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NVIDIA、2024年出荷のGPU内に10億個のRISC-Vコアを搭載していることが判明

Y Kobayashi

2024年10月26日

仮想通貨マイニングやAIトレーニングで注目を集めるNVIDIAのGPUだが、その内部では静かな革命が進行していた。同社は2024年までに約10億個のRISC-Vコアを出荷する見通しであることを、RISC-Vサミットで明らかにした。実は2015年から、同社のGPUの心臓部には、オープンアーキテクチャであるRISC-Vベースのマイクロコントローラーが採用されていたのだ。

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独自コントローラーからRISC-Vへの転換

GPUは一見すると単純な演算装置に見えるかもしれないが、実際には電力管理、ディスプレイ制御、セキュリティなど、多岐にわたる機能を持つ複雑なシステムとして設計されている。これらの制御には従来、NVIDIAが独自開発した「Falcon」マイクロコントローラーが使用されてきた。しかし2015年、同社はこれらのコントローラーをRISC-Vベースの設計へと置き換える大きな決断を下した。現在では、ほぼすべてのマイクロコントローラーがRISC-V設計となっているのだ。

現在のNVIDIA製GPUには、製品の複雑さに応じて10個から40個のRISC-Vコアが搭載されている。これらのコアは段階的な進化を遂げており、用途に応じて異なる特性を持つ設計が採用されている。

基本的な制御タスクには、シンプルなインオーダー実行方式を採用したNV-RISCV32が使用されている。より複雑な処理が必要な場合には、高性能なアウトオブオーダー実行方式を採用したNV-RISCV64が採用される。さらに並列処理性能が求められる場面では、1024ビットのベクター演算機能を追加したNV-RVVが使用されている。

GPU System Processorが示す可能性

NVIDIAによるRISC-V実装の中で最も注目すべき成果が、「GPU System Processor(GSP)」である。Turingアーキテクチャ以降のGPUに搭載されているGSPは、従来CPUが担っていたカーネルドライバーの機能を受け持つことで、システム全体の効率を大きく向上させている。

特にクラウド環境において、GSPの価値は極めて高い。複数のユーザーが同一のGPUリソースを共有する必要があるクラウド環境では、GSPのカーネル ドライバー機能をオフロードし、CPU 使用率をさらに削減して、クラウド環境で複数のリモート ユーザーが同じGPUユニットを共有できるようにする効率的なリソース管理が不可欠となっているのだ。

また、NVIDIAはRISC-Vの基本仕様をそのまま使用するのではなく、20種類を超える独自の拡張機能を開発している。これらの拡張機能により、GPUの性能と機能性は大きく向上している。パフォーマンスの最適化やセキュリティ機能の強化、特殊機能の実装など、NVIDIAはRISC-Vのオープン性を活かしながら、独自の価値を付加することに成功している。

2024年に予定される10億個というRISC-Vコアの出荷数は、決して誇張された数字ではない。Jon Peddie Researchによると、NVIDIAは2023年だけでデスクトップ向けに3,100万個のGPUを出荷している。これに加え、ノートPC向けGPU、データセンター向け製品、各種SoC製品を考慮すると、10億個という数字は十分に現実的な目標といえる。

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Xenospectrum’s Take

NVIDIAによるRISC-Vの大規模採用は、半導体業界にとって大きな意味を持つ。2010年にカリフォルニア大学バークレー校で始まったプロジェクトは、いまや世界最大のGPUメーカーの中核技術として採用されるまでに成長しているのだ。この成功は、オープンアーキテクチャが最先端の商用製品において実用レベルの成熟度に達したことを証明している。

さらに注目すべきは、NVIDIAが示した新しいイノベーションモデルである。同社はRISC-Vのオープン性を最大限に活用しながら、多数の独自拡張機能を開発することで差別化を図っている。この標準化と差別化の絶妙なバランスは、半導体業界における新しい技術開発のあり方を示唆している。

2024年に予定される10億個のコア出荷は、オープンアーキテクチャとプロプライエタリ技術の共生による、新しい産業発展のモデルケースとなるだろう。この取り組みは、半導体業界全体のイノベーションを加速させる触媒となる可能性を秘めている。


Sources

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