固体電池の実用化に向け、具体的な計画を明らかにした。BYDの電池部門CTO(最高技術責任者)であるSun Huajun氏は、2月15日に開催された中国全固体電池イノベーション・開発サミットフォーラムにて、2027年頃に全固体電池のデモンストレーション使用を開始する予定であると発表した。本格的な量産および導入は2030年以降になるとの見通しを示している。
Sun CTOによれば、BYDは2024年中にパイロット生産ラインから60Ahの全固体電池を製造したという。2027年頃にデモ使用と限定的な導入を開始し、2030年以降に大規模な導入を目指すとしている。
全固体電池の材料については、コストとプロセスの安定性を考慮し、硫化物系の固体電解質を選択しているとのことだ。将来的には、固体三元系電池のコストは、液体三元系電池と同等のレベルに達すると予測している。
全固体電池は、従来の液体電解質を用いたリチウムイオン電池と比較して、エネルギー密度、安全性、寿命の面で優位性があると期待されている。Sun CTOは、長期的な視点で見れば、全固体三元系電池のコストは、量産効果により液体三元系電池と同等レベルに近づくと予測する。
中国政府主導の全固体電池開発コンソーシアム
今回のフォーラムは、中国政府主導で設立された「中国全固体電池協同イノベーションプラットフォーム」が主催した。このプラットフォームは、BYDやCATL(寧徳時代新能源科技)といった中国の主要電池メーカーや自動車メーカーが結集し、全固体電池の早期実用化を目指すコンソーシアムである。
清華大学のOuyang Minggao教授(CASIPの会長)は、AIを活用することでバッテリーの研究開発効率を1〜2桁向上させ、研究開発コストを70〜80%削減できると予測している。この取り組みにより、1000億元(約2兆1000億円)を超える生産額が見込まれるとOuyang教授は述べる。
中国第一汽車集団(FAW Group)のチーフサイエンティストであるWang Deping氏も、2027年までに全固体電池の小規模アプリケーションを実現することを目標としていると述べた。FAW Groupは2014年から全固体電池の開発に取り組んでおり、自動車メーカーのニーズに合わせた研究開発を進めているとのことだ。
Ouyang教授は、AI(人工知能)技術の導入が電池研究開発を加速させる可能性についても言及した。AIによるデータ分析を活用することで、研究開発効率が1桁から2桁向上し、コストを70〜80%削減できると予測している。
BYDの垂直統合戦略とブラジルでのリチウム採掘権取得
BYDは全固体電池の開発と並行して、原材料の確保にも注力している。Reutersが確認した公的記録によると、BYDは2023年後半にブラジルのリチウムが豊富な地域である「リチウムバレー」で、2つの鉱区の鉱業権を取得した。
鉱区は、BYDがブラジル北東部のバイーア州に建設を予定している新工場の近くに位置する。この工場は年間15万台のEV生産能力を持つとされ、鉱区から工場までの距離は約825km(約512マイル)とされている。
ブラジルでの鉱業権取得は、BYDにとって西半球における戦略的鉱物資源の採掘に向けた具体的な一歩となる。BYDは、中国国内の鉱山会社への出資やチリのリチウムプロジェクトへの入札にも参加しており、サプライチェーンの垂直統合を進める動きを加速させている。
全固体電池開発競争の激化と今後の展望
全固体電池の開発は、世界中の企業や研究機関が取り組む重要な課題となっている。Hyundaiは、2025年までに全固体電池を搭載したEVを発表し、2030年までに量産を開始する計画を発表している。また、米国のAnthro Energyは、液体から固体への注入可能な電解質を備えたバッテリーを発表している。
BYDの競合であるCATLも、2027年に全固体電池を少量生産することを目指しているが、大量生産にはコストなどの課題が残るとされている。
Sources
- CnEVPost: BYD expects to begin ‘demonstration use’ of all-solid-state batteries by 2027, exec says
- Reuters: Exclusive: China’s BYD holds mining rights in Brazil’s Lithium Valley, documents show
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中国のEV大手BYDが全固体電池の実用化を加速。2027年までに実証実験を開始し、2030年以降の量産を目指す。中国政府の支援と垂直統合戦略により、次世代電池技術で世界をリードする可能性を100文字で解説。
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