ドイツのAI企業DeepLが、翻訳と文章編集に特化した新しい大規模言語モデル(LLM)を発表した。同社によると、この新モデルは業界最高水準の翻訳品質を実現し、GPT-4やGoogle翻訳を凌駕する性能を持つという。
競合他社を大きく上回る翻訳特化LLM
2017年に設立されたDeepLは、AIを活用した翻訳サービスを提供する企業として急速に成長を遂げている。現在、Fortune 500企業の半数を含む10万以上の企業や組織が同社のサービスを利用しており、63の国と地域で展開している。
今回発表された新モデルは、以下の3つの特徴を組み合わせることで、これまでにない高品質な翻訳を実現したとされる:
- 言語タスクに特化したLLM:より自然な翻訳を生成し、誤訳やハルシネーションのリスクを低減。
- 独自のデータセット:7年以上にわたって蓄積された、コンテンツ作成と翻訳に特化した独自データを活用。
- 人間によるモデルチューニング:数千人の厳選された言語専門家が、高品質な翻訳のためにモデルを「指導」。
DeepLの創業者兼CEOであるJarek Kutylowski氏は、「これは企業向けDeepLの優れたLLM搭載言語AIソリューションの始まりに過ぎません」と述べ、翻訳や文章作成の品質、効率性、適応性の向上に多額の投資を行っていることを強調した。
同社の研究部門副社長Stefan Mesken氏によると、新モデルは競合他社のモデルと比較して大幅な改善を示しているという。言語専門家によるブラインドテストの結果では、Google翻訳の1.3倍、OpenAIのGPT-4の1.7倍、MicrosoftのBing翻訳の2.3倍好ましいという結果が示されたという。また、従来モデルとの比較では、英語から日本語および簡体字中国語への翻訳で1.7倍、英語とドイツ語の組み合わせで1.4倍の改善が見られたとのことだ。
また、プロの翻訳者によるテストでは、同じ品質を得るためにはGoogle翻訳では2倍、GPT-4では3倍の編集が必要となり、DeepLの新モデルの効率性が際立つ結果となった。
新モデルは現在、有料プラン「DeepL Pro」の顧客向けに英語、日本語、ドイツ語、簡体字中国語の翻訳で利用可能であり、今後さらに多くの言語に対応する予定だ。Web翻訳ツールでは「next-gen model」を選択することで新モデルを利用できる。
DeepLは2024年5月に3億ドルの資金調達を行い、企業価値は20億ドルに達した。同社は急速な成長を続けており、今回の新モデルの発表は、AIを活用した言語サービス市場における同社の地位をさらに強化するものと見られる。
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