ITサービス大手のCognizant Technology Solutionsは、企業のAI活用を加速させる画期的な取り組みを発表した。同社は、既存のNeuro AIプラットフォームに大幅な機能強化を施し、企業がAIユースケースを迅速に発見、プロトタイプ化、開発できるようにした。
Cognizantによる強化されたNeuro AIプラットフォーム
この強化されたプラットフォームは、企業が直面する主要な課題を素早く特定し、合成データまたは匿名化されたデータを使用してAIモデルを生成することで、予測的洞察と意思決定ガイダンスを提供する。さらに、業界固有の設定を提供することで、企業がAIユースケースをスケールアップし、測定可能な成果を導き出すことを可能にしている。
Cognizantの最高技術責任者(CTO)であるBabak Hodjat氏は、この新しいプラットフォームの重要性について次のように述べている。「ビジネスは、AIをどのように、そしてどこにビジネス上の問題解決に適用すべきかについて苦心しています。そのため、私たちはAIユースケースのほとんどが予測ベースの結果や単一のLLMチャットベースのソリューションに限定されているのを目にしてきました。マルチエージェントAIシステムがこれらの問題を解決する鍵を握っており、そのためNeuro AIはその中核にマルチエージェントを組み込んで構築されています」。
この発言は、企業がAI導入に苦戦している現状を浮き彫りにすると同時に、Cognizantの新しいアプローチがその解決策となる可能性を示唆している。しかし、「マルチエージェントAIシステム」が万能薬であるかのような言い回しには、若干の皮肉を感じずにはいられない。AIの世界では、新しい技術が登場するたびに「革命的」と喧伝されるが、実際の成果はそれほど劇的ではないことも多いからだ。
Neuro AIプラットフォームの新機能と特徴
Cognizantの強化されたNeuro AIプラットフォームは、企業のAI導入を支援するための革新的な機能を多数導入している。特に注目すべきは、マルチエージェント機能を中核に据えた設計だ。
プラットフォームは4つの主要ステップで構成されており、それぞれが事前設定されたエージェントに依存している:
- Opportunity Finder:マルチエージェント型の発見ツールで、ガイド付きアプローチを通じてAI意思決定ユースケースを特定する。
- Scoping Agent:特定されたユースケースの影響を具体的なカテゴリーやパフォーマンス指標に関連づける。
- Data Generator:テスト用の合成データを生成し、アプリケーションの実現可能性を検証する。
- Model Orchestrator:ドラッグ&ドロップ式のツールで、データの準備や機械学習モデルの適用を行う。この過程はLLM(大規模言語モデル)によってサポートされ、効率化されている。
これらのステップを経て、機械学習モデルが結果を予測し、AIモデルが意思決定を推奨する。最も性能の高いモデルは、Webインターフェースを通じて、またはLLMアシスタントとの対話を通じて詳細に調査し、微調整することができる。
Hodjat氏は、このプラットフォームの独自性について次のように述べている。「このプラットフォームは、データサイエンティストだけでなく、ビジネスリーダーを運転席に座らせます。彼らは自身のドメイン知識を活用して、AIの意思決定ユースケースを数分で素早くテストし確立し、その結果得られたモデルコードを反復的にスケールアップすることができるのです」。
この説明は確かに魅力的に聞こえるが、「ビジネスリーダーを運転席に座らせる」という比喩は、やや誇張されているように思われる。AIの複雑さを考えると、非技術系のリーダーが本当に「数分で」有意義なAIユースケースを確立できるのかは疑問が残る。とはいえ、AIの民主化という観点からは興味深いアプローチであることは間違いない。
企業のAI導入に関する最新の調査結果
CognizantがOxford Economicsと共同で実施した最新の調査「New Work, New World: Quantifying Global Gen AI Momentum」は、企業のAI導入に関する興味深い洞察を提供している。
調査結果によると、生成AIの採用における最大の戦略的優先事項は生産性の向上であり、76%の企業が新たな収益源を創出するためにこの技術を活用しようとしている。さらに、58%の企業がビジネスケースに収益増加を組み込んでいる。
投資の面では、調査対象企業は今年度、生成AIに平均4750万ドルを投資する計画であることが明らかになった。資金の大半はIT・技術予算から調達される見込みだが、マーケティングやR&D予算からの貢献も期待されている。
しかし、生成AIの採用に対する熱意の一方で、企業はこの技術のスケーリングに伴う課題も認識している。全社的なユースケースを実装している企業はわずか26%にとどまり、採用の遅れが競合他社に優位性を与える可能性があるという懸念が広がっている。グローバルでは、70%の企業が十分な速さで動いていないと感じており、82%が実行の遅れが競争上の不利を招く可能性があると考えている。
Cognizant CEOのRavi Kumar S氏は次のように述べている。「私たちの以前の調査で、生成AIツールが10年間で米国経済に約1兆ドル、グローバルではそれ以上を注入する可能性があると予測したことを考えると、最新の調査で生成AIが多くの企業にとって潜在的な成長の中核的源泉として特定されたことは驚くべきことではありません。同時に、世界中の経営者がAIの生産性から成長への旅を導くエキスパートを求めているように、この技術の採用には慎重なアプローチが見られます。」
この調査結果は、企業がAIの潜在的な価値を認識しつつも、その実装には慎重であることを示している。「1兆ドル」という数字は確かに印象的だが、これがどれほど現実的な予測なのかは疑問が残る。AIの経済効果予測は往々にして楽観的すぎる傾向があるからだ。
それにもかかわらず、この調査結果は、CognizantのNeuro AIプラットフォームのような製品の市場機会を示唆している。企業がAI導入を加速させたいと考える一方で、その過程でガイダンスを必要としているという事実は、Cognizantにとって追い風となるだろう。
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