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ガムを1つ噛むと最大3000個のマイクロプラスチックが唾液に溶出する可能性

Y Kobayashi

2025年3月28日

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームが、ガムを噛むことで唾液中に数百から数千個のマイクロプラスチックが放出される可能性を発見した。この研究結果は、アメリカ化学会(ACS)の春季会議で発表され、合成ガムだけでなく天然由来とされるガムからも同程度のマイクロプラスチックが検出されたとのことだ。

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研究内容と主要な発見

UCLAのSanjay Mohanty教授率いる研究チームは、市販の10種類のガム(合成ガム5種類と天然ガム5種類)を対象に実験を行った。実験では、被験者が各ブランドのガムを4分間噛み、30秒ごとに唾液サンプルを採取。化学分析の結果、平均して1グラムのガムから約100個のマイクロプラスチックが放出され、一部のガムでは最大600個のマイクロプラスチックが検出された。

一般的なガムの重量は2〜6グラムであるため、1つのガムから最大3,000個のマイクロプラスチックが放出される可能性がある。年間160〜180個のガムを噛む平均的な消費者は、この習慣だけで約30,000個のマイクロプラスチックを摂取している可能性があると研究者らは推定している。

「最初の仮説では、合成ガムの方がベースがプラスチックタイプであるため、マイクロプラスチックが多く含まれると考えていました。しかし驚くべきことに、合成ガムと天然ガムの両方から噛んだ際に放出されるマイクロプラスチックの量は同程度でした」とUCLAの大学院生でこの研究の発表者であるLisa Lowe氏は述べている。

研究チームは、ガムから放出されるマイクロプラスチックの大部分が噛み始めて最初の2分間に放出されることを発見した。また、8分間の咀嚼で、検出されたマイクロプラスチックの94%が放出されたという。研究者らによれば、これは唾液中の酵素によってプラスチックが分解されるのではなく、咀嚼の摩擦によってマイクロプラスチックが剥がれ落ちることが原因だという。

マイクロプラスチックの種類と潜在的な健康影響

この研究で検出されたマイクロプラスチックの平均サイズは82.6マイクロメートル(紙の厚さや人間の髪の毛の直径程度)であった。研究チームが使用した分析ツールでは20マイクロメートルより小さい粒子は検出できないため、実際のマイクロプラスチック放出量はさらに多い可能性があるとMohanty教授は指摘している。

検出された主なポリマーは、ポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレンを含む)、ポリテレフタラート、ポリアクリルアミド、ポリスチレンの4種類であった。これらは日常的なプラスチック製品に使用されているのと同じ種類のプラスチックである。

「私たちの目標は誰かを不安にさせることではありません。科学者たちはマイクロプラスチックが私たちに安全かどうかはまだ分かっていません。人間を対象とした試験はありません。しかし、私たちが日常生活でプラスチックにさらされていることは知っており、それを調査したかったのです」とMohanty教授は述べている。

2024年に発表されたレビュー研究によれば、マイクロプラスチックは呼吸器、消化器、生殖器の健康に悪影響を及ぼす可能性があり、大腸がんや肺がんとも関連している可能性があるとされている。UCLAヘルスのシニア臨床栄養士であるDana Hunnes博士は「ガムを噛む際、ほとんどの人は唾液を飲み込む傾向があるので、ガムが唾液中にマイクロプラスチックを放出し、人々がそれを飲み込んでいるとしたら、それは良いことではありません」とコメントしている。

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今回の研究の限界と注意点

この研究にはいくつかの限界がある。まず、研究はまだ査読を受けておらず、科学的検証の過程にある。また、被験者は1人のみであり、より広範な結論を導くには大規模な研究が必要だ。

さらに、研究チームが使用した分析技術では20マイクロメートルより小さい粒子は検出できないため、実際のマイクロプラスチック放出量は報告されているよりも多い可能性がある。ニューヨーク大学環境有害物質研究センターのLeonardo Trasande所長は、これらの制約により「調査結果はより小さなマイクロプラスチックやナノプラスチックを見逃し、したがって過小評価である可能性がある」と指摘している。

日常生活における他のマイクロプラスチック摂取源

だがガムからのマイクロプラスチック摂取は、日常生活における全体的なマイクロプラスチック曝露の一部に過ぎない。Mohanty教授は、この研究がアラームを鳴らすことを意図したものではないと強調している。

比較として、別の研究では、プラスチックボトル1リットルの水には平均240,000個のマイクロプラスチックが含まれているという結果が報告されている。また、科学者らは人間が食品、飲料、プラスチック包装、コーティング、製造プロセスなどを通じて年間数万個のマイクロプラスチックを摂取していると推定している。

オーストラリアのRMIT大学の化学教授Oliver Jones氏は「比較的少ない数のマイクロプラスチックが飲み込まれたとしても、それらは何の影響もなくそのまま通過する可能性が高いです。まだガムを噛むのをやめる必要はないと思います」と述べている。

対策と今後の研究

研究チームは、マイクロプラスチックの摂取を減らすための提案として、新しいガムに変える前に1つのガムをできるだけ長く噛むことを推奨している。「一つのガムを長く噛むことで、複数のガムからのマイクロプラスチック摂取量を減らせる可能性があります」とLowe氏は述べている。

また、使用済みのガムの適切な廃棄も重要だとMohanty教授は強調する。「唾液中に放出されるプラスチックは、ガムに含まれるプラスチックのほんの一部です。環境に配慮して、外に捨てたり、ガムの壁に貼りつけたりしないようにしましょう。」適切に処分されないガムは、環境へのプラスチック汚染源にもなる。

今回の研究は予備的なもので、研究チームは今後より小さなナノサイズのプラスチックの放出可能性についても調査が必要だとしている。また、マイクロプラスチックの人体への長期的な影響を理解するためには、さらなる研究が必要だと専門家は口を揃える。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の産婦人科教授で、マイクロプラスチックの健康影響を研究しているTracey Woodruff博士は「マイクロプラスチックへの曝露を減らすことに関心がある人にとって、ガムを噛まないことはマイクロプラスチック曝露を避けるための選択肢になるでしょう」と述べている。


Sources

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