半導体大手のIntelが、創業56年で最大の経営危機に直面している。2024年第2四半期に16億1000万ドル(約2400億円)の純損失を計上し、経営再建に向けて大胆な施策を検討していることが明らかになった。
Intelの経営危機と対応策
Bloombergの報道によると、Intelは長年の取引先である投資銀行のGoldman SachsとMorgan Stanleyと協議を行い、ファウンドリー事業の分割や一部拡張計画の見直しなど、様々な選択肢を模索しているという。
Intelの業績悪化は深刻だ。2024年第2四半期の決算では、売上高が前年同期比で減少したにもかかわらず、事業運営の収益性が大幅に低下し、16億1000万ドルの赤字に陥った。この結果を受け、Pat Gelsinger CEOは損失を抑制し、収益性を回復させるための様々な方策を検討している。
特に注目されているのが、ファウンドリー事業の扱いだ。Intelのファウンドリー部門は、米国や欧州での大規模な拡張計画により、多額の資金を必要としている。しかし、2024年第2四半期の決算では、同部門の営業利益率がマイナス65.5%を記録するなど、収益性の低さが際立っている。
このため、Intelは製品設計部門とファウンドリー部門の分離、あるいはファウンドリー事業全体の売却までも視野に入れており、また、事業の中核に直接関係しない一部の拡張計画を中止することも検討されている。さらに、コスト削減策として約15,000人の従業員削減と資本支出の大幅な縮小も発表された。
Intelのファウンドリー事業は、Gelsinger CEOが掲げる復活計画の要となる部門だった。同CEOは、この事業を通じてIntelの半導体製造業界での地位を回復し、最終的には台湾積体電路製造(TSMC)のようなファウンドリー業界のリーダーと競争することを目指していた。
しかし、現状ではIntelのファウンドリー事業の最大の顧客は依然としてIntel自身であり、外部顧客の獲得が進んでいない。このため、ファウンドリー事業の財務状況は厳しく、最新の四半期では28億ドルの営業損失を計上している。
Gelsinger CEOは9月の取締役会で様々な選択肢を提示する予定だが、業界関係者の間では、Intelがすぐに劇的な措置を取る可能性は低いとの見方が強い。むしろ、Brookfield Infrastructure PartnersやApollo Global Managementとのプロジェクトファイナンス契約のような、より穏健な対応を取る可能性が高いとされている。
Intel株価は年初来で60%下落し、フィラデルフィア半導体株指数が20%上昇しているのとは対照的な動きを見せている。時価総額は860億ドルまで低下し、世界の半導体メーカーの時価総額ランキングでトップ10から転落した。
Gelsinger CEOは先日のDeutsche Bank Technology Conferenceで「ここ数週間は厳しい時期だった」と語り、「明確な今後の方針を示したつもりだが、市場は肯定的な反応を示さなかった。それは理解している」と述べている。
Intelの今後の動向は半導体業界全体に大きな影響を与える可能性がある。ファウンドリー事業の分割や売却が実現すれば、業界の勢力図が大きく変わる可能性もある。一方で、Intelが従来の統合モデルを維持しつつ、どのように収益性を回復させるかも注目される。今後の取締役会での議論や、Intelの公式発表に業界の注目が集まっている。
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