中国は米国からの輸出規制が続く中、欧米の技術に頼らず自国のリソースのみで最先端の半導体を開発しようとしている。
その先頭に立つのがHuaweiのような中国政府の支援を受けているハイテク大手だ。Nikkei Asiaによると、同社は120億元(2,500億円)もの多額の投資を行い、上海に半導体装置の研究開発センターを開設した。この施設では、最先端チップの製造に必須となる、リソグラフィーマシンの開発・研究を行っているようだが、そのためにHuaweiは海外の半導体装置メーカーで働いていた経歴を持つエンジニアを破格の待遇で雇い入れているという。
破格の待遇と地獄のような環境
Huaweiの新たな研究開発センターは、上海西部の青浦地区に位置し、主要チップ開発センターやHuaweiのチップ設計部門であるHiSilicon Technologiesの新本社もある広大なキャンパス内に開設されるようだ。同キャンパスの面積は約224平方キロメートルとなり、キャンパス内のビル間を移動するための電車が設置される。上海市青浦区人民政府によると、完成すれば3万5000人以上のハイテク労働者を収容できるようになるという。
米国がHuaweiを初めとする中国共産党系企業に対する輸出規制を強化する中、Huaweiはこの新たな研究開発センターを通じてチップ開発分野での自立を目指している。そのために必須となるリソグラフィーマシンの開発が、この研究開発施設の最重要課題となっている。現在、リソグラフィーマシンの製造は、オランダのASMLと日本のキヤノン、Nikonの3社のみが行っているが、いずれも米国の輸出規制に則り、中国に対するリソグラフィーマシンの輸出をストップしている状況だ。
Huaweiは、自社でリソグラフィーマシンの製造を行うために優秀な人材を誘致している。このために、地元のチップメーカーの2倍の給与を提示するなど、魅力的な報酬で引き込もうとしている。
Huaweiは実際に、ASML、Applied Materials、Lam Researchなどで以前働いていたエンジニアを数名採用したと言われている。TSMC、Intel、Micronで15年以上の経験を持つベテラン技術者も、最近採用されたという。しかし、Huaweiの報酬は魅力的だが、労働環境は過酷であるとあるチップ・エンジニアは次のように述べていると報じられている。
「彼らとの仕事は残酷だ。週6日、午前9時から午後9時まで働くという意味の996ではない。週7日、真夜中から真夜中まで。休日はまったくない。契約期間は3年だが、大半の人は更新まで生き残ることはできない」。
Huaweiは米国の取り締まりに積極的に対応しているが、独立性を見出そうとするあまり、スタッフを酷使しているのかもしれない。だがスタッフへのプレッシャーが大きすぎるとすれば、Huaweiは有能な人材をすぐに競合他社に奪われ、最大の敵になるかもしれない。Huaweiが今後のチップ技術でSMICと協力し続けるかどうかも不透明だ。
たまたまだが、中国最大の半導体メーカーSMICはHuaweiの次期Kirinチップセットのために5nmの生産ラインを立ち上げていると伝えられており、製品化は今年後半に開始される可能性がある。SMICはまた、既存のDUV装置で3nmウェハーの量産を計画しているため、社内に研究開発チームを結成したと言われている。当然ながら、SMICは、Huaweiが自社工場をフル稼働させることができるようになるまで、当面の間、手を緩めることはないだろう。
Sources
- Nikkei Asia: Huawei building vast chip equipment R&D center in Shanghai
- Data Center Dynamics: Huawei wants to develop lithography machinery at new Shanghai chip R&D campus
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