IntelのデスクトップCPUロードマップが大きく動き出した。次世代「Nova Lake」(Core Ultra 400シリーズ)の詳細なSKUリストが複数のリーカーから流出し、最上位モデルは52コア・288MBキャッシュという現行Arrow Lakeの常識を覆すスペックを備えることが判明した。

デュアルコンピュートタイルという新たなチップレット構成で、かつてHEDT(ハイエンドデスクトップ)プラットフォームが担っていた領域をメインストリームに取り込む設計だ。Intel 18Aノードの採用とLGA 1954ソケットへの移行を伴い、同社にとって数年ぶりの大型プラットフォーム刷新となる。

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デュアルコンピュートタイルが生む52コアの構造

Nova Lake-S(デスクトップ版)は、2枚のコンピュートタイルを1パッケージに収める構成を採る。各タイルには最大8基のP-core(性能コア、アーキテクチャ名Coyote Cove)と16基のE-core(効率コア、同Arctic Wolf)を搭載でき、2枚で16P+32Eの48コアを実現する。SoCタイル上にはさらに4基のLP E-core(低消費電力効率コア)が常駐し、合計52コアに達する。

Arrow Lakeの最大構成が24コア(8P+16E)だったことを踏まえると、コア数は一気に2倍以上だ。単一ダイの肥大化を避けつつ歩留まりを確保するチップレット設計の合理性が、このスケーリングを支えている。AMDはRyzen Threadripperでチップレット構造を先行導入してきたが、Nova Lakeはメインストリーム向けの新ソケットLGA 1954上でこれを展開する。ワークステーション用の専用プラットフォームを介さず、同一ソケットでコア数をスケールさせる構想だ。

コンピュートタイルの枚数が製品階層を決定する。デュアルタイル構成は最上位の52コア(P3DX)と44コア(P2DX)のみで、いずれもTDP 175W。シングルタイル構成のCore Ultra 9/7/5/3は28コアから6コアまでをカバーし、TDP 35W〜125Wに収まる。

288MB bLLC:AMD 3D V-Cacheの4.5倍が狙う領域

キャッシュ設計でもNova Lakeは攻めの姿勢を見せる。「bLLC」(big Last Level Cache)と呼ばれる大容量ラストレベルキャッシュは、シングルタイル構成で144MB、デュアルタイルでは288MBに達するとリーカーは伝えている。AMDがRyzen 7 9800X3Dで提供する3D V-Cacheは64MBであり、数字上は4.5倍の開きがある。

両社のキャッシュ技術は設計の出発点が異なる。AMDの3D V-CacheはL3キャッシュを垂直積層してゲーミング性能を引き上げる手法で、限られた容量を高いヒット率で活かす方向に最適化されている。IntelのbLLCは容量の拡大に振り切り、大容量データセットを扱うプロダクティビティ用途やAI推論のローカル処理をターゲットとする。PCWorldが記事タイトルで「Productivity powerhouse」と評した背景もここにある。

P-coreのアーキテクチャもCoyote Coveへ刷新され、Arrow LakeのLion CoveからIPC(命令あたりの処理性能)が15%向上するとRedGamingTechは報じている。この数値はIntelの命令セット拡張APXの恩恵を含んでおらず、実アプリケーションでの伸びはさらに上振れする余地がある。52コアのスレッド並列性とIPC向上が掛け合わされれば、マルチスレッド性能は現行世代から大幅な飛躍が見込める。

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6コアから52コアまで、13 SKUが映すセグメントの再編

リーカーJaykihnがVideoCardz経由で公開した予備的SKUリストには、13モデルが並ぶ。デュアルタイルのフラグシップ2モデル(P3DX/52コア、P2DX/44コア)はTDP 175Wで、Notebookcheckは価格が$1,200超になる可能性を指摘している。Arrow Lake世代のCore Ultra 9 285KがMSRP $589で発売されたことを考えると、価格帯は倍以上の跳躍だ。

シングルタイルの陣容は幅広い。Core Ultra 9は28コア(8P+16E+4LP)で125W、Core Ultra 7は24コア版と16コア版の2バリアントを展開する。Core Ultra 5は22コアから8コアまで3モデルがあり、最廉価のCore Ultra 3は6コア(2P+4LP)でTDP 35〜65Wだ。全モデルでSoCタイル上の4基LP E-coreが共通搭載される。

bLLCキャッシュ搭載バリアントがシングルタイル構成にも存在するとの情報がある。ゲーミング特化のAMD X3D対抗モデルとして、コア数よりキャッシュ容量で勝負する選択肢をIntelが準備している構図だ。かつてX299やTRXプラットフォームでしか手に入らなかった40コア超の処理能力がメインストリームソケットに降りてきたことで、HEDTという製品カテゴリ自体の存続が問われる局面に入った。

LGA 1954とIntel 18Aが賭ける長期戦

プラットフォームの刷新はCPUコアの外側にも及ぶ。新ソケットLGA 1954はフォワード互換を掲げ、将来世代のIntel CPUも同じソケットで動作するとされている。DDR5-8000MT/sのネイティブサポートに加えてECC対応CUDIMM/CSODIMMにも対応し、PCIe 5.0は24レーンを確保した。接続性ではThunderbolt 5を2ポート(各80Gb/s)統合し、Wi-Fi 7にも対応する。

統合GPUにはXe3アーキテクチャを採用し、2基のXeコアで前世代比77%の性能向上が見込まれている。NPU 6(ニューラルプロセッシングユニット)も内蔵し、AI処理のオンデバイス実行基盤を整える。Core Ultra 5の1バリアントのみGPU非搭載モデルが計画されているとの情報もあり、ディスクリートGPU前提のユーザー向け選択肢も用意される見通しだ。

製造にはIntel 18Aノードを投入する。RibbonFET(ゲートオールアラウンド型トランジスタ)とPowerVia(バックサイド電力供給)を組み合わせた同社最先端のプロセス技術で、ノートPC向けPanther Lakeですでに量産検証を終えている。発売目標は2026年末(Q4)だが、全SKUが小売市場に出揃うのは2027年にずれ込む可能性も指摘されている。同時期にAMDがZen 6ベースの次世代Ryzenを投入する見込みであり、52コアのメインストリームCPUとAMDの次世代チップレット設計が正面からぶつかる2026年後半は、ここ数年で最も激しいデスクトップCPU世代交代の舞台になりそうだ。


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