スマートフォンの高速充電で先頭を走っているのは意外かも知れないが中国企業だ。既に200W以上という高出力での充電が可能な技術も昨年の段階で披露されていたが、今回中国のスマートフォンメーカーRealmが、5分未満の短時間でスマートフォンのバッテリーを完全に充電できる世界最速の充電技術「SuperSonic Charge」を発表し、この分野での中国独自の進歩を誇示している。
最新のGalaxyやPixelスマートフォンと比較しても“桁違い”の充電速度
Realmeが開発したSuperSonic Charge技術は、最大320Wという驚異的な充電速度を実現する。これは、現在市場に出回っているハイエンドスマートフォンの充電速度をはるかに凌駕する性能だ。例えば、Samsungの最高級折りたたみスマートフォンGalaxy Z Fold 6が25W、GoogleのPixel 9 Pro XLでさえ37Wの充電速度に留まっているのと比較すると、まさに“桁違い”の速度だ。
Realmeが中国深センで行ったデモンストレーションでは、4,420mAhのバッテリーを搭載したプロトタイプデバイスを使用し、完全に空の状態から100%まで充電するのにわずか4分30秒しかかからなかった。さらに驚くべきことに、充電開始からわずか1分で26%、2分以内に50%まで充電できることが示された。
この「4分の奇跡」と呼ばれる技術を可能にしているのは、いくつかの革新的な要素の組み合わせだ。まず、バッテリー自体が特別に設計されている。4つの独立したセルで構成されており、それぞれを並行して、同時に充電することが可能になっている。各層の厚さは3mm未満で、人工衛星のソーラーパネルのように折りたたんで収納できるよう設計されている。この独自の折りたたみ設計により、従来のバッテリーと比較して同じスペースで10%多い容量を実現している。
充電器も重要な役割を果たしている。「Power Cannon」または「Pocket Cannon」と名付けられたこの充電器は、1立方センチメートルあたり3.3Wという驚異的な電力密度を誇る。これは、昨年の240W充電器の2.34W/ccを大きく上回る性能だ。2つのUSB-Cポートを備え、USB Power Delivery(USB-PD)やOppoのSuperVOOC、UFCSなど、複数の充電規格に対応している。SuperVOOC規格では150W、USB-PDでは65Wの充電が可能で、スマートフォンとラップトップを同時に高速充電できる。
しかし、この革新的な技術にはいくつかの課題も存在する。まず、この技術が実際の製品として登場する時期は未定だ。また、中国市場向けに設計されているため、220Vの電源を使用している点が挙げられる。他の地域で実装する場合、OppoのSuperVOOCのように充電速度が低下する可能性がある。
さらに、極端な高速充電がバッテリーの寿命や発熱に与える影響も考慮する必要がある。Realmeはこの点に配慮し、安全性を確保するために「AirGap」電圧変圧器を導入している。この技術は、非接触の電磁変換を利用して高電圧をスマートフォンに適した20Vに降圧し、回路の問題が発生した際にバッテリーを保護する。また、この仕組みにより、320Wシステムで93%という高い充電効率を維持することも可能になっている。
こうした超高速充電技術は、スマートフォンの使用体験を大きく変える可能性を秘めている。バッテリー残量を気にする必要がなくなり、外出前のわずかな時間の充電で十分になるかもしれない。これは特に、忙しい現代人のライフスタイルに大きな影響を与える可能性がある。
しかし、この技術が実際の製品として市場に登場し、私たちの手元に届くまでにはまだ時間がかかりそうだ。中国の製造業者がデモで200W以上の充電速度を誇示しても、実際の製品は150W程度に抑えられる傾向にあるのが現状だ。これには、バッテリーの寿命や安全性、コストなど、様々な要因が関係している。
だが、バッテリー技術と充電速度の飛躍的な進歩は、AI機能の発展によりますます高性能化するスマートフォンにとって、大きな意味を持つに違いない。ユーザーが充電の悩みから解放される未来もそう遠くないかも知れない。
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