NAND不足は、SSD市場を一方向に冷やす材料ではなくなっている。消費者向けSSDやPCにとっては価格上昇と容量引き下げの圧力であり、購入者にとっては明確に悪いニュースだ。一方で、SSDコントローラを供給するSilicon Motionには別の力学が働いている。高容量NANDがデータセンターへ吸われ、PCやスマートフォン向けの配分が絞られるほど、SSDメーカーやモジュールメーカーは限られたNANDで出荷台数を維持しようとする。その過程で、コントローラの需要は必ずしも消えない。
Tom's Hardwareが2026年6月4日に報じたSilicon Motion幹部への取材は、この逆説をかなりはっきり示している。Nelson Duann氏は、PCIe 4.0/5.0、UFS、eMMCの高性能コントローラがよく売れており、低価格帯の弱さを高ASPの製品が補っていると説明した。同時に、NAND供給は2026年後半も厳しく、2027年にはさらに悪化するという見方も示した。Duann氏の表現では、NAND供給の観点で2027年が「最悪」になるという。消費者向けNANDが回復するというより、クラウドサービス事業者とデータセンター向けの需要が配分を先に取っていく構図である。
3億4200万ドルの四半期売上は、NAND不足が需要を消していないことを示した
Silicon Motionの2026年第1四半期決算では、全社売上が3億4200万ドルとなり、前四半期比23%増、前年同期比105%増だった。GAAP粗利率は47.1%、非GAAP粗利率は47.2%で、非GAAPベースの希薄化後ADS利益は1.58ドルである。会社側は第2四半期についても3億9300万ドルから4億1100万ドル、前四半期比15%から20%増の売上を見込んでいる。メモリ不足の局面で、少なくとも同社の事業は守りに入っていない。
内訳を見ると、成長の質が分かる。SSDコントローラ売上は第1四半期に前四半期比で5%から10%減ったが、前年同期比では40%から45%増えた。eMMC+UFSコントローラは前四半期比30%から35%増、前年同期比140%から145%増で、Ferriとboot drive solutionsは前四半期比205%から210%増、前年同期比755%から760%増だった。低価格帯のスマートフォンやPCが弱くても、組み込み、車載、AIインフラ、起動用ストレージの伸びが別の柱になっている。
SSDコントローラの前年同期比成長には、PCIe 5世代への移行も効いている。Silicon Motionは、PCIe 5コントローラが従来世代より高いASPを持つと説明している。PCの出荷台数やSSD容量が圧迫されても、コントローラ単価が上がり、性能帯が上へ動けば、同じ台数減少がそのまま売上減少にはならない。NAND不足で低価格帯の需要が傷む一方、残る需要が高性能・高単価側へ寄るためだ。
AI向け配分が、PCとスマートフォンの仕様を押し下げる
不足の中心には、AIインフラによるメモリ配分の変化がある。Silicon Motionの決算説明会では、2026年第1四半期にNAND価格が前四半期比55%から60%上昇したと説明された。同社はNAND不足が2026年と2027年を通じて厳しいと見ており、スマートフォンと低価格帯PCには特に圧力がかかるとした。PCメーカーはNANDとDRAMのコスト上昇により、新製品の仕様を下げ、コストを消費者へ転嫁する動きになる。
TrendForceの市場調査も同じ方向を示している。同社は2026年第2四半期のNAND Flash契約価格が前四半期比70%から75%上昇すると予測し、NAND容量がエンタープライズSSDへ配分され、コンシューマ向けがコスト圧力で縮小すると説明した。AIサーバー向けのエンタープライズSSD需要は衰えず、意味のある容量拡大は2027年末または2028年まで見込みにくいという見方である。
この構図では、PCやスマートフォン向けのNAND不足は単なる一時的な在庫調整ではない。NANDメーカーは利益率の高いエンタープライズSSDやデータセンター向けへ配分を寄せる。消費者向け市場には供給が残るとしても、価格と容量の条件は厳しくなる。Tom's Hardwareの取材でDuann氏が述べた「2027年が最悪」という見方は、NANDメーカーが消費者向けを完全に捨てるという意味ではなく、十分な配分が戻らないという読みである。
容量を下げても、コントローラは必要になる
ここでSilicon Motionにとって重要なのは、SSDの容量とコントローラの関係だ。NANDが高いと、SSDメーカーは512GBモデルを256GBへ、1TBモデルを512GBへ寄せるように、容量を下げて価格帯を維持しようとする。消費者には容量減として表れるが、1台のSSDにはなおコントローラが必要だ。容量当たりのNAND消費を減らしても、製品台数を維持する限り、コントローラ需要は残る。
さらに、NANDメーカーがPC OEM向けの完成SSDや低価格帯製品から距離を取り、データセンター向けにリソースを振り向けるほど、モジュールメーカーが不足分を埋める余地が生まれる。Silicon Motionは決算説明会で、NANDメーカーからの外部委託プロジェクトが増え、モジュールメーカーがPC OEM向けの穴を埋める流れが同社に有利だと説明している。同社は多数のモジュールメーカーにコントローラを供給しており、完成品市場の担い手が変わること自体が設計採用の機会になる。
DRAM不足もコントローラ選択を変える。Silicon Motionは、2025年12月に4チャネルのDRAMレスPCIe 5コントローラを量販市場向けに投入したと説明している。DRAMの入手性とコストが悪化する局面で、同社はこの製品が顧客にとって部品面のハードルを下げると位置づける。高級SSDだけでなく、より広い価格帯へPCIe 5性能を持ち込む製品が増えれば、コントローラの世代交代はNAND不足下でも進む。
MonTitanとブートドライブは、不足の原因と成長機会を同時に持つ
Silicon Motionの成長機会は、消費者向けSSDだけではない。企業・AIインフラ向けのMonTitan コントローラ、ブートドライブ向けストレージ、Ferri 組み込みストレージが急速に大きくなっている。第1四半期にはFerriとブートドライブソリューションが前年同期比で755%から760%増え、同社は車載向けFerri製品のランプと、AIインフラ/GPU顧客向けのブートドライブソリューション拡大を成長要因に挙げている。
MonTitanは、TLC NANDを使う高性能コンピュートSSDやKVCache向け、QLC NANDを使う高容量エンタープライズSSD向けに位置づけられている。Silicon Motionは、MonTitanが2026年第2四半期に予定より1四半期早く量産商用ランプへ入り、2026年後半にはアジア3社、米国2社のTier 1クラウドサービス事業者がランプを始めると説明した。PCIe 6世代のMonTitanについても、2026年第3四半期のテープアウトと、2027年から2028年にかけた成長を見込む。
この事業は、NAND不足の原因側と恩恵側の両方にいる。AIインフラ向けSSD需要がNANDを吸い上げるから消費者向け配分が絞られる。一方で、その同じAIインフラ向け需要が、Silicon Motionのエンタープライズコントローラとブートドライブの売上を押し上げる。車載向けFerriでも、同社は米国、欧州、中国、日本の自動車OEMやサブシステムサプライヤーからの需要加速を説明している。消費者向けSSDの価格上昇を喜べる状況ではないが、同社にとっては市場の中心が、低価格PC向けからAIインフラ、車載、組み込みへ移る過程でもある。
2027年の焦点は、SSD価格だけでなく容量と世代のミックスになる
2027年のNAND供給がさらに厳しくなるなら、消費者が見るべき変化は価格表だけではない。同じ価格帯で容量が下がる、DRAMレスPCIe 5製品が選択肢に入る、PCIe 5の普及が高価格帯から量販帯へずれる、モジュールメーカー製SSDの比率が変わる。NAND不足は、単に「SSDが高い」という現象ではなく、どの容量、どの世代、どのメーカー構成の製品が店頭に残るかを変える。
Silicon Motionの決算とTom's Hardwareの取材が示すのは、メモリ不足の勝者と敗者が部品ごとに分かれることだ。NANDを大量に必要とする消費者向けSSDやPCには逆風が吹く。しかし、限られたNANDで製品台数を保ち、世代交代を進め、データセンター向けへ新しいストレージを供給するには、コントローラが必要になる。NAND不足が長引くほど、SSD市場の痛みは増すが、Silicon Motionのようなコントローラ企業には、単価、採用範囲、顧客構成を変える余地が広がる。
次の確認点は、NANDメーカーの増産時期そのものより、2027年の配分がどこに固定されるかだ。コンシューマアプリケーションへ十分な容量が戻らなければ、PC向けSSDは容量で妥協し、性能世代で訴求し、モジュールメーカーが空いた需要を拾う市場になる。そのとき、SSDの買い手は価格だけでなく、同じ価格に含まれるNAND容量とコントローラ世代を見比べる必要がある。