Android 16の正式リリースに先立ち、Googleは開発者向けプレビューの第2弾(Android 16 DP2)を公開した。新バージョンでは、より洗練されたハプティックフィードバック機能や、写真選択ツールのクラウド検索機能など、複数の新機能が追加されている。
主要な新機能と改善点
Android 16 DP2において、Googleは開発者とエンドユーザーの双方に恩恵をもたらす重要な機能拡張を実施した。最も注目すべき改善点は、ハプティックフィードバックの大幅な進化だ。従来のAndroidでは振動の制御は限定的であったが、新たに導入されたAPIによって、振幅と周波数の曲線を詳細に定義できるようになった。この改善により、開発者は端末固有の機能の違いを意識することなく、より繊細で豊かな触覚フィードバックを実装できるようになる。
写真選択ツールの機能強化も特筆に値する。新たに追加されるクラウド検索機能により、ユーザーはローカルストレージだけでなく、クラウド上に保存された画像やビデオにもシームレスにアクセスできるようになる。この機能は、ユーザーのプライバシーを保護しながら、アプリケーションが必要な画像データにアクセスすることを可能にする。現時点ではGoogle Photosのみがクラウドメディアプロバイダーとしてサポートされているが、APIは他のクラウドフォトサービスにも開放される予定だ。
Health Connectプラットフォームには、新たに「ACTIVITY_INTENSITY」データタイプが実装された。この機能は世界保健機関(WHO)のガイドラインに準拠しており、運動強度を「中程度」または「激しい」に分類することができる。各記録には開始時刻、終了時刻、および運動強度の情報が含まれ、ヘルスケアアプリケーションはこれらのデータを活用して、より正確な健康管理機能を提供できるようになる。
予測バックジェスチャーの機能も強化された。新しいAPIにより、アプリケーションはバックジェスチャーによるナビゲーション時に、システムレベルのアニメーションをより自然に制御できるようになった。具体的には、PRIORITY_SYSTEM_NAVIGATION_OBSERVERの実装により、通常のバックナビゲーションフローを妨げることなく、システムによるバック操作を検知し、適切なアニメーションを表示することが可能になった。
アクセシビリティの面では、画面読み上げソフトウェアのユーザー体験を改善するための変更が実施された。従来のアクセシビリティアナウンスメントは非推奨となり、代わりにより一貫性のある新しいアプローチが導入された。これにより、TalkBackなどのスクリーンリーダーを使用するユーザーは、より自然で分かりやすい形で情報を受け取ることができるようになる。
システムレベルの最適化
Android 16 DP2では、システムの基盤となる部分でも大幅な改善が実施されている。特に注目すべきは、Android 15で導入された適応型リフレッシュレート(ARR)機能の拡張だ。この機能強化により、デバイスのディスプレイリフレッシュレートをコンテンツのフレームレートに合わせて適応的に調整できるようになった。新たに導入されたhasArrSupport()およびgetSuggestedFrameRate()メソッドにより、開発者はARR機能をより効率的に活用できるようになる。これは単なる表示の改善だけでなく、モード切り替えに起因する画面のちらつき(ジャンク)を防ぎながら、電力消費を抑制することにも貢献する。
Wi-Fi位置測定機能においても重要な進展が見られる。Wi-Fi 6(802.11az)規格に対応したデバイスでは、新たにAES-256暗号化とMITM(Man-in-the-Middle)攻撃に対する保護機能が実装された。この強化により、1メートル未満の精度での位置測定が可能になりながら、同時にセキュリティも確保される。これは特に、ノートPCや車両のドアロック解除といった近接性を利用したユースケースにおいて重要な意味を持つ。従来の信号強度に基づく測位と比較して、電波の往復時間を利用する新方式は格段に高い精度を実現する。
ジョブスケジューラーの実行最適化も見逃せない改善点だろう。システムは、アプリのスタンバイバケットの状態に応じて実行時間のクォータを動的に調整するようになった。アクティブなバケットに属するアプリケーションには寛容な実行時間が割り当てられる一方、バックグラウンドでのジョブ実行には適切な制限が課される。また、フォアグラウンドサービスと同時に実行されるジョブにも実行時間のクォータが適用されるようになった。これらの変更は、システム全体のパフォーマンスとバッテリー効率の向上に寄与する。
システムトリガープロファイリング機能も新たに追加された。ProfilingManagerクラスの拡張により、アプリの起動時やANR(Application Not Responding)などの課題のあるシナリオでのトレース取得が可能になった。開発者はProfilingManager#addProfilingTriggers()を使用して、これらのフローに関する情報を受け取ることができる。この機能は、アプリケーションのパフォーマンス最適化において重要なツールとなる。
さらに、ApplicationStartInfoクラスにはgetStartComponent()メソッドが追加され、プロセス開始のトリガーとなったコンポーネントタイプを識別できるようになった。この情報は、アプリケーションの起動フローを最適化する上で貴重な診断データとなる。
これらのシステムレベルの最適化は、個々の改善点としては技術的に見えるかもしれないが、総合的にはエンドユーザーの体験品質を大きく向上させる可能性を秘めている。特に、バッテリー寿命の延長、アプリケーションの応答性向上、そしてセキュリティの強化という、現代のモバイルデバイスにおいて最も重要な課題に対する包括的な解決策となることが期待される。
Android 16 DP2 対応デバイス
Pixelデバイスに Android 16 DP2のシステムイメージは以下のデバイス向けに用意されている:
- Pixel 9 Pro Fold: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 9 Pro XL: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 9 Pro: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 9: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 8a: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 8 Pro: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 8: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel Fold: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel Tablet: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 7a: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 7 Pro: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 7: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 6a: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 6 Pro: BP21 — Factory Image — OTA
- Pixel 6: BP21 — Factory Image — OTA
ただし、Android 16 DP2(BP21.241121.009)は、まだあくまでも“開発者向け”の提供であり、日常的な利用または消費者向けの使用は想定されていない点には注意が必要だ。なお、 Android 16 Beta Programでは来月から利用可能となる。
Xenospectrum’s Take
Android 16 DP2は、単なる機能追加にとどまらない戦略的な進化を見せている。特にハプティックフィードバックの強化は、次世代のモバイルインターフェースを見据えた布石だろう。また、Health Connectの拡張は、Googleがヘルスケア分野での存在感を強めようとする意図の表れと見ることができる。
ただし、気になる点もある。写真選択ツールのクラウド検索は便利な機能だが、現時点でGoogle Photos以外のサポートが不透明なのは、エコシステムの健全性という観点から若干の懸念材料だ。また、2025年にはAPI更新を2回実施する新しいリリースサイクルを導入するとのことだが、これが開発者コミュニティにどのような影響を与えるかは注視が必要だろう。
Sources
- Android Developers Blog: The Second Developer Preview of Android 16
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