AppleがiPad Proに搭載するM4チップは、早速Geekbench 6でのベンチマークテスト結果が流出しており、M3からの大きな性能向上や、上位のM3 Proすらも上回る印象的な結果を示しているが、このパフォーマンス向上の大きな鍵は、TSMCの第2世代3nmプロセス「N3E」への切り替えによるものだけではなく、どうやらCPUアーキテクチャを最新の「ArmV9」に切り替えたことが大きいようだ。
SMEサポートによる全体的なパフォーマンス向上が期待出来る
M4チップのGeekbench 6でのベンチマークテストは驚くべきものだった。だが、その内訳は良く見てみると、どうやら一部の新型命令セットアーキテクチャへの対応が大きくスコアを押し上げている面も大きいようだ。
@negativeonehero氏は、M4とM3 MaxのGeekbench 6でのベンチマークテスト結果を細かく比較した表をXに投稿している。以下の数字はCPUコア1つの性能を示すものだ。そのため、実質的にはM3のシングルコアとの比較と見ることも出来るだろう。
ここで注目すべきは、FPの項目にある「Object Detection」と「Background Blur」というテストの項目だ。これが実に前者に関してはM3 Maxに対して、M4は2倍以上ものスコアを記録している。Background Blurも3割近い性能向上だ。
この2つのテスト項目について、SME(Scalable Matrix Extension)というArmv9アーキテクチャでサポートされている命令セットアーキテクチャ(ISA)を利用することで、M4チップでのスコア向上に大きな貢献をしているというのだ。
SME は、Scalable Vector Extensions(SVE、SVE2)をベースに、行列を効率的に処理するための新機能を追加したISAだ。
これが結果としてGeekbenchのスコアを押し上げたのではと分析されている。
逆に言えば、このSMEが有効に働いた2つのテスト項目を除外した場合のIPCは3%程度の向上であり、M4の性能向上はこれはクロック周波数の上昇分のみしか恩恵がないという意見もある。
実際のIPCがどの程度の向上となるかはこれだけでは判断が出来ないが、SMEが利用できる場面では、大きな性能向上が期待出来ることもまた確かだろう。このSMEは、Appleの次期A18 Proでも採用される見通しであり、M4と同様の性能向上を見せる可能性がありそうだ。
ちなみに、Snapdragon 8 Gen 4はSnapdragon X Eliteをベースにしているため、SMEには対応していないようだ。つまり、Qualcommの次世代SoCは、A18 Proにこの点で劣る可能性がある。
興味深いのは、こうした最先端の技術を採用したことをAppleが明らかにしていないことだ。意図的なものなのか、いつも通りの秘密主義に基づくものなのかは不明だが、今年後半にiPhone 16ファミリー向けのA18とA18 Proを発表する際に、Appleがこの点で何らかのの情報を明かす可能性もあるだろう。
コメント