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AIで大量生成した音楽をボットで再生、1200万ドルの不正収益で男性起訴

Y Kobayashi

2024年9月9日

音楽ストリーミングサービスを悪用し、人工知能(AI)で生成した楽曲をボットで大量再生させて不正に1200万ドル(約18億円)もの収益を得たとして、ノースカロライナ州の52歳の男性が起訴された。この事件は、AIを用いた音楽ストリーミング詐欺として初めて刑事告発されたケースとなり、音楽業界に衝撃を与えている。

巧妙な手口で音楽配信サービスから1200万ドルを詐取


ニューヨーク南部地区連邦検事局は、Michael Smithと名乗る男性を、電信詐欺共謀、電信詐欺、マネーロンダリング共謀の罪で起訴したと発表した。起訴状によると、Smithは2017年から2024年にかけて、Spotify、Amazon Music、Apple Music、YouTubeなどの主要な音楽ストリーミングプラットフォームを対象に、大規模な詐欺スキームを展開していたとされる。

Smithは、AIを使用して数十万曲もの楽曲を生成し、それらをストリーミングプラットフォームにアップロードした。その後、1000以上のボットアカウントを駆使して、これらの楽曲を何十億回も再生させることで、不当に多額のロイヤリティ収入を得ていたという。

検察によると、Smithのスキームは巧妙を極め、2024年2月の時点で40億回以上のストリームと1200万ドル以上のロイヤリティ収入を生み出していたとされる。この不正行為により、正当な楽曲の再生によって得られるはずだった収益が、AIによって生成された偽の楽曲に流れることとなり、音楽業界に多大な損害を与えた可能性がある。

検知回避のための緻密な計画

Smithの詐欺スキームは、AIとボットを巧みに組み合わせた精巧なものだった。彼は、AIを用いて大量の楽曲を生成するため、名前を明かさない音楽プロモーターとAI音楽会社のCEOと共謀していたとされる。

生成された楽曲には、「Calm Baseball」「Calm Connected」「Calm Knuckles」「Calliope Bloom」「Calliope Erratum」「Callous」「Callous Humane」といった、AIによって生成されたとみられるアーティスト名が付けられていた。これらの楽曲は、ファイル名が「n_7a2b2d74-1621-4385-895d-b1e4af78d860.mp3」のようなランダムな文字列で保存されていたという。

Smithは、ストリーミングプラットフォームの不正検出システムを回避するため、少数の楽曲を大量に再生するのではなく、多数の楽曲を比較的少ない回数ずつ再生する戦略を取っていた。彼は共謀者に宛てたメールで、「権力者に問題を起こさないようにするには、少量のストリームで大量のコンテンツが必要だ」と述べていた。

詐欺スキームの規模は膨大で、Smithは52のクラウドサービスアカウントを運用し、各アカウントに20のボットアカウントを設定していた。これにより、合計1,040のボットが動いていたことになる。Smithの試算では、1日あたり約66万回のストリーム、年間120万ドル以上の収益を見込んでいたという。

ニューヨーク南部地区連邦検事のDamian Williams氏は、「Smithの厚顔無恥な詐欺スキームにより、正当にストリームされた楽曲の音楽家、作曲家、その他の権利所有者に支払われるべき数百万ドルのロイヤリティが盗まれた」と述べ、この事件の深刻さを強調した。

Smithは現在、ノースカロライナ州の治安判事の前で審問を受ける予定だが、有罪となった場合、各罪につき最大20年の懲役刑に直面する可能性がある。

この事件は、AIとボットを組み合わせた新たな形態の詐欺が音楽業界に深刻な影響を与える可能性を示しており、ストリーミングプラットフォームや権利者団体にとって、不正対策の強化が急務となっている。同時に、AIが創作した楽曲の著作権や、ストリーミング再生数の信頼性といった問題にも一石を投じる結果となっている。


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