世界最大の電子機器受託製造企業として知られるFoxconnが、NVIDIAの次世代AI用GPUであるBlackwellシリーズの製造施設を建設すると発表した。この動きは、急速に成長を続けるAI産業に大きな影響を与える可能性がある。
Foxconnの新たな挑戦
Foxconnは、これまでAppleのiPhoneの主要サプライヤーとして知られてきたが、今回の発表はAI産業への本格的な参入を示すものだ。Foxconnの上級副社長であるBenjamin Ting氏は、台北で開催された同社の年次技術デーにおいて、「我々は地球上最大のGB200生産施設を建設している」と述べた。
GB200は、NVIDIAの次世代コンピューティングプラットフォームであるBlackwellファミリーの重要なコンポーネントである。この施設は、メキシコに建設されることが明らかになっており、Foxconnの会長であるYoung Liu氏は、その生産能力が「非常に、非常に巨大」になると述べている。
NVIDIAのBlackwellプラットフォームとGB200スーパーチップ
NVIDIAのBlackwellプラットフォームは、AI模型の学習や推論など、高度な計算処理を必要とするタスクに特化して設計されている。その中核を成すGB200スーパーチップは、以下の特徴を持つ:
- 2つのBlackwell B200 GPUと1つのGrace CPUを組み合わせた構成
- 各GPUに192GBのHBM3Eメモリを搭載
- CPUは512GBのLPDDR5メモリに接続
- 合計896GBの統合メモリを提供
- NVLINKによるGPUとCPU間の高速通信
さらに、GB200 NVL72プラットフォームを使用することで、最大512個のGPUを単一のNVLINKドメイン内でスケールアップすることが可能となり、大規模なAIトレーニングや推論タスクのパフォーマンスを大幅に向上させることができる。
AI産業への影響と需要の高まり
Foxconnのこの動きは、AI産業における計算能力の需要の高まりを如実に示している。NVIDIAの副社長であるDeepu Talla氏が同席する中、Ting氏は「需要は途方もなく大きい」と述語した。実際に、Microsoftをはじめとする多くの企業がすでにBlackwellプラットフォームの先行注文を行っている。
AI企業がより大規模で複雑なモデルを開発し、既存のモデルを運用するにつれて、高性能なGPUへの需要は今後さらに増加すると予想される。Foxconnの新施設は、この需要に応えるための重要な役割を果たすことになるだろう。
Foxconnの会長であるYoung Liu氏は、同社のサプライチェーンがAI革命に対応する準備ができていると述べている。特に、GB200サーバーのインフラストラクチャに不可欠な「高度な液冷および放熱技術」を含む製造能力を有していることを強調した。
さらに、FoxconnはNVIDIAと協力して台湾最大のスーパーコンピュータ「Hon Hai Kaohsiung Super Computing Center」の建設も進めている。このプロジェクトは、Blackwellアーキテクチャを基盤とし、64ラックと4,608個のTensor Core GPUを備えたGB200 NVL72プラットフォームを特徴としている。完成時の総性能は90エクサフロップス以上に達する見込みだ。
Foxconnの多角化戦略
Foxconnは、AppleのiPhone組み立てに代表される消費者向け電子機器の製造から、より広範な技術分野への多角化を図っている。AI分野への進出に加え、同社は電気自動車(EV)の製造請負やFoxtronブランドでの車両製造にも力を入れている。
自動車市場における激しい競争と需要の鈍化について質問されたLiu氏は、「それは正しい方向性であり、我々はそれに向けて引き続き努力する」と述べ、EVへの取り組みに対するコミットメントを示した。また、EVにおいては「エンジンの障壁」がなくなったことから、自動車メーカーは「もはや車全体を自社で作る必要がない」と指摘し、Foxconnの強みを活かせる分野であることを示唆した。
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