NVIDIAのGeForce RTX 4000シリーズGPUで、安価なサーマルペーストの使用により深刻な温度問題が発生していることが明らかになった。Igor’s Labの調査によると、一部のAIB(Add-in Board)パートナーが使用している低品質なサーマルペーストが数ヶ月で劣化してしまい、GPUのホットスポット温度が100度を超える事態を引き起こしているという。この問題は、高性能グラフィックスカードの寿命と性能に重大な影響を与える可能性があり、PC自作派やゲーマーの間で大きな懸念を広げそうだ。
安価なサーマルペーストがもたらす深刻な影響
Igor’s LabのIgor Wallossek氏は、読者からRTX 4000シリーズグラフィックスボードの冷却性能が低いという報告を受け始めたことが今回の調査の動機になっているという。 RTX 4080 GallardoとRTX 4080 TUF Gamingを取り上げた2つの記事で、彼は粗悪なサーマルペーストが問題の唯一の原因であることを発見した。 サーマルペーストを塗り直したところすぐに問題が解決し、温度も正常に戻った。
Wallossek氏はこれを受けてサーマルペーストの詳細な調査を実行した。調査では、問題のサーマルペーストが初期段階では優れた性能を示すものの、短期間で急速に劣化することが判明した。具体的には、Manli RTX 4080 Gallardoから採取したサーマルペーストを分析したところ、以下の問題点が明らかになった:
- 性能の急激な低下:薄い層では高性能な熱伝導性を示すが、厚みが増すと急速に性能が低下する。
- 粗大な粒子:最大16 µmの大きなアルミニウム酸化物粒子が含まれており、これが短期的には熱伝導性を向上させるが、長期的にはペーストの劣化を促進する。
- 不安定な組成:油性の成分が迅速に乾燥し、大きな粒子の間隙を通じて小さな粒子や油分が流出しやすい構造となっている。
- 低品質な材料:主にアルミニウム酸化物、シリコンオイル、酸化亜鉛から構成される単純な組成で、高品質なサーマルペーストに見られる炭素系材料が欠如している。
Wallossek氏はペーストの成分について次のように結論づけた: 「粗く粉砕された大量の酸化アルミニウム(Al2O3)と大量のシリコーンオイル(ケイ素、水素、酸素)に加えて、安価な充填材として、より細かい酸化亜鉛(ZnO)もある。 より洗練されたシリコーン(側鎖)を示唆するような炭素は見当たらない。 だから、本当に最もシンプルなオイルなんだ」。
この問題は特定のメーカーに限らず、NVIDIAの多くのAIBパートナーが同じサプライヤーから調達したサーマルペーストを使用していることから、事態はより複雑かつ広範囲に及ぶ可能性が考えられる。結果として、ユーザーは数ヶ月後に突然GPUの温度が上昇し、ファン速度が100%近くまで上がるという症状に直面することになるのだ。
対策としては、グラフィックボードのサーマルペーストを高品質なものに交換することが効果的だが、一般ユーザーにとってはGPUの分解が必要となるため、実行のハードルは高い。
このテストされたサーマルペーストが、ハイエンドの NVIDIA GPU のみに影響するのか、それともすべての AIB GPU メーカーに及ぶのかは未確認だ。この問題は、ハイエンドGPU市場における競争激化と原価削減の圧力が、製品品質に悪影響を及ぼしている可能性を示唆するものであり、NVIDIAとそのパートナー企業は、長期的な製品の信頼性と顧客満足度を確保するため、この問題に対する迅速な対応が求められる。
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