DDR5一本で進んできた自作PC市場に、DDR4が戻ってきた。Computex 2026を取材したTom's Hardwareによれば、マザーボード各社とメモリモジュール各社がDDR4への需要増をいずれも認めており、DDR4対応製品の生産を増やす方向で動いているという。

だがこれは、DDR4の性能が再評価されたわけではない。背景にあるのは、AIデータセンター需要によるDRAMとNANDの供給逼迫だ。DDR5前提の新世代PCの入口価格が跳ね上がり、各社が「買える価格帯」を守るために旧世代に逃げ込んでいるというのが実情に近い。

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何が起きているのか

問題の本質はメモリ規格の優劣ではなく、予算の振り方にある。DDR5は帯域幅でDDR4を上回るし、AM5やLGA 1851のような最新プラットフォームでは事実上必須だ。

ただ、メモリの値がCPUやGPU選びまで縛り始めると、「速いRAMに金をかける」のが常に正解とは限らなくなる。PCMagの2026年5月24日時点の購入ガイドは、64GBのDDR5キット価格がミドルレンジCPUのそれを上回る水準になったと指摘し、同じCorsair32GBキットでDDR4が262.99ドル、DDR5が439.99ドルだった具体例も示している。

浮いた180ドル弱がGPUやCPUのワンランク上に行くなら、DDR4で組んだ方がゲームや普段使いでは体感差が出やすい場面はあってもおかしくない。

「終売」扱いからの復活

Tom's Hardwareの報道で注目すべきは、DDR4対応製品の再投入を「小売の在庫事情」ではなく「生産側の戦略判断」として描いている点だろう。

取材に応じたマザーボードメーカーは6社以上、メモリモジュール会社も複数にのぼり、いずれもDDR4需要の増大と、それに合わせた計画変更を認めている。少なくとも2社のベンダーは2026年後半から2027年にかけてDDR4対応マザーの生産を増やす考えを示し、別の企業も年内にDDR4対応製品の刷新や再リリースを予定しているという。

そう目立つ話になるのも、現状が普通ではないからだ。DDR4対応マザーの多くはすでにEOL、つまり終売あるいは終売準備に入っており、製造ラインは次世代製品へ移っていた。旧世代基板の再投入は通常なら後回しにされる案件で、それが今回優先度を持ち上がっているのは、最新世代前提のPC市場が価格面で詰まり始めているからにほかならない。

しかもボード自体の売れ行きも厳しい。Tom's Hardwareの別記事によれば、一部ベンダーのマザーボード販売は最大37%まで落ち込んでいる。DDR5価格の高騰はメモリ会社の売上だけの話ではなく、CPU・マザーボード・GPUを含む部品市場全体の入口を狭めている。

DDR4基板の増産は、最新規格への移行を止める動きというより、価格高騰で買い替えを諦めた層を旧世代プラットフォームで拾い直す動きだ。

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DDR4は作りやすいが、かつての「良いDDR4」ではない

DDR4が再び選ばれる理由のひとつに、パッケージの単純さがある。Tom's Hardwareは現在の供給制約のひとつとして、DDR5モジュールに必要なPMIC、つまり電源管理IC一体型の高度なパッケージング工程を挙げている。

DDR5ではPMICがモジュール側に載る設計のため、製造負荷が重くなる。DDR4はそこがシンプルなぶん、モジュールとしての組立・流通の負荷が相対的に軽い。

ただし、ウェハーの配分という天井は残る。あるメモリメーカーはDDR4への切り替え制約として、ウェハー割り当ての問題をTom's Hardwareに明かしている。AI向けHBMやデータセンター向けDRAMが稼げる品として優先されるかぎり、旧世代DRAMにどれだけのウェハーを回すかは、経営判断として単純ではない。

S&P Global Market IntelligenceとVisible Alphaの2026年1月共同調査も、SamsungSK hynix、MicronがAIデータセンター向けHBMへ生産能力を寄せることで従来型DRAMの供給が締まり、価格が上がっている構造を分析している。

性能面の天井もある。Tom's Hardwareによれば、オーバークロック愛好家に知られたSamsung B-dieのような高性能DDR4ダイはすでに生産されておらず、復活してくるDDR4キットもDDR4-3600程度に収まる見通しだという。

つまり今回戻ってくるDDR4は、旧世代の黄金期を再現するものではない。狙いはAM4やLGA 1700を使った現実的な構成を市場に戻し、DDR5高騰を避けたい購入者に選択肢を渡すことにある。

AMDとIntelの反応:CPUロードマップもメモリ価格から逃れられない

この流れを一番はっきり示したのが、AMDのComputex 2026発表だろう。Socket AM4の10周年に合わせて投入されたのがRyzen 7 5800X3D 10th Anniversary Editionで、発売は2026年6月25日、希望小売価格は349ドル。いうまでもなくAM4世代のCPUであり、DDR4構成を前提にできる。

AMDは同じくAM5向けのRyzen 7 7700X3D329ドルで発表し、AM5プラットフォームのサポートを2029年まで延ばすことも明らかにしている。AMDが出した答えは「DDR4へ全面回帰」ではなく、AM4とAM5の二本立てで層を分けるという形だ。

Intelも旧メモリ対応を残す方針を明確にしている。Tom's HardwareがComputex 2026会場で取材したClient Computing GroupシニアディレクターのNish Neelalojanan氏は、Raptor Lakeについて「end-of-lifeにしていない」と語った。

DDR4対応製品が市場に出回り、なおかつ安価であるかぎり、古いメモリを扱える製品ラインは維持する、というのがIntelの姿勢だ。最新世代のArrow Lake、つまりCore UltraはLGA 1851でDDR5構成を前提とするが、LGA 1700世代のRaptor LakeおよびRaptor Lake RefreshにはDDR4対応マザーを組み合わせられる。

Neelalojanan氏は同じ取材の中で、メモリ・ストレージの大容量化によってCPU単体の価格が見えにくくなっている現状にも触れた。CPUメーカーとしては新世代を推すだけでは済まず、実際にユーザーが払える総額に合わせて、旧ソケット・低容量構成・既存メモリの活用まで含めた選択肢を残しておく必要がある、というのが現場の認識だろう。

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「DDR4は正解か」は使い方次第

ユーザー側から見れば、DDR4回帰は単なる節約Tipsではない。DDR4を選ぶということは、対応するCPUとマザーの世代を受け入れるということだ。AMDならAM4、IntelならLGA 1700が主戦場になる。AM5やLGA 1851の最新世代に行くなら、DDR4メモリは物理的に使えない。

長期的なアップグレード性や最新I/O、将来のCPU交換まで見据えるなら、DDR5構成の価値は引き続きある。

ゲームや一般用途では、メモリ帯域が常にボトルネックになるわけでもない。PCMagも「同容量ならDDR4とDDR5の差は帯域であり、多くの用途ではCPU・GPU・ストレージ・ネットワーク・アプリ側が先に制約になる」と説明している。

高リフレッシュレートの競技タイトルや7-Zip、WinRARのようにメモリ帯域を食う処理ではDDR5の旨味が出やすいが、予算に上限がある自作では、DDR4で浮いた200ドル前後をGPUに回した方が体感性能が伸びる構成は普通にありえる。

この判断は2026年の自作において特に重い。DDR5メモリとSSDが同時に高騰すると、これまで「迷わず最新プラットフォーム」で通せた価格帯でも、CPUやGPUを一段落とす必要が出てくる。

DDR4対応マザーとAM4またはLGA 1700のCPUを組み合わせる構成は、最新規格の見栄えは確かに劣る。ただ、総額の中でゲーム性能や制作性能を守るための現実解として十分機能する。

一方で、AM5でCPUを長く差し替えていく計画がある人や、メモリ帯域をがっつり使うワークロードの人にとっては、DDR4回帰を理由に最新プラットフォームを諦める必要もまたない。

2027年まで不足が続くなら

DDR4対応製品の増産がどこまで効くかは、2026年後半から2027年にかけての値動きと在庫次第だ。Tom's HardwareのComputex取材では、取材相手のほぼ全員が「DRAMとNANDの不足は2027年いっぱい続く」と見ている。

S&P Globalの分析も、AI向けHBMの収益性が従来型DRAMを大きく上回るため、主要メモリメーカーがAI需要を優先しやすい構造が続くと示している。Visible Alphaのコンセンサス推計では、2026年の従来型DRAMの収益単価はSamsungで前年比116%、SK hynixで78%、Micronで54%の上昇が見込まれている。

こうなると、DDR4再投入は単なる在庫整理の話ではない。PC市場がAIデータセンター投資に押し出される形で起きた結果であり、DDR5の供給問題が解消しない間のブリッジとして各社が動いている。

DDR5の逼迫が続くかぎり、マザー側には「買える価格帯の板」が要るし、CPU側には既存ソケットを延命する理由が生まれる。メモリメーカーにとっても、DDR4は先端品ほど儲からないが、需要が戻ってくるならモジュール会社と販路を支える収益の柱のひとつにはなる。

残るのは、現時点ではっきりしない部分がほとんどだ。DDR4対応マザーがどの地域・どの価格帯で実際に戻ってくるのか。DDR4メモリの相対的な安さがいつまで維持されるのか。そしてDDR5の価格が下がってくる前に、AM5やLGA 1851の普及ペースがどこまで落ちるのか。

DDR4はPCの未来ではない。けれど2026年のメモリ危機のなかで、最新プラットフォームの価格高騰をいったん受け止める緩衝材にはなっている。

AI需要がPC部品の供給順位を塗り替えたことで、ユーザーが自分に問うべき問いも「最新か旧世代か」から「限られた予算をどの性能差に使うか」へ移った。それだけは、2026年の自作市場について言えることのひとつだろう。